エリーザベト・ヘンゲン『ヴェーゼンドンク歌曲集』(ワーグナー)より『天使』(1947)
ワーグナーのパトロンだったオットー・ヴェーゼンドンクの婦人、マティルデの詞にワーグナーが作曲した5曲からなる連作歌曲集『ヴェーゼンドンク歌曲集』。
マティルデとワーグナーは情事を重ねる中だった。
この歌曲集と楽劇『トリスタンとイゾルデ』は密接に結びついており、ワーグナーは濃厚な愛欲の世界を描くが、第1曲『天使』は静かに思いのほか淡々に天国へ憧れが歌われており、『トリスタンとイゾルデ」よりもむしろ『ローエングリン』の世界観に近いかと思う。
エリーザベト・ヘンゲン(Elisabeth Höngen, 1906年12月7日 - 1997年8月7日)は「フルトヴェングラー、バイロイトの『第9』」でアルトを担当していることでその名を知られているが、SPレコード期からウィーン国立歌劇場の第一アルトの座にあった名歌手。
残念ながらその名声の割にはレコード録音は多くないが、そんな中この『ヴェーゼンドンク歌曲集』は彼女のリート歌手としての才をかなり明確に示した秀演。
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