「投資依存症」森永卓郎著
「投資依存症・こうしてあなたはババを引く」森永卓郎著・三五館シンシャ2024年9月発行
著者は1957年生まれ、日本専売公社勤務を経て、経済アナリスト、独協大学教授。現在、ガン治療中。
新NISA、貯蓄から投資を推奨する政府をはじめ、証券会社、金融機関は国民に投資商品の売り込みに必死である。本書は「投資とはギャンブルである」と断言する。
人々は投資で安楽な生活を求め、資金を投入して、自動的に投入額の増加、金儲けができると考える。しかし金が増える方法は必至に働くこと、他者からの略奪の二つしかない。そのとおりである。
安楽を求めて、投資の成果の儲けの快楽に騙され、深入りする。結果、ギャンブルと同じの快楽という刺激に負けて、投資依存症となる。その意味でギャンブル依存症と似ている。
そこにあるのは、際限のない欲望と儲け追求の人間のサガである。金融商品が本当に儲かるなら、他人に宣伝はしない。自分が独占する。独占しないのはリスクがあるため。
博奕の胴元は、自分でリスクを負わず、ショバ代で儲ける。投資商品も同じ、金融機関は手数料で儲け、リスクは顧客が負担する。まさに投資はギャンブルである。
著者は、資本主義が耐え難い格差拡大と地球環境破壊、少子化、ブルシットジョブの生産性低迷の結果、破滅するという。今のバブルが最後のバブルと予想する。しかしそれは現実的ではない。
資本主義に代わる社会が存在しない以上、資本主義は続き、バブルは繰り返される。バブルは反復するため、金融業者、投資コンサル、ファンドの業務も消滅しない。
投資銀行と呼ばれるゴールドマンサックス証券の若手社員が1,000万円以上の給与を貰える理由がここにある。彼らは数パーセントの手数料でも100回繰り返せば、投資元金のほとんどを手に入れることができる。
ギャンブルも投資・投機も、夢を追う欲望に負けた人間の末路かもしれない。リスクを負わず、サヤのみ稼ぐエリートたちへの反発、不満、その制度を築き上げた政府機関への不信の爆発が米国で起きたトランプ現象である。
日本でもメディア、司法裁判、政府機関への信頼の低下が起きている。リベラルという名のエリートに対する不満である。情報の真偽に対し疑いをせず、思い込みの情報ですべての物事を判断しがちである。
養老猛司の「バカの壁」でいう脳内一次方程式。思考の出力=情報入力×係数。しかし係数がゼロなら、情報入力100%となり、思考が停止する。情報がすべての世界が発生する。その結果が兵庫県知事再選かもしれない。
SNS型投資詐欺でも全ての情報に対して、まずその真偽を疑い、自分の頭で考えること。これが投資の世界でも、市民社会の世界でも必要なことだろう。