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馬肉が美味しいカザフスタン料理14選(中央アジア料理/中国新疆ウイグル自治区の料理/キルギスタン料理) 

中央アジアのガリバー・カザフスタン

カザフスタンは中央アジアにあり、国土面積が世界で第9位の大きさを誇る、自然がいっぱいの国です。

カザフスタンのアルマティの郊外でピクニック

日本人にとって中央アジアはあまり馴染みがないですが、中央アジアとは、カザフスタンキルギスタンウズベキスタンタジキスタントルクメニスタンのことを指します。まとめて呼ぶ時は私はスタンと呼んでいます。

https://goo.gl/maps/hB8pYiRFGyzjgxXj7

中央アジアは全て旧ソ連圏に属していますが、住民はイスラム教徒で、イラン系のタジキスタンを除いて彼らは全てトルコ語系の言語を話す遊牧民です。

トルコ語系の言語を話す民族のグループのことをチュルク(語)系と言いますが、チュルク系民族のグループの中では、スタンを除くとトルコ、ウイグル、アゼルバイジャン、タタール、ヤクート(サハ)が有名です。

カザフスタンは単に国土が大きいだけでなく、石油などの地下資源が豊富で、東部は中国とも国境を接していたり、中央アジアの中では圧倒的に経済が発展しています(あくまで中央アジアの中での話です笑)

よってスタンが一同に会すると一番強気なのはカザフで、可哀想なことにどの国にも見下されているのはタジク(タジキスタン)です。

美しいタジキスタン側のワハン回廊

今回の記事で主にご紹介するのは、カザフスタンとカザフ族が多くいる新疆ウイグル自治区で食べたカザフ料理です。

カザフスタン本国にいるカザフ人はロシア(旧ソ連)の影響を大きく受けている一方、新疆ウイグル自治区のカザフ族はウイグル族や中国の影響を大きく受けていて、その比較も面白いのですが、今回は比較ではなくカザフ料理全体をご紹介したいと思います。

新疆ウイグル自治区のカザフ料理店

馬肉が美味しいカザフスタン料理

カザフスタン料理の特徴は、遊牧民らしく、馬料理がある、お肉(特に羊)をよく食べる、野菜が少ない、脂っこい料理が多い、乳製品のレパートリーが豊富、長期保存が可能な食べ物が多いことです。

馬肉を食べる文化はユニークですが、毎日馬肉と言うわけではなく、主にお祝いの時や親戚で集まったなど気持ち特別な日に馬肉を食べ、日々食べるのは羊が圧倒的に多いです。

馬肉を使った麺料理のベシバルマック

カザフスタン滞在の間に、あまり馬と羊以外を食べた記憶がないのですが、羊の次に食べられているのは牛でしょうか?新疆ウイグル自治区では羊に次に食べられるのは鶏です。

同様に、羊がとにかく食べられるカシミール料理の記事でもご紹介しましたが、カザフの友達から誇らしげに「カザフ族は一家庭で一冬に一頭の羊を食べ切るんだ。世界で一番羊を消費するのはカザフ族」と聞かされたことがあります。実際、それ位本当にお肉をよく食べます。

カザフスタンでは羊の腸などの下処理が上手く出来たり、羊の色んな部位を使って美味しい料理が出来ると良いお嫁さんだと言われますが、私の友達は上手く出来ないと言っていたので、一つ上の世代の話となりつつあるのかも知れません。

また、彼らは野菜はあまり食べません、人によってはあまりと言うかほぼ食べない人もいます。

友達はポロ(羊の炊き込みご飯のことで、後述します)に入っている人参をわざわざ避けていたり、私が野菜を食べていたら「草を食べてるの?(=草は動物が食べるもの)」と冗談を言われました。

乳製品も豊富で、ミルク、バター、ヨーグルト  (ケティク)、カッテージチーズ等はもちろん、発酵させた馬のミルク(クムズ)、生乳を低温で煮込み、火を止めた後に出来るクリームを軽く発酵させて作るカイマク、ヨーグルトドリンク(アイラン)、発酵させたミルクを固めて乾燥させたしょっぱいスナック(クルト)等々、カザフスタン料理における乳製品の存在感はお肉に負けていません。

写真の真ん中の小さくて丸いものがクルトです

彼らの先祖はノマド(遊牧民)であったため、調理法として、お肉を塩漬けして乾燥させたり、上述のように乳製品も発酵させるなど長期保存を目的としたものが多いです。

また、中央アジア料理は共通する料理が多く、その中でもカザフスタン料理はお隣のキルギスタン料理とよく似ています。カザフスタンとキルギスタンは料理だけでなく文化も似ていて、あくまで個人的な感覚値ですが言語も50%位同じです。

