3/15 できたて日和だった日, 36/40

臨月。夫と二人で分娩先の病院に、ただし
産婦人科ではなくて心療内科に向かう。

午後からの受診だし、もう夫と二人での外出も
数えるくらいしかないからと、
早めに家を出て、前から目をつけていたイタリアンのランチに行く。

パンがめちゃくちゃにおいしくて、おかわりを頼んだがなかなかこない。

夫がもう一回声をかけてみようか、と言ってくれたが
ホールの女の子の忙しそうな態度に棘を感じてしまって、
うーん、まあいいか、と答える。

厨房の方から
「あ、俺が間違えたわ~」
と聞こえ、
その少し後に、ホール担当ではない「俺」が「お待たせしました~」
とパンを持って来てくれる。
彼はそのあと、隣のテーブルに
「そのパン、出し誤りしました」
と告げて厨房に戻っていった。
デザートにティラミスを頼もうかと思っていたが、何となくやめた。

お店を出て、
「パン、出来立て食べれてラッキーだった」
と言ってみる。本当にそんな気がしてくる。

今日の診察が最後になるかもしれないな、と思っていたので
診察前に夫と何を話すか、何を聞くかを話しておきたかったのだが
そんなことすっかり忘れて、百均をうろついて、子どものための湯温計を見つけ、百均って何でも売ってるね~と言いながら買う。
病院の前まで来て急に思い出し、残り5分ほどの時間を使って
外のベンチで夫と打ち合わせをする。
夫も「緊張してきた」と言う。うつしてしまったかもしれない。

先生は夫と私と3人の時間、
私と夫、それぞれだけとの時間を丁寧にとってくれ
1時間半も時間をかけてくれた。
診療明細を見たら『通院療法(30分未満)』となっていた。
色々あるのだろうが、なんだか申し訳なくなる。

夕方になっていたがまだ明るかったので、少し歩く。
すぐ張るお腹が気になるし、限定のドーナツも気になっていたので
ミスドに。
限定のドーナツはきなこがかかったものしかなかったので
チョコと生クリームの使われている
限定ではなさそうなドーナツにする。

ミルクティーも飲み放題らしいよ、あるかな、と言いながら向かったが
あった。うれしい。

新しい家がほぼ正式に決まる。
あの家の間取りで、遠慮なく妄想してもいいのだ、と思っても
まだ現実感がない。
それに、今は妄想よりも
どうやって荷物を減らそうか、どうやって荷造りするんだろうか
という不安のが大きく、あまり考えられないことに気づく。

自分が子を産み、家を購入して住むこと、
驚くほどに現実感がない。

ミルクティーのおかわりを夫が頼みに行ってくれたが
「ミルクティーを飲まれているお客様が沢山いらして、
いま抽出しているところです。時間がかかります。」
と言われたとのこと。
そういえば一杯目も今から抽出しますと言われた。
「今日はできたて日和だね」と言ってみたら
なんだかそんな気がしてきた。
三杯目からは店員さんが注ぎに来てくれるものが飲めた。
夫が「ミルクティーのポット、4つぐらいに増えてたよ」
と教えてくれた。本当に沢山いらしてるんだなと思う。

新しい生活が始まるはずなのに、
エンディングのような一日だった。
ここの心療内科の受診に一旦キリがついたからか。

帰りのバスを待っているとき、列の後ろの方からロシア語が聞こえる。
夫が「いろいろ決まって、スッキリできてよかったね」と言ってくれる。
「良い方向に進んでる」とも。

2人で座れたバスの中、「良い方向に進んでる」のは
ひょっとして、苗字が変わったからか?
あるいは、そういえば私って厄年が終わったんだっけ?
と、気になって検索していたら少し気持ち悪くなる。
「あんまりスマホ見てると気持ち悪くなるよ」と言った夫もすでに
気持ち悪そうだ。
彼はミルクティーを飲みすぎたのが原因だと言っている。

診断をはっきりともらったこと、
治療は年単位でかかること、また、
医療者とのかかわりの中で治ることもあれば
まったく関係のないところで治ることもある
と言われたことなどを思い返す。
まあ、そうだろうなあと思う。

帰宅してしばらくしても2人とも気持ち悪いまま、
何か口に入れてスッキリしたい、と思い
豚肉を焼き、えのきも蒸し焼きにする。
炭水化物や甘いものを摂りすぎたのかも、と思ったが
単に食べすぎだったのかもしれない。
それなのにうめぼしと、海藻のスープもおいしくいただいた。
気持ち悪いと言いながら元気だ。


夫とお城を見に行ったが、帰り道
速足すぎる夫に引き摺られそうになりながらついていく夢、
(いっそ引き摺られていれば負傷できたのにとすら思った)
家が火事になり、部屋からマットレスを2人分投げた夫に
「あそこに飛び降りよう、大丈夫だから」
と言われて絶望する夢、
現実の部屋と寸分違わぬ部屋で寝ていたら夫が布団に潜り込んできた、
と思ったら身をまとう脂肪がやけに冷えて気持ち悪い別人で、
声を上げたいが上げられない夢、
の悪夢三部作を見て夜中に目が覚める。

隣の部屋で寝ている夫のところに行きたいが、
今朝も早起きさせてしまったので、起こすのが忍びない。

一人で寝ようと耐えていると、
寝る前に「明日にでも日記に書こう」と思っていた昼間の記憶が
だいぶ飛んでいることに気づき、涙が出そうになる。

寝て起きたら忘れてるようなことは大したことではないのかもしれないけど、
自分にとっては、そちらの方に大事な何かがあったような気がしてしまう。

こうして今日もダラダラと書きすぎる。
でもいつかきっと、これを見て懐かしむ時がくる。
「ダラダラと」記録を残した自分に感謝する時がくる。
あるいは、うらやむ時が。

もしいつか、見る時がきたら、の話だけれど。

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