デジタル植民地主義:アメリカ帝国の進化
原文掲載日:2021年3月3日
原文:https://roarmag.org/essays/digital-colonialism-the-evolution-of-american-empire/
著者:Michael Kwet
米国の「ビッグテック」企業は、グローバルサウスのビジネス・労働・ソーシャルメディア・エンターテイメントを統制し、莫大な利益を手に入れている。
2020年、億万長者は大儲けだった。ジェフ゠ベゾス(訳註:アマゾンのCEO)の個人資産は1130億ドルから1840億ドルへ急増した。イーロン゠マスク(訳註:テスラのCEO)は短期間だがベソスを凌ぎ、純資産は270億ドルから1850億ドルに増加した。
ビッグテック企業を統轄するブルジョア階級にとって、人生は壮大だ。
こうした企業による国内市場の支配力拡大には多くの批判的分析が行われているが、その世界規模の影響力はほとんど論じられていない。特に、アメリカ帝国の主要知識人は論じていない。
実際、私達が構造と数値を調べると、ビッグテックは、明らかに、その範囲が世界規模だというだけでなく、特徴として根本的に植民地主義であり、米国が優位に立っている。この現状を「デジタル植民地主義」と呼ぶ。
私達が現在生きている世界は、デジタル植民地主義が、過去数世紀にわたる従来の植民地主義同様、グローバルサウスに対して広範かつ重大な脅威となる危険をはらんでいる。不平等の急激な増加・国家-企業による監視の増大・警察と軍の技術の洗練は、この新世界秩序がもたらす帰結のほんの一部に過ぎない。この現象を最近のことだと感じる人がいるかもしれない。だが、ここ数十年間で世界の体制に定着しつつある。非常に強力な対抗権力運動がなければ、情況はさらに悪くなるだろう。
デジタル植民地主義とは何か?
デジタル植民地主義とは、デジタル゠テクノロジーを通じた他国や他地域の政治的・経済的・社会的支配である。
従来の植民地主義下で、欧州諸国は外国の土地を強奪し、そこに定住した。そして、軍事要塞・海港・鉄道のようなインフラを導入した。経済進出と軍事征服のために小型砲艦を配置した。原材料を抽出するために重機を作り、労働を搾取した。全体を見渡せる構造物を設置して労働者を取り締まった。高度な経済搾取を行うのに必要な技師(例えば、鉱物を取り出すための化学者)を集めた。製造工程で使うために原住民の知識を吸い上げた。原材料を母国に送り返し、母国で製品を製造した。安く作られた商品を使ってグローバルサウスの市場を蝕んだ。世界規模の不平等な分業でグローバルサウスの民族と国々の依存を長続きさせた。そして、利潤と略奪を求めて市場と外交的・軍事的支配を拡大したのだった。
つまり、植民地主義は、領土とインフラの所有・管理、労働・知識・商品の抽出、国家権力の行使に依拠していたのである。
このプロセスは数世紀にわたり進化した。新しいテクノロジーが、その発展と共に、手法の混合体に追加されていった。19世紀後半、海底ケーブルは、大英帝国のために電信通信を促した。米国軍事諜報活動は、情報の記録・保存・整理に関して新たに開発された技術を利用し、フィリピンを征服する際に初めて使った。
エドゥアルド゠ガレアーノによるグローバルサウスの「切り開かれた血脈」(訳註:邦訳は『収奪された大地 ラテンアメリカ五百年』)の現代版は、五大海を横断し、技術的エコシステムを繋ぐ「デジタル血脈」である。これを所有・管理しているのが、主として米国に本社を置く一握りの企業である。グーグルやフェイスブックのような企業は、さらに多くのデータ抽出と独占を行なうために、ストランドに取り付けられた大洋横断光ファイバーケーブルを所有したり借りたりしている。現代版の重機は、アマゾンとマイクロソフトが支配するクラウドサーバーファームである。これは、ビッグデータを保存・プール・処理するために使われ、アメリカ帝国の軍事基地のように急増している。現代の技師は、企業からたっぷり25万ドル以上の給料をもらっている多くのエリートプログラマーである。搾取されている労働者とは、コンゴやラテンアメリカで鉱物を抽出している有色の人々、中国とアフリカでAIデータにアノテーションを行う大勢の低賃金労働力・不穏な内容のソーシャルメディア゠プラットフォームを駆除したためにPTSDに悩まされているアジアの労働者達である。プラットフォームとスパイセンター(NSAの様な)はパノプティコンであり、データはAIベースのサービスで処理される原材料である。
