労働運動内のアナキスト(5)
原文:https://www.blackrosefed.org/anarchists-in-the-labor-movement-5/
原文掲載日:2024年12月10日
この記事は、「労働運動内のアナキスト」と題したインタビュー゠シリーズの第5回である。それぞれのリンクをクリックして、第1回の教育労働者(拙訳)、第2回の医療労働者(拙訳)、第3回の金属加工労働者(拙訳)、第4回の公立図書館司書(拙訳)を読んでいただきたい。
このインタビューでは、ノースカロライナの公立学校教師、シャンに話を聞いた。
タイトルが示しているように、このシリーズでは職場の組織化に取り組んでいるアナキスト達に話を聞く。話を聞く人々の中には、既存労働組合の一般組合員の中で戦闘的少数派を構築している者もいれば、新しい労働組合キャンペーンを通じて未組織労働者の組織化をしている者もいる。また、労働組合の支援が得られない情況下で職場闘争に勝つための能力を構築する方法を見つけている者もいる。
このシリーズの目的には、単に、米国労働運動にいるアナキスト闘士の存在にスポットライトを当てるという面もある。より本質的には、インタビューを受けた人達に、成功も失敗も含めて自身の経験を批判的に振り返り、一般化できる教訓を導き出してもらっている。
このシリーズでインタビューした人達は、全員ではないが、ブラックローズ/ローサネグラ(BRRN)のメンバーである。
分かりやすさと長さを考慮して、回答は編集されている。
シャン(公立学校教師)
BRRN:あなたの政治見解を一言でまとめてもらえますか?
シャン:私が信じているのは、基本的ニーズを満たし、個々人が充実した生活を送れる共同社会を建設する市井の人々の力です。
BRRN:あなたが取り組んでいる組織活動の背景を教えて下さい。
シャン:ノースカロライナ州にある私が所属する教職員組合は、「Commit to Majority(多数派への取り組み)」というキャンペーンに取り組んでいて、多数派組合になるために学区全域の組織者が新しい組合員を募集しています。この取り組みは組合員が集団的に組織し、学区と州全体の政策に対して労働条件の改善を強く求めています。
BRRN:既成組合と組んでいるのですか、それとも独立しているのですか?
シャン:既成組合です。一般組合員が組織する委員会に参加したいと私が思っても、私の学校現場にはそれがありません。今の組合に加入したおかげで、より戦闘的な戦術を支持する組合員達に会えました。
BRRN:自身のアナキズムの政治見解は、同僚と共に権力を組織化することとどのように関係していると思いますか?
シャン:アナキズムの政治、特に、同僚との組織作りに関する私の姿勢は、実践を通じた民衆権力 の構築です。人は生まれつき集団的権力を構築する方法を知っているわけではないので、実質的な利益を勝ち取るために互いに組織を作り、それを実践しなければなりません。
BRRN:アナキズムの政治や反権威主義政治について同僚と話すことはありますか?同僚と「政治」(世界情勢や地元の権力構造)について話しますか?
シャン:私は具体的に「アナキズムの」政治を話しません。こうした言葉や「社会主義」のような言葉は誤解されがちで、会話を閉ざしてしまうからです。しかし、私は、こうした政治に関連する具体的事例やアイディアを提起します。例えば、私はよく、管理職と学区長は大幅に昇給しているのに、私達はほとんど何も得られていないという話をします。また、どうすれば管理職なしに学校として機能できるのかについても話します。多くの人がこうした考えに共鳴してくれます。抽象的な理論ではなく、仕事に関連しているからです。
BRRN:あなた方の組織活動には、自らを「政治的」と見なしつつも、異なる政治的伝統や政治組織に属している人々もいますか?
シャン:います。私達の組合員の多くは中道派か社会民主主義者です。私は賛同できないのですが、彼等は大抵、選挙戦略を重視し、民主的な候補者を支援しています。でも、私達は具体的な利益に基づいて組織を作っているわけですから、イデオロギーが違っていたとしても、あらゆる労働者のための要求という点で団結しています。
BRRN:労働組合の組織化は、社会変革や社会革命といったあなたのヴィジョンに合致していますか?
シャン:労働組合の組織化は重要です。職場は、町内や刑務所などと並ぶ闘争の場の一つだからです。資本主義は労働から価値を抽出しなければ存続できないため、労働は社会に対して大きな力を持っています。職場は同時に、私達が民衆権力を実践し、相互の関係性を再形成できる場でもあります。より良い社会への正確な道程を私は知りません。でも、より良い社会に向けて私達自身が権力を構築する方法を知らねばならないと分かっています。
BRRN:組織を作る上で、最も役立ったリソースは何ですか?
シャン:最も役立ったリソースは、組合の関係者やその他様々なオルガナイザーです。彼等の現場経験は、インスピレーション・アイディア・戦略の最も重要な源泉です。もちろん、書物も常に洞察・知識・理論を提供し、私がより広い視野を持ち、より適切な分析をできるようにしてくれます。
BRRN:労働組合の文脈で組織を作ろうとしているアナキストにどのようなアドバイスをできますか?自分が始めた時に、知っておけば良かったことは何ですか?
シャン:労働組合があれば、その政治があなた自身のものと一致していなくても、会議に出席して人々と知り合いになりましょう。組合組織で最も重要なのは人です。組合がなければ、職場の人達と人間関係を築いて、労働条件に疑問を持ち・労働条件の変更について話したいと思っている人達を見つけましょう。どのようなやり方で組織を作ろうとも、人間関係の構築は労働組合を始める上で最も重要です。