孤独の宰相⑨
75歳以上の医療費窓口負担の引き上げ。
カーボンニュートラル宣言。
原発処理水の海洋放水。
歴代政権が先送りにしてきたこれらの問題は、政治家にとって非常に難しい問題だ。とてもセンシティブに扱われるため、選挙で負けてしまう可能性があるからだ。
団塊の世代が75歳になろうとする時に、若者の負担をこれ以上増やすまい。
世界が脱炭素社会に振り切る中で、日本が出遅れたら産業が消える。
トリチウム濃度をWHOが定める飲料水基準の7分の1程度にまで処理した水だから放水しても問題ない。
科学的にかつ長期的には正しい選択であっても、感情のバイアスがかかるとそう簡単に進まない。
菅さんの政策特徴は、タンジブルであるようだ。
つまり実体があって、明確で分かりやすい成果が見えるものだ。
抽象的な一大スローガンを掲げるやり方は、情報源がテレビ新聞しかなかった時代のそれである。
今のネット社会においては、地味であっても、各政策と成果が一瞬で拡散され議論されるため、菅さんスタイルが成り立つわけである。