(したがって、この記事でご紹介しているカザフ料理はキルギスタンでも良く食べられています)

実際に食べたカザフ料理のご紹介

初めにご紹介するのは、カザフの国民食であるベシバルマックで、馬肉や羊のお肉が載った平たい麺の料理です。

ベシバルマック(бесбармак)
ベシバルマックは「5本の指」という意味で、遊牧民であった彼らが手を使って食べていたことに由来します。

煮込んで作られますが、出される時には和え麺のような見た目だったり、底が浅めのお皿やプレートに盛られていてスープは少なめのことが多いです。

平くて幅の広い麺が多く、 幅が5センチ位の麺もあります。

ベシバルマックはキルギスタンの国民食でもあります

写真のベシバルマックは馬肉で、野菜は人参やジャガイモ、玉葱が載せられていることが多いです。

味付けは塩・胡椒(とローリエやクミン等を入れることも)のみとシンプルで主張しておらず、じっくり煮込まれたスープの味を引き立てています。塩気は少し強めです。

麺の上にただお肉や野菜を和えただけではなく、茹でられた麺にもしっかりスープの味が染み込んでいるのですが、確かに塩気が強い方が麺までしっかり味がして美味しい気がします。

家中がベシパルマックの匂いになります

こちらは馬のベシパルマックでしたが、カザフの馬料理の中で最も私の好物であるカズィについてご紹介します。

カズィ(Qazy, қазы)
馬のソーセージで、お腹やリブのお肉や脂肪、腸の部分から作ります。

ソーセージと言っても完全にミンチにしないのでお肉感もしっかりあり、脂っこい料理が多いカザフ料理の中ではさっぱりとした部類に入ります。

カズィは生か、軽く燻製の状態で売られていて、食べる前に茹で、薄くスライスして食べます。本格的なカズィはスーパーにはなく、バザールでしか買えません。

ベシバルマックに使われたカズィ

特に燻製のカズィが美味しいので、ぜひ食べてみて下さい。

燻製のカズィは韓国のスンデに見た目が少し似ています

ベシバルマックは、日本のラーメンのように街を歩けばどこでも食べられるという訳ではなく、また、大人数で食べることが多いので、中級以上のレストランでないと出していないです。ベシバルマック専門店や美味しくて有名なお店を事前に調べてピンポイントで行くことをお勧めします。

カザフスタンの西部では魚のベシパルマックが食べられているそうで、今度食べてみようかと思います。

インスタントタイプのベシバルマックを買って、数年ぶりに日本に帰った時があったのですが、素材を生かしきれず、他の具と共にお味噌汁に入れたりしていました(笑)

また、カザフスタンの国民食ですが、お隣キルギスタンの国民食でもあります。

@キルギスタンの首都ビシュケクの親友の家

カザフのポロ(палау)
中央アジアでポロが有名なのはウズベキスタンですが、カザフスタンでもポロはよく食べられます。

これもカズィです

お米を油や羊の脂で炒め、羊の肉と炊き込んだニンジン入りの炊き込みご飯です。

@アルマティのレストラン

お水を入れるかのようにドバドバと油を入れ、胃の弱い方だと胸焼け、胃もたれ必須なヘビーさです。スタンの胃は日本人と違います。

こちらは新疆ウイグル自治区のポロですが、底に溜まった油をご覧下さい。

新疆もカザフ・キルギスも同じ位脂っこい @新疆ウイグル自治区のカシュガル

味は羊の油とにんじんの甘みで、脂っこさを除くとマイルドな味です。

シムケント出身の(友達の)お母さんが作ったカザフポロ

このポロを作ってくれた友達のお母さんはシムケント出身で、シムケントはウズベキスタンに近いので、カザフスタンの中でポロが美味しくて有名です。

私もポロを作ったことがありますが、水加減が難しく、リゾット化しました。そのことを伝えたら、友達は「私たちも何度も水の量を失敗して覚えたんだから」と言ってくれました。優しい友達です。

ちなみに新疆ウイグル自治区のウルムチで食べられているウイグルのポロは白いことが多いのですが、たまに茶色いポロのお店があり、口コミで人気があり、わざわざ友達と出かけて食べに行っていました。

そう言えばウイグル族のお姉さんが、「ポロに砂糖を少し入れると茶色くなるのよ♪」と言っていて、確かにその時出来上がったポロはご飯が茶色かったです。

ウルムチで一番多いのはこんな感じの色のポロです。

@新疆ウイグル自治区ホータン

・カザフのクルダック(қуырдақ)
クルダックは元々はキルギスタン料理(куурдак)で、クルダックは「炒める」という調理法から付けられた名前です。

カザフスタンの伝統的なクルダックは羊のレバー、肝臓、心臓、肺など内臓をタマネギと炒めて作られますが、大衆的な食堂や家でよく作られる身近なクルダックは羊の内臓は使わず、お肉と野菜(じゃがいも、人参、玉ねぎ等)だけです。