もっと広く言えば、デジタル植民地主義は不平等な分業の定着に関わっている。強大な権力は、南側を永続的依存状態に保ち続けるために、自身が所有するデジタル゠インフラや知識を使い、コンピュテーションの方法を管理している。この不平等な分業は進化している。経済的に、製造業は価値観の序列で格下げされ、高度ハイテク経済に取って代わられている。この経済を掌握しているのがビッグテック企業である。
デジタル植民地主義の基本設計
デジタル植民地主義は、デジタル世界でコンピュテーション手段を形作る「材料」--ソフトウェア・ハードウェア・ネットワーク接続性--の支配に根ざしている。
そこには、「知的財産権」と「デジタル知能」の私有だけでなく、門番として機能するプラットフォーム・仲介サービスプロバイダが抽出するデータ・産業規格が含まれる。デジタル植民地主義は、資本主義と権威主義的統治が持つ従来のツール(労働搾取・ポリシー゠キャプチャリング・経済計画から諜報機関・支配階級ヘゲモニー・プロパガンダまで)と非常に上手く融合するようになってきている。
最初にソフトウェアを見てみよう。以前はプログラマーに無償で広く共有されていたコードが徐々に私有され、著作権の対象となってきた経過が見て取れる。1970年代と1980年代に、米国議会はソフトウェアの著作権を強化し始めた。これは、ユーザーがソフトウェアを使用・研究・修正・共有する権利を認めた「フリー・オープンソース゠ソフトウェア(FOSS)」ライセンスとは逆の方向性だった。FOSSライセンスは、企業の統制がなく、利潤追求欲求を持たず、「デジタル゠コモンズ」を創り出していたため、グローバルサウス諸国にとって本来的な利点があった。しかし、フリーソフトウェア運動が南側に広がると、企業の反発を引き起こした。ペルー政府がマイクロソフト所有のソフトウェアを避けようとすると、マイクロソフトはペルーを嘲笑した。また、マイクロソフトは、アフリカ諸国の政府がGNU/LinuxのFOSSのオペレーティング゠システムを政府省庁と学校で使用するのを阻止しようとした。
ソフトウェアの私有化と並行して、インターネットは、フェイスブックとグーグルのような仲介サービスプロバイダの手中に急速に集中するようになった。極めて重要だが、クラウドサービスへの転換は、FOSSライセンスがユーザーに認めていた自由を無効にした。そのソフトウェアがビッグテック企業のコンピュータで実行されるからだ。企業のクラウドは人々からコンピュータ管理能力を剥奪する。クラウドサービスプロバイダは数ペタバイトの情報を企業に提供し、その企業はこのデータを使って自分達のAIシステムに教え込む。AIはビッグデータを使って「学習」する。例えば、様々なフォントと様々な形の「A」という文字を認識するためには数百万の画像が必要である。人間に応用すると、個人の生活で公にしにくい詳細な情報は、テックジャイアントが絶え間なく抽出しようとしている途方もなく貴重なリソースとなるのだ。
南側にいる大多数の人々は、基本的に、余分なデータのない低水準のフィーチャーフォンやスマートフォンを使い続けている。その結果、何百万人もの人々がフェイスブックのようなプラットフォームを「インターネット」だと感じている。そして、この人々に関するデータは外国の帝国主義者に消費されている。
ビッグデータの「フィードバック効果」が情況を悪化させている。より良いデータをより多く持つ人々は、最高のAIサービスを創り出せ、そのサービスは多くのユーザーを引きつけ、さらに多くのデータを与え、より良いAIサービスを創り出す、という具合である。従来の植民地主義同様、データは原材料として帝国主義権力に取り込まれる。そして、そのデータを処理して、世界中の人々に向けてサービスを製造する。自分達の支配をさらに強化し、他者を従属的な依存状態に置くのである。
セシリア゠リカプは、近刊書『資本主義・権力・イノベーション:知的独占資本主義を暴く』で、米国のテックジャイアントが、従属企業の複雑な商品連鎖を指揮しながら、どのようにしてその市場権力を知的独占に基づかせ、使用料を引き出し、労働を搾取しているのか示している。これによってテックジャイアントは「人物情報」と「技術情報」を蓄積できるようになり、知識を私有化し、共有知識と公的研究結果を搾取するだけでなく、世界規模の価値連鎖を仕組み、作り出しているのだ。
