「新左翼・過激派全書・1968年から現在まで」有坂賢吾著
「新左翼・過激派全書・1968年から現在まで」有坂賢吾著・作品社2024年11月発行
著者は1991年生まれ、高校在学中より学生運動研究を始める。明治大学卒業後、ゼネコン会社勤務を経て、現在、建設産業労働者。
本書は1960年代末以降の新左翼党派が四分五裂した状態を俯瞰し、網羅的、かつ基本的な現在までの党派情報を収録した書籍である。
革共同系、共産同系、社青同系、構造改革系、日共左派系、アナキストと6章に分けて記述する。第7章で全学連等の自治会、反戦青年委員会について記述、最終章にゲバスタイル総説としてヘルメット等多くの写真を掲載して締めくくっている。
1973年警察白書では極左暴力集団を「5流22派」のセクトと「ノンセクトの少人数グループである黒ヘル集団」に分類した。1988年警察白書でも「5流22派」のセクトを挙げ、その勢力は1969年約5万3,500人をピークに、1974年には約3万5,000人の勢力を保有し、以降は横ばいと解説している。
新左翼系党派は数年ごとに分裂を繰返し、現在では消滅した党派も多くある。学生運動最盛期の頃「週刊朝日」1968年8月9日号に筒井康隆がショートショート「90年安保の全学連」という題名の小説を掲載した。
1990年という「未来」の安保闘争を、デモを中継するテレビマンたちの目で描いた作品である。カメラの前に登場する全学連はわずか5人。実況するアナウンサーが「どうしてあんなに人数が少ないのか?」と問うと、解説者は次のように応じる。
「今だって何千人もいますよ。ただ、70年安保の前から今まで、全学連は分裂に分裂を重ね、少数派が乱立したのです。あの5人は百三十七派系に含まれる社学同解放ML統一派の構造改革国際主義分派の連中です。5人もいるから、多数派でしょうね。一人一派と言うのも最近はざらですから・・」と答える。
この未来小説は当時の学生運動の状況を表し、面白くセクトの分裂を皮肉った内容の未来小説である。2020年には安保闘争の言葉すら新聞に載らなくなった。
現在、多くの若者の支持政党が自民党と言われる。選挙は政策ではなく、SNSによる影響で選挙結果が決まるとまで言われる。現代は、政策や左右の思想の対立ではなく、二項対立の時代となった。
今後、極左過激派支持層は75歳以上の老人が中心になるかもしれない。そんな思いを持ちながら、本書を読んだ。
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