赤いボウルに入っているのがクルダックです

写真のクルダックは煮込みのように見えますが、これはスープではなく油です。

野菜の切り方は、日本のカレーに入っているゴロゴロした野菜よりも一回り以上大きいサイズから、1センチ弱四方位の小さい切り方まで色々です。

なぜか新疆ウイグル自治区トルファンの公園で立ったままクルダックを食べました

ショルポ(сорпа)
ショルパ、ソルパ、スルパ、、と呼び方が色々ありますが、「出汁」という意味で、お肉(主に羊)をしっかり煮込んで作るスープです。

味はベシパルマックと同様、シンプルに煮出したスープに塩で味付けをした感じです。

@カザフスタンのジャルケント

じゃがいもや人参、玉ねぎ、トマトなどが入っていて、最後にディルなどのお好みのハーブを散らします。

@カザフスタンのアルマティ

カザフのラグマンショルパ(лағман сорпа)
元々ラグマンはウイグル族の料理(ﻟﻪﯕﻤﻪﻦ)で、新疆ウイグル自治区のラグマンは和え麺タイプなのですが、今回ご紹介したいのはスープタイプのラグマンです。

ウイグル族のラグマン

カザフスタンでも最もメジャーなラグマンも和え麺タイプですが、新疆ウイグル自治区から初めてカザフスタンに行った時にスープに入ったラグマン(ラグマンショルパ)もあることにとても感動しました。

麺から小麦粉で作り、羊、赤いパプリカ、タマネギ、ニンニク、ジャガイモなどが入っています。

ラグマンショルパは先にお肉と野菜を炒めたものを茹でるので、味付けはベルパルマックやショルパより複雑な味(語彙力笑)です。

麺のコシに関して言えば、圧倒的に新疆のラグマンの方がコシがありますね!ちなみに日本でラグマンを作る時はうどんで代用していました。

カザフのマンティ(мәнті)
小麦粉で練った生地の中に、味を付けたお肉を詰めた具材を蒸して作り、基本は既にお分かりのように羊のお肉です。

羊だけでなく、カボチャやウリが一緒に入れられることもあって、羊とカボチャの組み合わせのマンティがお勧めです。

羊とカボチャの配分は大体一対一です。

カザフスタン人はバターやヨーグルト、カイマクなどの乳製品、ディルなどのハーブと一緒に食べますが、新疆ウイグル自治区のカザフ族は中国の影響で醤油とお酢(中国黒酢)、唐辛子のソース(ただし中国人に比べて辛くなく、トマト風味の酸味がある)で食べていたりします。

カザフスタンのパン

カザフのナン(нан)
カザフスタンの主食はナン(нан)と言うパンで、日本のパンと比べると厚み・重みがあって食べ応えがあります。

このナンはカザフスタンのナンではサイズが大きい方です

色々なナンがありますが、よく見かけたのは大きさは直径約20センチ、厚みは約2.5センチ位の丸いナンで、均一な厚さか、真ん中が少し凹んでいて縁がピザのクラストみたいになっているタイプの二種類です。

※定規で測った訳ではないので適当に言ってたらすみません(笑)

パンの二つ目は、揚げパンのボルサック(бауырсақ)です。

・ボルサック / バウルサク(бауырсақ)
主食としてよりスナックとして食べられることが多い揚げパンで、カザフ版ドーナツのような感じでしょうか。

毎日食べられるナンと比べると登場頻度は低いですが、カザフ族にとって重要な食べ物で、特別な機会には用意されることが多いです。

味はと言うと、家庭で一番作られるボルサックは塩の味も砂糖の味もせず、かすかに甘い小麦の味がします。日本の揚げパンと比較にならない位オイルが染み込んでいて重めですが、揚げたてのボルサックは香ばしい香りが食欲をそそります。

親友がボルサックを作っています

大きいボルサックを保管する時は、下の写真の左側の様に重ねます。

単品で食べると味のパンチが弱く、少ししょっぱいか、少し甘いともう少し食欲をそそるのに、と思ったこともありますが、カザフ族のテーブルには大体ジャムや蜂蜜などがあります。

サイズは大きいものから、下の写真のような一口サイズの小さいものまで色々あります。

ボルサックはお祝いや客人をもてなす時にテーブルを華やかにするために用意され、作る時には多めに作るので、客人が帰った次の日の朝ご飯などにはそのままテーブルに出て来ます。