例えば、アップルは、自社製スマートフォンのIPとブランド化から利益を得、商品連鎖に沿って生産を調整している。下位レベルの生産者--例えば、台湾のフォックスコンが運営している製造工場の組立工・バッテリーのためにコンゴで抽出される鉱物・プロセッサを供給している半導体メーカー--は、皆、アップルの要求と気まぐれに従わねばならない。
言い換えれば、テックジャイアントは商品連鎖全体のビジネス関係を管理し、その知識・蓄積資本・中核となる機能部品の支配から利益を得ているのである。このことによって、テックジャイアントは、自社製品を大量生産している比較的大きな企業さえをも従属者として値引きさせたり、不要にしたりできる。大学もこれに共謀している。中心的な帝国主義諸国で最も高名な大学は、学術的生産の場で最も有力な行為者である。一方、その周辺や半周辺にいる最も脆弱な大学は最も搾取されている。多くの場合、こうした大学は研究開発資金がなかったり、研究成果の特許を取る知識や能力がなかったり、自分達の研究が奪われたときに反撃するための資源を持っていなかったりするからだ。
教育の植民地化
デジタル植民地主義がどのように展開しているのかを示す一例は、教育部門にある。
私が南アフリカの教育テクノロジーに関する博士論文で詳述したように、マイクロソフト・グーグル・ピアソン・IBMなどのテックジャイアントは、グローバルサウス全土の教育システムで腕試しをしている。マイクロソフトにとって、これは目新しいことではない。先述したように、マイクロソフトはアフリカ諸国の政府に、フリーソフトウェアからマイクロソフト゠ウィンドウズに変えるよう強要しようとした。そこには学校も含まれていた。
南アフリカで、マイクロソフトは、教育現場に大量の教員トレーナーを持ち、教育組織内でマイクロソフト゠ソフトウェアの使い方を教員に教えている。ベンダ大学のような大学はウィンドウズ゠タブレットとマイクロソフトのソフトウェアを提供されていた。この協力関係をマイクロソフトは大々的に宣伝していた。最近では、マイクロソフトは携帯電話プロバイダのボーダコム(英国多国籍企業ボーダフォンの傘下)と提携し、南アフリカの学生にデジタル教育を提供している。
マイクロソフトは、南アフリカに九ある地方教育局の内少なくとも五カ所と契約を結んでいる最大サプライヤーだが、グーグルもマーケットシェアを求めている。南アフリカで創業したてのクラウドエドと提携し、グーグルとの契約を一カ所の地方教育局と初めて締結しようとしている。
マイケル&スーザン゠デル財団もこの競合状態に参加し、地方政府に「データ駆動地区(DDD)」プラットフォームを提供している。DDDソフトウェアは、教員と生徒を追跡・監視してデータを収集する。そのデータには成績・出席数・「社会的問題」が含まれる。学校は収集したデータをリアルタイムではなく一週間ごとにアップロードするが、究極の目標は、官僚主義的管理と「長期的データ分析」(同一集団の個々人について長期間収集したデータの分析)を行うために生徒の行動と成績をリアルタイムで監視することである。
南アフリカ政府も基礎教育省(DBE)のクラウドを拡大している。これは最終的に侵略的なテクノクラート型監視を行うために使われる可能性がある。マイクロソフトは、「ユーザーのライフサイクルのために」学校からデータを収集する企画書をDBEに提出した。さらに、MSオフィス365アカウントを持つ人々については成人期までのデータを収集するという。そのことで、政府は教育と雇用との関係といったことの長期的分析を行えるようになるのである。
ビッグテックのデジタル植民地主義は、南側の教育システムで急速に拡大している。ブラジルのジゼル゠フェリーラ等は次のように述べている。「ブラジルの現状と南アフリカについてクェット(2019年)の分析(『グローバルサウス』諸国でも同様)とは著しく類似している。特に、GAFA(グーグル・アマゾン・フェイスブック・アップル)企業が恵まれない生徒達にテクノロジーを気前よく提供すると、データがスムーズに抽出され、その後、地域の特異性を無化するやり方で処理されるのである。」
