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クレデンザ1926×78rpmの邂逅 #38~ロッテ・レーマン オペラ・アリア・レコーディングス 1924-1930 『ソプラノのイデア』として

毎度毎度おなじみのロッテ・レーマン(Lotte Lehmann, 1888年2月27日 - 1976年8月26日)。

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今回は78rpm時代としては規格外の多さである彼女が録音したオペラ・アリアの中から、トマグノーワーグナープッチーニR.シュトラウスを見繕って・・・。
レーマンがアメリカへ渡る前、彼女が活躍したベルリンの芸術が最高度に熟成された時期、1924年から30年に録音された12曲を。

レーマンを紹介した、触れた記事の数々を見ると、彼女を形容する言葉として共通するのはおよそ以下のようなものだろう。

主にドイツ語で歌われるオペラや歌曲をレパートリーとする。

ヨーロッパ時代はウィーン、ベルリンの両歌劇場で活躍。

リヒャルト・シュトラウスのオペラ作品には欠かせない存在で、シュトラウス自身がレーマンを高く評価し、レーマン自身も『ばらの騎士』の元帥婦人を最も大切な役だと思っていた。

R.シュトラウスと同時代のオペラ作曲家、ジャコモ・プッチーニもレーマンを高く評価していた。

アルトゥーロ・トスカニーニ、ブルーノ・ヴァルター(ワルター)という時代を代表する大指揮者から愛され、数多く共演した。

自らはユダヤ系ではなかったがナチスを嫌悪し、1938年にアメリカへ移住。

1951年の引退後は、カリフォルニア・サンタバーバラの自宅で教え、ヨーロッパでもマスタークラスを持ち、後進の指導に熱心だった。

こうして見ていくと、レーマンが両大戦間時代のソプラノ歌手の中にあって、ほぼ理想的な、ソプラノ歌手としてのあるべき姿のモデルであった、と言える気がしてくる。
リリコからスピントというソプラノの中でもど真ん中な声のキャラクター、それ故に数々のオペラのプリマドンナをほぼ網羅できるレパートリーの広さ、そして容姿、演技力を兼ね備えたいたレーマン。
オペラだけでなく、キャリアを重ねていく中で、豊かさ、機微を増していった正統的な解釈で、モーツァルト、シューベルト、シューマン、ブラームス、ヴォルフ、R.シュトラウスといったドイツ・リートの名演、名盤を数多く残したことも特筆に値する。
ナチスに明確に異を唱え、志を同じくするトスカニーニやヴァルターと同じく”コスモポリタン”的信条、性善説的人生観を持っていたであろうレーマンは、人間的にも教養豊かで寛容な気持ちを持ち続けた人だった。
「芸術性と人間性の高次元での融合」は、まさに激動の時代を生き、活動した歌手としての「イデア」を高らかに示すものではなかったか?

ロッテ・レーマンのオペラ・アリアの78rpm6枚をクレデンザ蓄音機で。

まずはフランス・オペラ。
 トマ『ミニョン』より『君よ知るや南の国』グノー『ファウスト』より『テューレの王』。この2曲はフリーダー・ヴァイスマンが指揮するベルリン・シュターツカペレと1930年6月18日にレコーディング。歌唱はドイツ語。手元にあるのは日本コロムビア(日畜)盤。

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2枚目はワーグナー『タンホイザー』のエリーザベト。
『素晴らしい大広間よ(歌の殿堂)』『全能の処女マリアよ(エリーザベトの祈り)』
こちらもバックはフリーダー・ヴァイスマンが指揮するベルリン・シュターツカペレで、1930年2月21日の録音で同じく日本コロムビア盤。

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3枚目もワーグナーで『タンホイザー』と録音日も同じ。『ローエングリン』のエルザ。
『微風よ、私の嘆きを聞いておくれ』『陰鬱な日々に一人』
こちらはパローフォン・オデオン・シリーズ。

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ワーグナーに続いてプッチーニ
まずは1924年2月18日に録音された、今回の6枚の中で唯一のアコースティック録音。
『マノン・レスコー』より『この柔らかなレースの中で』『蝶々夫人』より『ある晴れた日に』。いずれもドイツ語歌唱。バックはカール・ベーズルが指揮するベルリン・シュターツカペレのメンバー。オデオン盤。

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もう1枚、プッチーニを。『トスカ』より『歌に生き、愛に生き』『ボエーム』より『私の名前はミミ』。バックはフリーダー・ヴァイスマンが指揮するベルリン・シュターツカペレ。こちらもドイツ語歌唱。1929年6月13日録音のオーストラリア・パローフォン盤。

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最後の6枚目はR.シュトラウス『ナクソスのアリアドネ』よりアリアドネの長大なモノローグ『すべてが清らかなある国が』から『彼女はここで一人生きている』『彼女は軽く息をしている』。1928年9月4日、ヘルマン・ヴァイゲルトが指揮するベルリン・シュターツカペレのメンバーとの録音。パローフォン・オデオン・シリーズ。

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12曲続けてお楽しみあれ。



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