BCPのWhatとWhy ?
はじめに
こんにちは。BCP策定アドバイザーの昆です。
え?BCPって何のこと?という方もいるでしょう。簡単にご説明します。
BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)は、火災や地震、気候変動、パンデミック、サイバー攻撃など、事業活動を損なうさまざまな危機的事態から従業員やお客様を守り、経営の存続に必要不可欠な業務活動を続けるための方策や手順を取り決めた計画のことです。
2001年9月11日、米国同時多発テロによる攻撃で2棟の世界貿易センタービルが崩壊しました。ところがその数時間後、同センタービルにテナントとして入っていたある証券大手がマンハッタン島の対岸に設けていた代替拠点に社員を退避させ、業務を再開したといいます。この神業的復旧を果たすために発動された計画が、BCPだったのです。
「一体どんな計画を作ればこんな神業的なことができるのだ!?」
私はこの強靭な復旧戦略に強く影響され、2003年からBCPの研究を続けています。
BCPが2005年に日本に紹介されてから15年以上が経ちました。そしてその間、東日本大震災や熊本地震、御嶽山の噴火、西日本豪雨災害、新型コロナウイルスの蔓延など、さまざまなインシデントが日本を襲いました。
しかし、そうした危機の増大に比例してBCPが目の覚めるような勢いで企業社会に普及しているかと言えば、残念ながらノーと言わざるを得ません。理由はいろいろあるようですが、ここでは基本に立ち戻って「BCPの必要性」について考えてみたいと思います。
防災とBCPとの関係
私はしばしば中小企業の社長さんから、「当社には防災計画があるからBCPはいらない」というご意見をいただくことがあります。多忙な日々を送る社長さんとしては、防災マニュアル以上のものを持つ理由も必要性も感じないというのはごもっともなことではありますが、大きく勘違いされていることも確かなんですね。防災計画でカバーできるのは防災対策と災害発生直後の初動対応までであり、事業停止後のことまでは考慮されていません(下図参照)。
仮にあなたの会社の復旧に2ヶ月かかるとしましょう。この間、ずっと休業したまま復旧活動だけに専念していられるでしょうか。顧客や取引先との関係が途絶えてしまい、資金繰りの悪化や従業員の解雇といった新たな問題も発生します。防災はもとより、主に事業停止以降の経営悪化リスクを回避することにウェイトを置いた計画がBCPなのです。
BCPを持つことの2つの利点
BCPを策定するメリットについてはどうでしょうか。これについては2つの側面から指摘することができます。一つは平時における経営上のメリット、すなわち顧客や取引先からの「災害への備えができている企業」「安心して取引できる企業」としての評価です。例えばサプライチェーンや金融機関などでは、参入や取引の条件として相手企業がBCPを策定しているか否かを考慮するケースが、徐々にではあるが増えています。
もうひとつは実際に災害が発生したときのフットワークの良さです。BCPに規定されているのは何が起ころうともこれだけはやり遂げなくてはならないという意思表示であり、そのための必須のアクションプランを取り決めたものです。これによって危機に対してまったく無防備な企業よりはずっと合理的な危機対応が可能になるわけです。迅速に対処することで従業員や訪問者の命を守るだけでなく、顧客や取引先に対する影響も最小限にとどめることができる。信頼とブランドの維持と言ってもよいでしょう。
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