学校は、ビッグテックがデジタル市場の管理を拡大する主要な場を作り出す。南側の貧困者は、多くの場合、デバイスを無料で提供してくれる政府や企業を頼るものだ。どのソフトウェアを使うのかを決める際に、他者を頼るようにさせられているわけだ。子ども達--フィーチャーフォン以外にテクノロジーに接する手段を持っていない場合が多い--に提供するデバイスに、ビッグテックのソフトウェアを前もってインストールしておくやり方ほど市場シェアを獲得する上で上手い方法があろうか?これには将来のソフトウェア開発者を獲得するというもう一つの利点もある。例えば、グーグルやマイクロソフトのソフトウェアを長年使って、そのインターフェイスと特徴に慣れ親しんでいれば、グーグルやマイクロソフトを(フリーソフトウェア型の民衆的テクノロジー゠ソリューションではなく)好ましいと思うようになるだろう。
労働搾取
デジタル植民地主義は、グローバルサウス諸国を激烈に搾取するやり方にもはっきり現れている。こうした国々は、デジタル゠テクノロジーにとって重要な部品を提供するために単純労働をさせられている。以前から明らかだったが、コンゴ民主共和国は世界のコバルトの70%を供給している。コバルトは、自動車・スマートフォン・コンピュータのバッテリーに使われる重要な鉱物である。コンゴの14家族は現在、アップル・テスラ・アルファベット・デル・マイクロソフトを相手に訴訟を起こしており、コバルト採鉱産業で児童労働を使い、利益を得ていると非難している。採鉱プロセス自体、労働者の健康と周辺の動物生息地に有害な影響を与えることが多い。
リチウムについて言えば、その埋蔵量が多い国はチリ・アルゼンチン・ボリビア・オーストラリアである。全てのラテンアメリカ諸国で労働者の賃金は富裕国の標準よりも低く、労働者が耐えている労働条件を考えれば特に低いと言える。入手できるデータにはバラツキがあるものの、チリでは、鉱山で雇用されている人々の月収は1430ドルから3000ドルの間であり、アルゼンチンでは300ドルから1800ドルである。2016年、ボリビアの鉱山労働者の月額最低賃金は250ドルに増えた。対照的に、オーストラリアの鉱山労働者は月額9000ドル得ており、年間20万ドルにもなり得る。
南側諸国は、テックジャイアントに安価な労働を豊富に提供している。例えば、AIデータセットへのデータアノテーション・コールセンター労働者・フェイスブックのようなソーシャルメディア゠ジャイアントのコンテンツモデレーターがある。コンテンツモデレーターは、ソーシャルメディア上の不穏な内容の配信データ(暴力や露骨な性表現のある素材のような)を駆除するが、心理的傷を負うことが多い。しかし、インドのような国でコンテンツモデレーターは、年間3500ドル程度の収入しか得ることができない--これは、1400ドルから賃上げされた後の額である。
デジタル帝国は中国か、それとも米国か?
西側では「新しい冷戦」に関するおしゃべりが多い。米国と中国が世界規模のテクノロジー支配権を巡って争っているというわけだ。しかし、テクノロジーのエコシステムを注意深く見れば、米国企業が世界経済を圧倒的に支配していると分かる。
中国は、数十年間高成長を続けた後、世界のGDPの約17パーセントを生み出すようになり、2028年には米国を上回ると予測されている。このことで、アメリカ帝国は没落する(以前日本が台頭してきた際もよく言われていた話だ)というフィードが流れている。購買力平価で中国経済を測ると、既に米国よりも大きくなっている。しかし、経済学者シーン゠スターズが『ニュー゠レフト゠レビュー』で指摘していたように、これは国家を「ビリヤード台に乗っているビリヤードの球のように作用する」自己完結型ユニットとして誤って扱っている。現実には、米国経済の支配力は「低下したのではなく、地球規模化した」のだ。ビッグテックを見れば、これは特に当てはまる。
ポスト第二次世界大戦時代に、企業の生産性は国際的生産ネットワークのあちこちに広がった。例えば、1990年代に、アップルのような企業は、機器の製造を米国から転じ、中国と台湾に外注するようになり、フォックスコンのような企業に雇用されているスウェットショップ労働者を搾取し始めた。米国多国籍テクノロジー企業は、大抵、例えば、高性能ルータスイッチ用のIPをデザインしている(シスコシステムズなど)が、その一方で、南側のハードウェア製造業者に生産能力を外注している。
