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風船男

むかし昔、あるところに。風船男と呼ばれる大男が住んでいました。

ある日、風船男の膨れ上がった体がパン!と弾けて、中から小さな男が出てきました。

実際には男は小さくなくて、いたって普通のサイズの人間でした。しかし、男はなんだか自分がとても小さな存在に思えました。

それまで感じていた力は幻想でした。男はその場に倒れ込むと立ち上がれず、ぐったりとしたまま半日が過ぎました。

倒れたまま、男は今までの自分を振り返っていました。

あれもこれも。どれもこれも。記憶に残っている失敗や恥の感覚は、膨れ上がった自己像がもたらしたものだと気付きました。

男は起き上がり、街へ出ました。時々膨らみそうになる体に気づきながら、人に会いました。

等身大の自分に慣れるには、少し時間がかかりそうです。でも、等身大の自分の方が、人と繋がりやすいと男は思うのでした。

大きく思えた自分を失う悲しみや、等身大でいることの気恥しさは、男にとって辛いことでした。

しかし、悪いことばかりではありませんでした。やがて男は、等身大の自分でいる方が世界との繋がりを感じられることに気付きました。

男はもう少し、この等身大の体で過ごすことに慣れてみようと思いました。

おしまい。

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