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「暗殺」柴田哲孝著

「暗殺」柴田哲孝著・幻冬舎2024年6月発行

著者は1957年生まれ、小説家。「下山事件・最後の証言」で日本推理作家協会賞受賞。「下山事件・暗殺者たちの夏」他サスペンス小説の作品がある。

本書は安倍晋三元総理暗殺事件をモデルとしたサスペンス小説。ベストセラーらしい。真犯人は統一教会事件の被害者二世山上氏のほかに暗殺者がいるとの設定の小説である。

書評を読むと、一気に読み進める面白さある小説とあったが、私にはそうは思えない。陰謀論と昔のケネディ暗殺犯オズワルドの二番煎じに近い。前半のストーリーの展開は退屈である。前半は読み飛ばし後半から読んだ。

結論、真犯人は読んでのお楽しみも、それほどびっくりするほどのストーリーではない。事件発生から時が経ていないため話題になったのだろう。

統一教会と右翼・日本会議らしい組織が出てくるが、安倍元総理の身近から登場させたもの。朝日新聞阪神支局襲撃事件の赤報隊と統一教会との繋がりを感じさせるのも、有田芳生説の流用である。

サスペンス小説として読むならば、もっとフィクションであった方がすっきりする。ノンフィクション的に描くには迫力に欠け、力不足である。同じ暗殺でも浅沼稲次郎のような人物と元首相との人間的魅力、器量の違いもあるだろう。

「下山事件」が著者の作家としてのライフワークらしい。「日本の黒い霧」のような松本清張の真相に迫る凄さには遠く及ばない。失礼を承知で言えば、清張の「帝銀事件」ような小説を期待した。清張の偉大さを再確認した読書感である。


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