スターズは、「フォーブズ゠グローバル2000」がランク付けした世界の上位2000の上場企業をまとめ、25分野に沿って整理し、米国多国籍企業の優位性を示した。2013年時点において、利潤分配率の点で、上位25分野の内18分野を米国の多国籍企業が占めていた。近刊の『グローバル化した米国権力:グローバリゼーション時代の国力再考』において、スターズは、米国が今も支配的であり続けていると示している。ITソフトウェアとサービスで、米国の利潤分配率は76%、対して中国は10%である。テクノロジー゠ハードウェアと機器では、米国の利潤分配率は63%、中国は6%である。電子機器ではそれぞれ43%と10%。韓国・日本・台湾といった国々もこうしたカテゴリーで中国よりも健闘していることが多い。
従って、よくあるようにグローバル゠テクノロジー支配権争いで米国と中国を対等な競争相手だと描くのは、誤解を招く可能性が高い。例えば、2019年の国連「デジタル経済」報告書は次のように述べている。「デジタル経済の地理はほぼ二つの国に集中している」--米国と中国である。しかし、この報告書は、スターズのような著者等が特定した諸要因を無視しているだけでなく、海外で大きなマーケットシェアを持つ5G(ファーウェイ)・CCTVカメラ(ハイクビジョンとダーファ)・ソーシャルメディア(ティックトック)といった少数の主要製品とサービスを除き、中国のテクノロジー産業の大部分が支配的なのは中国国内だという事実を説明できていない。中国は、いくつかの海外テクノロジー企業に相当の投資もしているが、だからと言って、米国の優勢に対する本物の脅威となっているわけではない。米国は海外投資に関しても遥かに大きなシェアを持っているのである。
実際、米国は最上位のテクノロジー帝国である。米国と中国の国境外では、米国が様々な分野を主導している。こうした分野には、サーチエンジン(グーグル)、ウェブブラウザ(グーグル゠クローム、アップル゠サファリ)、スマートフォンとタブレットのOS(グーグル゠アンドロイド・アップル゠iOS)、デスクトップとラップトップのOS(マイクロソフト゠ウィンドウズ・マックOS)、オフィス゠ソフトウェア(マイクロソフト゠オフィス・グーグルGスイート・アップルiワーク)、クラウドのインフラとサービス(アマゾン・マイクロソフト・グーグル・IBM)、ソーシャルネットワークのプラットフォーム(フェイスブック・ツイッター)、運輸(ウーバー・リフト)、ビジネス゠ネットワーク(マイクロソフト゠リンクトイン)、ストリーミング゠エンターテイメント(グーグル・ユーチューブ・ネットフリックス・フールー)、オンライン広告(グーグル・フェイスブック)等がある。
結論はこうだ。個人であれ企業であれ、コンピュータを使っている以上、米国企業が最大の利益を手にする。米国企業はデジタル゠エコシステムを所有しているのである。
政治的支配と暴力的手段
米国テックジャイアントの経済力は、政治的・社会的領域への影響力と手に手を取って進んでいる。他の産業でもそうだが、テクノロジー企業の幹部と米国政府は回転ドアの関係にある(頻繁に出入りを繰り返している)。テクノロジー企業と提携事業者とは具体的利権--そして、デジタル資本主義一般--にとって望ましい政策を求めて、政府の取締官に多大なロビー活動を行っている。
その結果、司法当局はテックジャイアントと協力し、不正行為を行う。よく知られているように、2013年にエドワード゠スノーデンは、マイクロソフト・ヤフー・グーグル・フェイスブック・パルトーク・ユーチューブ・スカイプ・AOL・アップルは皆、PRISMプログラムを通じて国家安全保障局(NSA)と情報共有していると暴露した。その後、さらに多くのことを暴露し、世界は、企業が蓄積し、インターネットに送られたデータは、国家による搾取のために政府の莫大なデータベースに吸収されると知った。南側諸国は、中東からアフリカ、ラテンアメリカまでNSAの監視対象になっている。
警察と軍もテクノロジー企業と協働している。こうした企業は、監視製品とサービスの提供者として、高額の小切手を大喜びで現金に換えている。これは南側諸国でも同様だ。例えば、ほとんど知られていない「治安・司法部門」を通じて、マイクロソフトは「司法当局」監視ベンダーと包括的な連携エコシステムを構築している。こうしたベンダーはマイクロソフトのクラウド゠インフラ上で自社のテクノロジーを動かしている。ここには、ブラジルとシンガポールの警察が購入した「マイクロソフト゠アウェア」と呼ばれる都市全体の指揮統制監視プラットフォームや、南アフリカのケープタウンとダーバンで展開している顔認証カメラを使った警察車輌ソリューションが含まれる。
