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ニューヨークで地道に活動するメイドカフェのみんなが、ピュアで、優しくて、愛せずにはいられなかった話。

ある日ニューヨークの街を歩いていると、驚きの現象が起きた。おそらく数十年ぶりに、筆者のスカウターが反応したのである。幼少期に近所の子供たちと、汗だくになりながら遊んだドラゴンボールごっこ。誰の目にも、むしろ自分にも見えない筆者のスカウターは、その時大いに活躍したものである。それが年を重ねるにつれ、大人になり、スカウターの存在など完全に忘れ去っていた。そんな過去の遺産であるはずのスカウターが、時を経て、再び反応したのである。

......!!!??? なにか居る!半径100メートル以内に、ただならぬ気配を感じる。ざっと戦闘力18万といったところか。

気配を感じる方向へ歩を進める。徐々に、徐々に、気配が大きくなる。近い、近いぞ......



............なんか、いた。

かわいらしい音楽にのせて、軽快に踊るラブリーな二人。んーーー、なんか全然敵意を感じない。いや、むしろ非常に友好的で、ピュアで、優しくて。不思議と筆者を惹きつけてやまない。全身から湧き出る、絶対いい子たち感。

なんというか、すごく明るくて、元気で、ポジティブなバイブス。

んーーー、話しを聞きたい。何が起きているのか。............うん、もういいや、話しかけよう。

筆者「こんにちは、ここで何をしているんですか?」
女の子「こんにちは、今日は私たちヘブンリーメイドカフェの一周年を記念して、無料でボバティーを配っています!」

おーーーーなるほど、メイドカフェの皆さんだったのだ

以前人づてに、ニューヨークにもメイドカフェができたのだが、クローズしてしまったと聞いていた。メイドカフェといえば、日本が世界に誇る、重要文化財である。がゆえに、クローズと聞いて少し寂しい気持ちがあったのだが、こうして、元気に、活動してるじゃないか。邪魔をしない程度に、もう少し話を聞いてみよう。

筆者「どこかの場所に、店舗は構えているんですか?」
メイドさん「今はないけど、地道にお金を貯めて、数か月以内にはポップアップ(期間限定でどこかに店を出す事)をやる予定です」

......なんだろう......感動した。こうして路上で、けなげに自分たちを知ってもらうために、寒い中、笑顔、勇気、100パーセントで踊っているのである。

筆者「普段、皆さんは何をされているんですか?」
メイドさん「私たちのほとんどは、大学生です」

筆者「お姉さんは、何故メイドになろうと思ったの?」
メイドさん「かわいいものを身に着けて、かわいいものに囲まれて、仕事がしたかったの」

筆者「メイドのお仕事の一番いいところと、嫌なところはそれぞれある?」
メイドさん「悪いところなんて、何もないわ。いいところは、以前ポップアップをやった時に、実際にお店でウェイトレスをやったけれど、人前でパフォーマンスできるところが最高に楽しいわ。かわいいものを身に着けて、パフォーマンスするの!」

......めっっっちゃラブリーーーーーー!!

その後、筆者が日本人であることを伝えると、

メイドさん「うわー、それなら本場のメイドカフェに行ったことがあるのね!!!うらやましいーー。本場はどんな感じなの!?」

............ごめん、......俺、行ったことない......

どうしよう、こんなに友好的に話してくれて、こんなに興味を持って聞いてくれているのに。

自分を恨んだ。行ったことないと伝えたら、寂しい顔しないかな。なんか、シュンとしないかな。もういっそのこと、行ったことあるていで、ぶっこんじゃおうかな。

落ち込んだ。
こんな時は、いつも祖国を想う。

日本の父さん、お元気ですか?その後お酒は飲みすぎていませんか?今日も僕は、元気です。

............いーーーや、嘘はよくない。行ったことがないものはないんだ。こんな素直な子には、素直に話そう。

筆者「ごめん、僕はメイドカフェに行ったことがないんだ」
メイドさん「そうなのね!じゃあ次お兄さんが日本に帰った時、メイドカフェに行ってみて、ニューヨークに帰ってきたら、どうだったか、その感想を聞かせてね!」

めっちゃいいやつーーーーーー!!質問にも何一つ嫌な顔せず答えてくれるし、なんか、マジで、ありがとう。
そうだね、今度日本に帰った時は、ずっとずっと気が狂いそうになるくらい食べたかった松屋の牛丼も、夢にまで出てくるセブンのネギ塩カルビ弁当も、全部全部ぶっ飛ばして最優先でメイドカフェ行ってくるからね。成田から、直行で、行ってくるからね。そしたらさ、その時の話、今度しようね。

これ以上、彼女たちの邪魔をしてもよくないため、最後に写真だけ取らせてもらって、その場を後にした。
彼女たちが流しているかわいい音楽を背後に聞きながら、ふとあることに気づいた。筆者のスカウターは、きっと、まっすぐでピュアな彼女たちの頑張り、前向きな気持ちの強さに反応していたんだ。そのまっすぐな純粋さが、ホコリをかぶっていた筆者のスカウターを、数十年ぶりに再始動させたのである。

絶対絶対、店舗構えようね。そしたら、絶対行くからね。勝手に日本を代表して、君たちを心から応援しているよ。ありがとう、またね。


最後までご一読いただき、ありがとうございます。

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