「桐島聡と井上伝蔵」
「伝蔵・困民党会計長・小説秩父事件」八木静子著・まつやま書房2022年4月発行
指名手配から48年逮捕されず、逃亡を続けた桐島聡。末期がんの最後に「桐島聡」と告白した「内田洋」彼の人生は何だったのか?どう人生を振り返っただろうか?
明治17年秩父事件の井上伝蔵を思い出した。彼は秩父事件で会計長を務めた中心人物。欠席裁判で死刑判決を受け、逃亡を続けた。北海道の野付牛町(現・北見市)で65歳、死の直前、北海道で結婚した妻・ミキに「俺は井上伝蔵」と告白した。
変名は伊藤房次郎。変名のまま結婚した妻と子に見守られ、大正7年、潜行の北海道で生涯を閉じた。逃亡生活35年。彼の読んだ俳句。
「想いだすことみな悲し秋の暮」
伝蔵は「われら暴徒にあらず国事犯なり」と叫ぶ。自称内田洋は「後悔してる」と言ったという。ともに国家に反逆した人間。苦悩の人生であったことは変わらない。
「小説秩父事件伝蔵・困民党会計長」は伝蔵の一生を描いたノンフイクション小説。著者・八木静子氏は1953年生まれ、埼玉県で教職を務め、秩父事件を研究、井上伝蔵に強く魅かれる。民権運動の視点で秩父事件を描いた本である。
もう一冊挙げる。「豆腐屋の四季」の著者・松下竜一の「狼煙を見よ・東アジア反日武装戦線狼部隊」2017年8月発行河出書房新社。
「豆腐屋の四季」に感動した、普通の優しい一人の若者-大道寺将司が、なぜ悲惨な三菱重工業爆破事件を起こしたのか?一つの答えがここにある。
秩父事件は農民らの困民党の反乱、東アジア反日武装戦線はアイヌなど窮民思想の直接行動。類似点はある。