BACH音遊び-対位法職人の休日-インヴェンションから平均律を超えて
バッハのハ長調は、お手本のお手本である。
ド・レ・ミ・ファ・ソという最も基本的なテーマで、作曲家として、どこまでのことがやれるか。
ピアノで必ず通る道、しかしてこれこそバッハのハ長調の原点。
対位法の基本は、二声である。
では、これを三声に拡張するとどうなるか。
こうしていよいよ本格的なフーガの扉が開かれる。
ド・レ・ミ・ファ・ソという何のひねりもないテーマで、四声フーガが書けてしまう。(そして、それをハ長調からロ短調まで、全24の各調性に拡大することさえできる!)
二声、三声、四声と次元を拡張し、フーガにまで至る道。
これは作曲プロセスのみならず、通奏低音奏者としてのレッスンにさえなっているから驚きである。
当時、バッハには実際的な必要性が生じていた。
子どもたち、弟子たちが家業を継ぐためにどんなテキストが必要か。段階的に効率よく学べるテキストはないものか。
ないんだったら作るしかない。
音楽学校がない時代、音楽家の家の子どもは音楽家になるしかない。職人の家の子は職人になるしかない時代である。
実際、これら良質のテキストは19世紀になってバッハをリバイバルせしめた。
話は、それだけでは済まない。
職業音楽家は、オルガンもカバーする。バッハは、むしろオルガニストとしてそのキャリアをスタートした。
オルガンだったら、ドレミファソのフーガで、一体どこまで遊べるのか。
職業音楽家は、ドレミファソをしゃぶりつくしてこそ。
ここまでやられた日にはもう。