西郷を支えた言葉「西郷隆盛手抄言志録」
超訳言志録・西郷隆盛を支えた101の言葉」・濱田浩一郎著・すばる舎2017年発行
著者は1983年生まれ、歴史学者、作家、評論家。大阪観光学研究所客員研究員。
本書は西郷隆盛が生涯愛読した佐藤一斎「言志四録」から101条を選び、書き留め手元に置き、西南戦争の戦いの中でも持ち歩いた。自決後、その行方は不明だった。
宮崎日向の旧高鍋藩主・秋月種樹が、西郷の叔父・椎原国幹の家で発見した。明治21年「西郷隆盛手抄言志録」として世に出し、明治天皇にも献上された。
西郷は最後まで人のために生きようとした人物である。西南戦争も政府の火薬を盗んだ私学生たちを逮捕し、政府に突き出すこともせず、彼らに自身の体を任せた結果である。
「政を為すの著眼は情の一字にあり。情にしたがい、もって情を治む。これを王道という」
政治で大事なのは情の一字、人情の機微に従って人を治める。これを王道という。
「我れ公情を取りて、以って公事を行えば、天下服せざるなし」
公平な人情に基づいて政治を行えば、天下の人々で服しない人はいない。
「胸次晴快なれば、則ち人事百艱もまた阻せず」
胸中が晴れ晴れしていれば、どんな困難、苦労でも、難なく処理できる。
大久保利通は西郷を信じていたが、神風連の乱、萩の乱など士族の反乱が続き、木戸ら長州閥の突き上げで、私学校監視の対応をせざるを得なくなった。
私学校工作のため、政府の先頭に立ったが、日本の警察の父と言われる川路利良である。スパイとして送り込まれた警官が捕縛され、「西郷刺殺が目的」と自白し、西南戦争が幕開けとなったという。やはり西郷は悲劇の人である。