警官によるナエル゠Mの殺人に対する暴動に関するリベルテール共産主義者同盟の声明
原文:https://blackrosefed.org/ucl-statement-nael-2023/
原文掲載日:2023年7月5日
(画像のグラフィティは「ナエルに、そして警官に殺された全ての人に、正義を」と書かれている)
ブラック゠ローズ/ローサ゠ネグラによるイントロダクション
今日まで幾日もフランス中の都市を暴動が揺るがしている。この叛乱は、6月27日にパリ郊外のナンテールでフランス生まれの十代のアルジェリア系青年ナエル゠Mが警官に殺害されたことに対するものである。
米国の視点でこの事件を見ている人にとって、フランスの暴動の規模・激しさ・契機と、2020年夏に米国で起こったこととの類似性を見つけるのは難しくない。以下の声明を見ればわかるように、私達の姉妹組織、リベルテール共産主義者同盟(UCL)も同様の関連性を汲み取っている。
フランスの暴動は、文化的・社会的・政治的・歴史的文脈の特殊性を認識しつつも、人種差別化された国家暴力に対する闘争は国境を越えていると明示しているのだ。
私達はこのテキストを分かりやすくするために少しばかり編集した。
フランス語原文は、La police assassine : justice et vérité pour Nahel et toutes les victimes を参照。
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警察による殺人:ナエルに、そして全ての被害者に正義と真実を
6月27日から28日にかけて、ナンテール市で夜に暴動が起こった。警官がまたもや犯した殺人を糾弾するためだ。
彼の名はナエル。17歳だった。ナエルは2023年6月27日に車の中で死んだ。彼は呼び掛けに応じなかったために至近距離から撃たれた。バスレーンにいた彼は、警官に殺すぞと脅されて逃げようとしたが、既に銃口は彼に向けられていた。
すぐに、警察は車が警官に突っ込んだという見解を発表し、メディアもすぐさま被害者の前科を示した。しかし、現場のビデオ映像は、・警官達が停車中のナエルの車の脇に立っていたと示している。つまり、警官の生命は全く脅かされていなかったのだ。
このような事件を頻繁に目にするようになるにつれ、同じレトリックが何度も使われるようになっている:被害者を悪人・乱暴者・社会に溶け込めない人物だと描くのだ。一方で、メディアは情報の真偽を確認せずにこの情報を垂れ流す。ほとんどの場合、結局は嘘や誇張だったと判明する。第二に、もっと重要なことだが、その情報が真実だったとしても、殺人を正当化できないし、殺意の軽減事由としても使えない。この物語が果たす唯一の目的は、警察による人種差別犯罪の不処罰を確固たるものにし、常態化することなのだ。
強調してもし過ぎることはない。映像がなければ、被害者の言葉など何の意味もない。もっと正確に言えば、捜査の対象が法と秩序の勢力の一員である場合には、何の意味もないのだ。全く同じシナリオが何度も何度も繰り返されようとも。
服従拒否を理由に警官が犯した殺人事件は今年初めから数えてこれで13回目である。責任を負うべき13人の警官の内で起訴されたのは5人だけだ。残りは現在まで起訴されずに釈放されている。これは異例の数字だ。警官の武器使用権に関わる2017年の法改正と無関係ではない。
しかし、暴力、とりわけ人種差別暴力の増加は驚くに当たらない。差別的法律が投票されたり、投票に掛けられたりしている時に「脱文明化」「大いなる交替」「野蛮への堕落」(原註1)といった言葉を国家当局のトップが使っているのだから。白人至上主義者のテーゼを取り入れた政策がどこに導くかお分かりだろう。
国家による人種差別主義の頂点は、諸機構--この場合は警察機構--である。諸機構が生み出す暴力を許可し、容認しているのは権力者である。権力者は、すぐさま極左と極右を対等な立場に置く。サンブルヴァン市長が亡命希望者受入センターを自身のコミューン(原註2)で創設した後に襲撃された場合もそうだった。
現実を甘く見るのは止めよう。警官が勝手に至近距離で引き金を引いたとすれば、何のお咎めもないと分かっていたからだ。彼の目から見ても、社会の目から見ても、ナエルの命に何の価値もないからだ。
警察による殺人を警官個人だけの責任にして良いのだろうか?彼は単に悪い警官だったのだろうか?違う!
