孤独と芸術 8
原意識の存在―心理学
さて、ここまで人の意識が物質世界に及ぼす影響についての説明を行なったが、人が認識している意識は氷山の一角…と先ほどにも述べた。おさらいをすると、話しているうちについつい目が動いてしまうなどの無意識的な動作や、睡眠中に見る夢の分析、何かを選択するときの思考パターンなど、実は我々の行動の90%は無意識のうちに行われていて、潜在意識の影響力は凄まじいとされている。つまり、我々が認知している顕在意識は意識全体のわずか一割にも満たず、その奥深くには潜在意識が眠っているということである。この話は近年になって常識になりつつあり、ようやく、意識下の領域に人々が目を向け始めたのである。
しかし、実は潜在意識のもっと奥深くには「原意識」という、我々すべてが“繋がっている意識”があるという。
原意識の概念とは、人間の“意識”は個人の肉体に閉ざされた別個のものなのではなく、例えるならインターネットのクラウドコンピューティングのように大宇宙にと接続しているという考えである。原意識を超意識・宇宙・アカシックレコード・神などとも呼ぶ。しかも、これは人間や犬などのような有機体の生物だけがつながっているわけではなく、宇宙にあるあらゆる物質はすべて等しくつながっているのである。しかもその原意識は、宇宙のはじまりであるビッグバンの時点ですでに存在していたという。
ここには、時間・空間を超越して莫大な情報が蓄えられている。自分の体験も、他者の体験も、先人の体験も、未来に起こる出来事も(我々の次元の世界では想像しにくいが…)蓄積される(アカシックレコードと捉えると分かりやすい)。
アカシックレコード(英: akashic records)は、元始からのすべての事象、想念、感情が記録されているという世界記憶の概念で、アーカーシャあるいはアストラル光に過去のあらゆる出来事の痕跡が永久に刻まれているという考えに基づいている。(Wikipediaより)
“すべてのものに心が宿る”という汎神論は、原始宗教的な古い価値観と受け止められがちだが、この原意識の概念は宇宙のすべてのものに心が宿っていると考えられることにもなり、最先端の思考実験において再び汎神論が脚光を浴びる事態にもなっている。
「シュレーディンガーの猫」や、「二重スリット実験」を振り返ると、原子レベルの異様な振る舞いのメカニズムを説明するものは、不確実な(可能性としてでしか存在できない)状態に陥った宇宙全体が、意識的な存在、すなわち我々によって観察されたときに明瞭な実際の存在になるとしている。つまり宇宙の全てのものは、我々「意識」の“観察”を前提なきにして存在できないということだ。