東アジア反日武装戦線の直接行動
「直接行動の想像力・社会運動史研究」松井隆著・新曜社2023年10月発行
著者は1970年生まれ、武蔵大学社会学部教員である。
先日、東アジア反日武装戦線さそり所属の桐島聡が死亡した。40年以上逃亡生活の末、がんによる死去である。本書の特集「直接行動の隘路・東アジア反日武装戦線をめぐって」は、彼らの行動に対する歴史的、思想的分析である。
著者は三菱重工爆破事件が起きた1974年8月の3年前に生まれた。事件は著者にとって歴史的事実に過ぎない。ゆえに客観的かもしれない。著者は、非暴力運動を基本とする視点から、彼らの行動の批判的立場に立つ。
東アジア反日武装戦線は70年代マルクス主義的党派による暴力性とは異質の運動である。彼らの思想の根底は、日本帝国主義によるアイヌ・朝鮮民族・山谷など寄せ場の下層労働者という辺境最深部に闘争の基礎を置く。その意味での反日であり、最下層からの暴力による抗議運動である。
その手段に爆弾を使用した。目的は日本帝国主義に寄生する企業集団の機能マヒにあった。最初の三菱重工事件で多数の死傷者を出し、彼らはかなり狼狽した。
事件後、被害を受けた無関係な市民、労働者を「日帝に寄生し、植民地主義により肥えたる植民者」と言い訳をする。大道寺將司は爆破で人を殺す意図はなかったと証言している。
彼らの出発点は次の三つに分かれる。大道寺將司、片岡利明ら「狼」は法政大クラス闘争委員会出身。斉藤和、浴田由紀子ら「大地の牙」は松田政男のレボルト社・アナキズムの流れである。「さそり」の宇賀神寿一、桐島聡らは山谷・釜ヶ崎の「寄せ場闘争」がスタートとなっている。
彼らは、マルクス・レーニン思想でなく、社会から排除された領域からの叛乱に思想根拠を置く。植民地主義の日帝本国人としての自身の加害者責任の追及から自己否定へ向かう。そして目的・主体・手段を一体化させ、主体化させる論理構造の結果として爆弾闘争に達したと結論付ける。
活動家でない社会学者の立場からの「東アジア反日武装戦線論」であり、歴史事実として直接行動思想を見直すに良い書籍である。