この中にボルサックはありません(笑)

シェルペク/ スィルペック(шелпек)
ボルサックと同じく揚げパンの一種ですが、シェルペクは薄くて平ら、柔らかいのが特徴です。

カザフスタンの乳製品

まずはクルトからご紹介したいと思います。

クルト(құрт)
発酵させたミルクを固めて乾燥させたしょっぱいスナックです。

定番のクルトは球体タイプ(写真の中ではパッケージされているタイプ)で、かなり硬く、少しずつ舐めたりガジガジと齧って時間をかけて食べていました。

新疆ウイグル自治区のクルト(ウイグル族のお店だったかカザフ族のお店だったか記憶なし)

下の写真の右下の、真ん中が少し窪んでいるタイプもよく見ますね。

@新疆ウイグル自治区のカシュガル

ウルムチに住んでいた当時、二道橋の道端ではクルトが1つ、1元で売られていたので、食べ歩きしていました。

日持ちしますので、多めに買って食べながら旅行しても楽しいと思います♪

手前のドリンクも甘くてサッパリしていて夏にお勧めです

味はシンプルに酸味と塩と言う感じで、想像よりかなりしょっぱいです。恐らく大半の日本人は「何だこれ?」となりそうな食べ物です。

伝統的なクルト以外にも、酸味や塩味が弱く、柔らかめなマイルドなクルトやフレーバー付きの(辛くない)チリやバジル、ミントなどのクルトもあります。なかなかクリエイティブです。

クルト初心者の場合はその辺から試してみるとハードルが低くていいかも知れません♪

バターの消費量もハンパない

クムズ / クムス(қымыз)
発酵させた馬のミルクで、所謂馬乳酒です。国民食がベシパルマックだとすると、クムズは国民飲料と言えます。

街角で売られているクムス

しかし、馬肉と同じで、チャイなど毎日飲まれるのミルクは牛のミルクです。

味は牛のミルクを薄くして、少し酸っぱく、そしてアルコール分が含まれます。クムズによっては微炭酸と言うか、少しシュワッとしているものもあります。

クムズは冷たい、またはひんやりとした温度のものが出され、夏に飲むとさっぱりして美味しいです。アルマティの夏は暑く、道端で一気飲みをしたことがあります。

伝統的に写真の映っている小さいお椀のようなカップで飲まれ、このカップはカザフ語ではChini(шыны)、ロシア語ではPiala (пиа́ла)と言います。

なぜ敢えてここでロシア語も載せたかと言うと、カザフスタン人は旧ソ連圏だったので、バイリンガルでカザフ語とロシア語どちらもほぼ母国語レベルで流暢に話しますが、単語は結構ちゃんぽんになっています。

そしてこのカップに関してはChiniよりもPialaで呼ばれる頻度の方が高かった気がします。(うろ覚え)

こちらはキルギスタンで飲んだクムズ

カザフスタンのチャイ

カザフ族にとってチャイはご飯と一緒または食後の後に飲む以外にも、社交文化の重要な部分を占めており、人が集まると何かと「とりあえずチャイでも」となります。

カザフのお母さんたちは先程ご説明したPialaでチャイを出してくれますが、若者は普通にマグカップやティーカップも使います。

飲み方は、定番のミルクティーかストレートで、ティースプーンで砂糖を1杯、2杯入れます。

また、朝ご飯に飲むチャイはスープのように大きなお椀で飲むことも多いです。

冬は身体が温まる

少し塩を入れて飲むのですが(入れない人もいます)、美味しいのでぜひ試してみて下さい。

同じく塩を入れるカシミールチャイについての記事はこちらをどうぞ♪

朝ご飯以外の時も少し塩を入れて飲んでもいいですが、朝ご飯以外の時は圧倒的に砂糖を入れます。

若い世代より上の世代の方が塩入りのチャイを好む気がします。

また、カザフスタンに限らないですが、都市部より田舎に行けば行く程、チャイの砂糖や塩の量が増えていきます。

カザフに限らずスタンはお茶会が大好きです。

特に女性が二人以上集まれば即座にチャイパーティーが始まりますので、常に臨戦体制で臨みましょう。

チャイにナン、フルーツ、ビスケット、ジャム、ドライフルーツナッツ辺りが定番ですが、その時に出せるものを何でも出して大丈夫です、ボルサックがある時はボルサックももちろん加わります。

肝心のチャイが映っていませんが、チャイパーティーの様子です

また、旧ソ連圏だったカザフスタンではロシア料理や、旧ソ連料理とも言うべき旧ソ連圏全体で共有されている料理もよく食べられていますが、字数の関係で次回また別にまとめたいと思います。

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