マイクロソフトは刑務所産業にも深く関わっている。未成年「犯罪者」から公判前の人と執行猶予中の人、拘置所と刑務所、釈放された人と仮出所中の人に至るまで、矯正ルート全体をカバーする様々な刑務所ソフトウェア゠ソリューションを提供している。アフリカでは、「ネトピア゠ソリューションズ」という企業と提携し、「エスケープ゠マネージメント」と囚人解析を含む刑務所管理ソフトウェア(PMS)を提供している。
ネトピアの刑務所管理ソリューションが正確にどこで使われているのかははっきりしていないが、マイクロソフトは次のように述べている。「ネトピアはモロッコの(マイクロソフト゠パートナー/ベンダー)企業であり、北アフリカと中央アフリカの政府サービスのデジタル的変革に徹底的して焦点を当てている。」モロッコは反体制派に残忍な仕打ちをし、囚人を拷問した実績がある。米国は最近、国際法に反して、モロッコによる西サハラ併合を承認した。
数世紀にわたり、帝国権力は自国市民を取り締まり、管理するテクノロジーを最初に外国の住民で試していた。それは、フランシス゠ゴルトン卿がインドと南アフリカで使った指紋認証に関する先駆的研究から、米国がフィリピンを制圧するために使用し、最初の近代監視装置となった統計・データ管理の技術革新と生体認証との組み合わせまである。歴史家アルフレッド゠マッコイが示しているように、監視テクノロジーの一群が用いられたフィリピンは、一つのモデルの試験場だった。最終的に、このモデルは米国に戻り、国内の反体制派に対して使われたのである。マイクロソフトとそのパートナーのハイテク監視プロジェクトは、アフリカ諸国が刑務所関連実験用の実験室として機能し続けていることを示唆している。
抵抗
デジタルテクノロジーと情報は、あらゆる所で政治・経済・社会生活の中心的役割を果たしている。アメリカ帝国プロジェクトの一部として、米国多国籍企業は、知的所有権・デジタル知能・コンピュテーション手段の所有と管理を通じて、南側で植民地主義を作り変えている。中核となるインフラ・産業・コンピュータ機能の大部分は、米国多国籍企業の私有財産であり、こうした企業は米国国境外の世界で圧倒的に優勢である。マイクロソフトとアップルのような最大規模の企業が、知的独占をしながら世界のサプライチェーンを支配しているのだ。
不平等な交換と分業は、結果として、周辺の依存性を強化し、大規模な困窮化と世界規模の貧困を永続させ続けている。
知識を共有し、テクノロジーを伝達し、平等な条件で世界が共に繁栄するための基本的要素を提供せず、富裕諸国とその企業は、自分達の利益を守り、安価な労働と賃借料の抽出によって南側から金を巻き上げている。デジタル゠エコシステムの中心的要素を独占することで、学校と技能訓練プログラムに自分達のテクノロジーを押し付け、南側の企業エリート・国家エリートと提携しながら、ビッグテックは新興市場を掌握しつつある。今後、警察と刑務所に提供する監視サービスからも利益を得るだろう。すべては儲けのためなのだ。
しかし、集中した権力に対しては、必ず対抗者がいる。南側でのビックテックへの抵抗には長い歴史がある。それは、アパルトヘイト下の南アフリカでビジネスを行っていたIBMやヒューレットパッカードといった企業に対する国際抵抗の時代に遡る。2000年代初頭には、グローバルサウス諸国は、現在では大部分が弱まっているものの、しばらくの間、フリーソフトウェアとグローバルコモンズをデジタル植民地主義に抵抗する手段として活用していた。ここ数年間、デジタル植民地主義に抵抗する新しい運動が出現している。
この情況にはさらに多くのことが含まれる。資本主義が創造した生態系危機は、地球の生物を恒久的に破壊する危険があり、デジタル経済に対する解決策は、環境正義と平等を求めたより大きな闘争と交わらねばならない。
デジタル植民地主義を根絶するためには、異なる概念的構想が必要である。資本主義と権威主義・アメリカ帝国・それを支持する知識人と対決しようとしている草の根運動と繋がりながら、根本原因と主要な行為主体に挑戦しなければならないのである。