デヴィッド・リンチ
デヴィッド・リンチが亡くなった。
同時に私のなかの一部も死んだ。きっと他にも数えきれないほどの人たちの一部が。その失われた一部をぜんぶ寄せ集めて固めても、デヴィッド・リンチには戻らない。
『ツインピークス』に夢中になったのは、よくわからないからだった。深夜の放送を録画したビデオを翌晩観終えるたび、兄と一緒に「あれってどゆこと?」と答え合わせに躍起になった。
不可解が楽しい。そのことを教えてくれたのが、リンチだった気がする。
昨今はネットの海をちょいと泳げば、たいていの答え、もしくは答えっぽいものがすぐに見つかる。博覧強記なエーアイもいる。
それを便利と呼ぶか怠惰と呼ぶかは場合によりけりだが、そうしたテックが世代の思考形成に寄与していることは確かで、その上に未来は形作られていく。自分が好もうと好むまいと。
青春時代のヒーローたちがひとり、またひとりと死んでいくたび、時間が自分に追いつき、追い越そうとしているような感覚に襲われる。
時間はどうやっても止められないが、リンチの天気予報がいつでも指先にあるのは救いだ。
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