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読書の日記#2 『プールサイド小景・静物』

残暑が続く日々のなか、ありがたいことに在宅で仕事をさせてもらっている。しかしずっと部屋にいるのも運動不足でよくない。
先月ぐらいから朝のウォーキングを心がけていたのだけれど、ついに週1回のペースにまで落ちてしまった。習慣づけるのが苦手な自分を誠に遺憾に思いつつ、noteをまだ続けられているので及第点としたい。

さて、今回の作品はこちら。
庄野潤三『プールサイド小景・静物』新潮社(1965)

水中の陰影を映したような表紙に、"プールサイド"という言葉がなんとも爽やかで気になって手を取った作品。7編からなる短編集で、物語の中にはプールや海、釣り堀などの水辺が実際に現れたりもする。
全編を通じて、小説的な事件はあまり起こらない。『蟹』や『静物』では親子の会話のやりとりが目立つように、作者は日常的な作品を書く人だったんだなと思った。
ただそんな穏やかさと対比するように、日常に差す影が描かれていたのも印象に残った。妻子がいながら浮気をしている男性の迷い(『舞踏』)、夫の失職から先行きに不安を覚える妻(『プールサイド小景』)、偶然知り合った外国人の友人の離婚(『イタリア風』)がそれにあたる。
そのどちらがいい、悪いというような話ではなく、どちらもひっくるめて生活だよねーというのが作者の言いたいことであると受け取り、そうだよねーと心の中で返した。書いてあること以上の感想を持つのが難しい類の作品。

あと気になったのは文章の時代感。現代の文体や口調と大きく変わるところはないんだけれど、やはりどこか古風で品のある感じ。庄野順三は"第三の新人"というものに括られる作家らしく、安岡章太郎や遠藤周作も含まれるそうな。このあとに大江健三郎が登場する流れのようだから、図らずも今回は自分のあまり知らない時代の文学に触れたようだ。
昔の小説だなーと思った例としては、『相客』という話の冒頭に"オールナイト食堂"という言葉が出てきたのだが、聞いたことがなさ過ぎてそのあとの話がうまく入ってこなかった。ニッポン以外にオールナイトがつく言葉があったんだな。

2024/9/14

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