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子育ての自己責任論

先日、Yahooニュースオリジナルで、「「自己責任」が重すぎる──増える「子どもがほしくない20代」」という記事を読みました。

ざっくりいうと、子供を育てる自信がない、それは親だけに責任が行き過ぎ女性ばかりが損をするから、といった意見です。
子育て経験者としてこの記事に完全に同意です。


ただこの記事は注目を集めるために不安感の部分にフォーカスしすぎていて、私のように、ここまで考え込まずに恋愛・結婚・出産・子育てと進んでいる人もたくさんいるとは思います。

ただ総論として「育てる自信を持てない」という感覚を多くの若い人が持っているのは間違いなく、まじめに考える人ほど子育てに対する障害の多さ、自分にのしかかる責任の重さを感じているのではないでしょうか。

でも子育ては非常に大変ですがとても良いものなので、経験者として子育てに対する不安感を減らすために何かできないかと考えました。
そしてアドラーの「課題の分離」という考え方がこの問題を考える際に役に立ちそうなので、今回はそれをやってみようと思います。


子育ての「課題の分離」


記事に登場する人々はすべて、「子育ては親の負担がハンパない」といった言葉を発していて、記事にはそれらの対策も述べられていましたが、正直言って良さそうな解決方法はなかったように思います。

そこで、そもそもすぎる話ですが、まず子育てが本当にすべて親の責任なのか?という大前提を疑ってみたいと思います。


私は、「子供って親が育てているつもりだけど、実は子供が自分の生命力で勝手に育っているだけじゃないか」と感じることがあります。

親がいくらこうしたほうがいいと思ってもその通りになることはまれで、それとは関係なくいつのまにか育っているので、結局親は子供という植物の水やり係に過ぎないのかもしれません。

親は子が育とうとしているのをじゃませずに水を与え続けるのが本来の仕事であり、それが朝顔なら朝顔として咲けることを願うしかないというイメージです。

なんでもかんでも親がやらなければならないという呪縛をいったん解いて(=課題の分離)、これは親の課題、これは子供の課題、これは社会の課題と分けていくことで、問題が見えやすくなる気がします。


例えばこういうこと


親の課題:子供を作り出産し、子供に衣食住と愛情・経験・習慣を与える
子の課題:自ら成長し、学習し、一人前の成人になる
社会の課題:未成熟な子供が大人になるまでのサポートを可能な限り行う

と切り分けてみます。

まず大事なのは、親は子に与えるだけであって、大人になるのは子供自身の課題だということです。
その理由は、親と子は別の生き物なので親が出来るのは「与える」までしかなく、どう成長するかは子供自身の問題だからです。

また社会は、未成熟な子供が大人になることへのサポートを常にしなければいけません。
子供は未成熟で手がかかりますがそれは親のせいではなく、生き物として自然な状態であり、親だけでなく社会もサポートしなければなりません。

今はそれら全部が親の責任とみなされているので、それができる能力のある人、またはその自信を持てる人しか子育てに参加しない(できない)状態となっています。
それでは多くの人が結婚や子育てに尻込みするのは当たり前です。


子育ての常識をアップデートする


結局今の子育てをめぐる状況は、それぞれの人のやるべきことが不明確なまま負担が親にすべて集中していることが問題なのではないでしょうか。

サッカーで言えば、守備陣の決め事が何もないまま打たれ続けるシュートをゴールキーパーがすべて止めているようなもので、そんな割に合わない役回りはごめんだと、ゴールキーパーのなり手がどんどん少なくなっています。

親に完璧さだけを求めるような社会の過剰な期待が親を押しつぶしてしまう前に、例えば下記のような世間の合意を目指すのはいかがでしょうか。


・子供の育児をする親は子を常に助ける存在であるが、育つのは子供自身の力であり、成人以降は個人としての責任は育った子供本人が負う

・子供が未成熟なのは人間なら誰でも通る成長過程でしかなく、もちろん親の責任ではない

・育児は親以外にも代わりがいるし、お金で代行者と契約することもできる

・親は国や自身が所属する共同体に、育成の助けを常に求めることができ、国や共同体はそれに可能な範囲で応える義務がある


おそらくこういった考えに対して間違いなく「親の甘えだ」「無責任すぎる」という声が上がるでしょうが、その考え方こそが親を委縮させ、子供を欲しいと思っている若い人に「そんな大変ならやっぱり止めておこう」と感じさせてしまっています。

正直私も子供がいない時はそんな風に思っていました。

昭和の昔は家族が多かったので家庭内のみで子供を育てることができましたが、その当時の「子育ては家でやるべき」という常識は、世帯人数が大きく減った現代ではもう通用しません。

なのでなるべく早く、かつての大家族の代わりに社会がその役割を果たすべき、という方向へ世間の常識をアップデートしたほうがいいと思います。



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