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リーンなプロダクト開発の道案内をしてくれる 「○○キャンバス」のススメ

この記事は、丸井グループ・marui unite ・Mutureの有志メンバーによるアドベントカレンダーに参加しています。


この記事の想定読者

  • プロダクト開発の進め方に不安がある人

  • ビジネスモデルキャンバス、リーンキャンバス、MVPキャンバス、バリュープロポジションキャンバスなどの「○○キャンバス」というツールを知ってはいるが、あまり詳しくない人

この記事を読むと良いこと

プロダクト開発のフェーズに合わせた「○○キャンバス」の使い分けを知ることで、プロダクト開発の進め方の解像度が上がることを目指しています。

「○○キャンバス」とは?

今回は「ビジネスモデルキャンバス」「リーンキャンバス」「リーンUXキャンバス」「MVPキャンバス」「バリュープロポジションキャンバス」の5つを紹介します。

1.ビジネスモデルキャンバス

Business Model Canvas – Download the Official Template

アレックス・オスターワルダー,イヴ・ピニュール著『ビジネスモデル・ジェネレーション』で紹介されているキャンバスです。ビジネスモデルの全容を9つのブロックで端的に表し、全体の整合性を見ながら既存ビジネスモデルの改善や新規ビジネスモデルの発明を行えるよう設計されています。キャンバスの右半分は提供価値とそれが生む収益を表し、左半分はそれらを支えるバックステージとそのコストを表すという構成です。

2.リーンキャンバス

Lean Canvas - 1-Page Business Model

アッシュ・マウリャ著『実践リーンスタートアップ』で紹介されているキャンバスです。ベースは前述のビジネスモデルキャンバスですが、「リーンスタートアップ」の考えを取り入れて一部改変があります。「最初に思いつくビジネスモデルは間違っているものだ」という前提に立ち、よく出来たビジネスモデルを作ることよりも、ビジネスモデルに潜むリスクを洗い出して素早く検証に移ることを目的に設計されています。

3.リーンUXキャンバス(V2)

Lean UX Canvas V2 by Jeff Gothelf

ジェフ・ゴーセルフ,ジョシュ・セイデン著『LEAN UX 第3版』などで紹介されているキャンバスです。前述のキャンバスとは明確に設計意図が異なり、リーンなUXデザインに取り組むプロセスの可視化を目的に設計されています。上段ではビジネスとユーザーそれぞれのAsIsをToBeの状態に変化させるための解決策の定義を行い、下段ではそこに潜む仮説の洗い出しと検証の計画を立てる構成になっています。

4.MVPキャンバス

MVPキャンバス v.3.0 日本語版(高橋雄介作成、最新版)

高橋雄介氏のSlideShare上で紹介されているキャンバスです。リーンスタートアップのアプローチであるBML(構築→計測→学習)ループを実践する上で、より効果的な学びを得ることを目的に設計されています。考案の経緯などは黒田樹氏のSlideShareで確認ができます。スライドのP.94にある図によれば、ソリューション仮説からのMVP構築の際に利用するほか顧客や課題の仮説を整理する利用方法も想定されているようです。

5.バリュープロポジションキャンバス

Value Proposition Canvas – Download the Official Template

アレックス・オスターワルダー,イヴ・ピニュール著『バリュー・プロポジション・デザイン』で紹介されているキャンバスです。ビジネスモデルキャンバスから「バリュープロポジション」と「顧客セグメント」の2項目を抽出して構成されており、キャンバスの考案者も同じです。「ビジネスモデルキャンバス+リーンスタートアップ」という点ではリーンキャンバスと同じですが、こちらはビジネスモデルキャンバスの考案者自身が設計したものであり、2つセットでを運用することを意図して設計されています。

どんなとき、どれを使えばいいの?

プロダクト開発のどういった状況においてどのキャンバスが有用なのか、上図にマッピングを試みました。バリュープロポジションキャンバスやMVPキャンバスについては、焦点を絞った構成要素となっているため使い所は明確だと言えます。ビジネスモデルキャンバス、リーンキャンバスについては、デザインプロセスの広域を俯瞰することができるため、ある特定のフェーズで使うというよりも、現在地の確認や全体の整合性の確認のために有用だと言えます。

唯一、リーンUXキャンバス(V2)については、デザインプロセスに焦点を当てるという点はユニークですが、キャンバスとしては使い所が難しい印象を受けました。ちなみに、最新のリーンUXキャンバス(V3)では、名前を「リーンプロダクトキャンバス」に改名した上で「リーンストラテジーキャンバス(V1)」をセットに追加するという大改革が行われており、よりプロセスやチームに焦点を当てる方向に舵を切ったように見えます。

もちろんこれらは私見に過ぎませんので、異論・反論・ご意見あればお気軽にコメントいただけると幸いです。1つだけ言えるとすれば、どのキャンバスもキャンバス上で整理ができたら終わりではなく、そこから仮説の抽出なり仮説の検証なりに進み、その内容の確度を高めていくことに意義があります。更新されないキャンバス・運用されないキャンバスは、リーンUXで言うところの「誰にも使われない無駄な中間制作物」そのものですので、キャンバスを作成する際はぜひとも運用もセットでご検討ください。

appendix

各キャンバスの参考書籍・記事

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