この全てを単なる個人の「失態」という問題に矮小化するなど耐え難い。まさに、国家が見て見ぬふりをしている人種差別の一種に他ならない--事実上、殺人を認可しているのだ。国家警察隊に対する徹底的批判を表明することが喫緊の課題である。警察は人種差別で植民地主義の機構であり、極右に蝕まれ、住民全体を恐怖に陥れても何のお咎めもない。
警察による人種差別の犠牲者は、このことを長年糾弾してきた。彼等が活動家だとか、年金制度改革のような特定の改革に反対しているといったことは、基本的権利の否定とは何の関係もない。存在するという単純な事実が、彼等を暴力に直面させているのだ。亡命者は特にこの暴力に苦しんでいる。地中海という名の墓地であれ、カレーであれ、マヨットであれ、59歳のモハメドが1カ月前に複数の警官に殴られて死んだ行政拘置所であれ。
これらの犯罪は、少なくとも40年前に遡る長いリストの一部に過ぎない(1961年10月17日の大規模犯罪を思い出そう)。多くの名前が思い浮かぶ:Malik Oussekine、Abdel Benahya、Zied と Bouna、Moshin と Lakhamy、Akim Ajimi、Ali Ziri、Mamadou Marega、Wissam El Yamni、Amine Bentounsi、Angelo Garan、Gaye Camara、Liu Shaoyao、Babacar Gaye、Steve Maya Caniço、Claude Jean-Pierre、などなど。アダマ゠トラオレの真実と正義を求めた強力なデモが行われて以来、彼の家族は信じがたい弾圧を5年間も受けている。ジョージ゠フロイドのために世界規模の結集行動が行われてから3年経った。私達はいつも回答を拒絶されてきた。
弾圧が蔓延する現在の文脈で、私達は、ナンテールで始まった叛乱は社会運動(原註3)の不可欠な部分だと確信しているナエルや他の警察犯罪被害者の正義と真実を求めている--私達はそれらの要求を支持する。
私達の思いは、警察による殺人の被害者の親族と共にある。
私達の当面の要求は、ナエルの正義と真実・グローバルセキュリティ法と分離主義法の廃止(原註4)・警察の武装解除である。
人種差別主義と警察の暴力に対して民衆の団結を!
なお、ナエルの家族が明日(6月29日)午後2時にナンテールでホワイトマーチを呼び掛けているとお伝えしておく。
リベルテ―ル共産主義者同盟、2023年6月28日
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(原註)
1.フランス語でこのフレーズは「ensauvagement」と表記される。これは人種差別の記号であり、西側諸国への「未開民族」の移民によって引き起こされる社会的野蛮への転落というイメージを呼び起こす。これが最初に使われたのは極右のローラン゠オベルトーネ(Laurent Obertone)による2013年の著作だった。その後、フランス大統領選の候補者で狂信的ナショナリストのマリーヌ゠ル゠ペンが広めた。
2.フランスの「コミューン」は米国の自治体のようなものである。行政上の名称である。
3.ここでの「社会運動」は広い意味で使われている。この言葉で、この暴動が反社会的暴発ではなく、政治的・社会的心情の表現だと示そうとしているのである。
4.これらの法律の詳細については、次の手短な入門書を参照いただきたい:"Global Security" and "Separatisms": How the French Government is Expanding State Power and Promoting "Republican Values"。
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この声明は私達の姉妹組織「リベルテール共産主義者同盟(Union Communiste Libertaire、UCL)」によって書かれた。UCLは、2019年に「アルテルナティヴ゠リベルテール(Alternative Libertaire、AL)」と「アナキストグループ連携(Coordination des groupes anarchistes、CGA)」が融合して創設され、現在、フランスとフランス語圏諸地域に多数の支部がある。
UCLのウェブサイトはwww.unioncommunistelibertaire.org。
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