陰と陽のアイドル 京子と陽子
日向坂46の新曲「君はハニーデュー」が好調な滑り出しを迎え、MV公開前にもかかわらず配信系サービスで上位を獲得しつつあります。
これはビジュアルが非常に重要なアイドルの楽曲としては異例で、今回すでに少なくともオタクたちの支持を得ることには成功しているようです。
そしてこの新曲のセンターを務めるのが、まだ高校生の正源司陽子。
最近の女性アイドルは年齢が上がり、20代後半でも活躍する人がいますが、やはり若さというのは非常に大きな武器で、子供から中高生という本来のアイドル支持層が親しみやすい年代のタレントはやはり不可欠です。
そしてその正源司は、まだデビューから1年程度にもかかわらず坂道系グループの中で相当な人気を得ており、日向坂の人気メンバー小坂菜緒らに匹敵する人気と売り上げをすでに達成しているようです。
そのMVが公開されました。
やはり人気というのは生まれ持った才能が大きく影響するもので、過去の人気アイドルも多くの場合はデビュー当初から人気がありました。
もちろんそういった人がすべて大成するわけではありませんが、少なくともデビューして1年程度で芽が出ないとその後はもう厳しいことが多く、マルチタレントや俳優等、別の方向を模索する必要があります。
その意味でも正源司陽子はその第一段階はクリアしていると思います。
齊藤京子のアイドル卒業
そして日向坂でもう一つのトピックと言えば、長年グループを引っ張ってきた齊藤京子のアイドル卒業です。
私はキョコロヒーで齊藤京子を知りましたが、その時すでに彼女はグループの主要メンバーとして活躍しており、調べると、ある意味で彼女は「アイドル界の超エリート」と言えるだけの十分な実績があります。
・グループのセンター経験 センターか否かで今後の扱いが大きく変わる
・写真集売上10万部以上 普通は1万部売れば大ヒットらしい
・テレビ地上波レギュラー 自身の名前を冠した番組を持てるのはごく少数
・テレビ連ドラ主演 主役を張れる存在感と責任を果たす力が必要
キョコロヒーやメディアで見せる面白い振る舞いとは異なり、8年間で今のアイドルとしてやれることはやってきたという努力の人です。
ちなみにこのような実績がなくても才能や人気があれば、例えばサッカーとクイズなどで活躍する影山優佳のように卒業後も十分にやっていけますが、多くの人はそうではなく、良くてひな壇のバラエティタレントや脇役の俳優、あとは結婚してママタレになるのが精いっぱいでしょう。
彼女はグループ外での活躍が多く強いイメージを前面に出しているためか、典型的なアイドルオタクからの支持はかなり減っていると思われます。
庇護したくなる女性じゃないとオタクたちは目を向けないようですね。
ただもちろん齊藤京子に今後何らかの活躍が見込めるだけの実力と人気があるのは間違いありません。
楽曲における陰と陽の変遷
私は齊藤京子がセンターとなった「月と星が踊るMidnight」という曲を聴き、その後一通り日向坂の楽曲を聴いてみました。
そこで気づいたのですが、おそらく意図的にグループの印象が徐々に移り変わっていくように楽曲が演出されていて、デビュー当初の新しさ・明るさ・軽さから、徐々に自我や自意識の目覚めを曲の中に取り入れ、齊藤京子の「月と星が~」では初めて恋愛がテーマではなく、若い人の生き方を問うような曲となりました。
① 明るい女性アイドルらしい曲
「キュン」「ドレミソラシド」「アザトカワイイ」「君しか勝たん」
笑顔、明るくビビッドな色調、青空、陽の当たる風景のMV
↓
② 自我や自立的な意識を歌った曲
「ソンナコトナイヨ」「ってか」「月と星が踊るMidnight」
真剣な表情、夕方から夜の風景、逆光や逆風といった演出のMV
↓
③ 次の新しい世界を予見させる曲
「One Choice」「Am I ready?」「君は0から1になれ」
夜明けや朝、変化や決意を表す歌詞、メッセージ性の強い演出のMV
そして今回の「君はハニーデュー」は、懐かしい平成アイドル曲を思い出させつつ、初期の明るさと楽しさを再び前面に出し、歌詞もあまり意味はないけれど何か面白い感じで、そこに正源司陽子という明らかに未来のあるタレントを据えた、日向坂が5年間で一巡して再度ヒットを目指す積極性が非常に感じられる良曲です。
演出されたストーリーを楽しむ
このように坂道系グループは数年間に渡るストーリーを演出されているように見え、過去の泡沫アイドルとは異なり10年単位で活躍できるよう設計されたチームと言えるかもしれません。
乃木坂46も当初は宝塚のような演劇的な要素を取り入れてスタートしたということで、それが差別化要因として機能しており、その妹分の日向坂46もおそらく事前にかなり周到な演出プランがあり、着々とそれを実行しているんじゃないかと感じます。
実際どうかは分かりませんが…
そのストーリーの中で、デビューから人気を支えアイドルらしからぬ個性を発揮してきた努力家齊藤京子の卒業と、若くて育ちがよく、いきなりグループトップの人気を得てしまった正源司陽子という好対照の二人を同じタイミングで配置した運営の采配を楽しむのも面白いと思います。
陰のある大人の齊藤と天真爛漫な若い正源司といった好対照な存在によって多くのアイドルグループとの違いを見せられれば、日本のアイドルへの逆風がとても強くなっている現在でも、日向坂は例えばももクロのように独自の存在として長く活躍し続けられるかもしれません。
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