昆 正和(BCP・気候リスク管理アドバイザー, 文筆家)
気候変動や地震、サイバー攻撃など、年々多様化、激甚化する脅威に、貴社のBCPでどこまで対処できますか? 特定のリスク想定に縛られないマルチハザード対応のBCPで、貴社の危機対応力をアップグレードしましょう! このマガジンでは、マルチハザードBCPの意義・目的、緊急対応マニュアルとの関係、重要業や事業継続戦略の意味などについて、ChatGPTを援用しながら分かりやすく解説しています。
気候変動のいまを正しく見つめ、正しく批判し、正しく適応していくための情報コーナー。随時最新のテーマで追加更新していきます。
危機発生時、命を守り、二次被害の発生を防ぐべく最初に行動を開始するための方針・手順が「緊急対応マニュアル」(英語ではERP:Emergency Response Planと呼ばれています)です。ChatGPTにたずねながら、このマニュアルの意義・目的、BCPとの関係、構成、扱うリスクの種類・書き方の基本を学びましょう。
事業中断という危機的事態に直面した時に、何よりも考慮しなくてはならないのが「プライオリティ」だ。どのエリアをいつまでに復旧させるか? インシデントが自社の重要なビジネスプロセスに及ぼす影響を特定し、事業継続目標にあらかじめ明確なタイムフレームを割り当てるためのアプローチがビジネスインパクト分析なのである。
机上演習(Tabletop Exercise:TTX)は、通常のミーティング形式(対面式、zoom参加など)で行える最も簡便かつ効果的な演習方法です。リスクやインシデントの種類が多ければそれだけ多種多様な演習シナリオも作れるので、マルチハザードBCPフレンドリーな演習形態と言えるでしょう。
このたび、日刊工業新聞社発行「工場管理12月号」に、「特集:人新世のBCP対策~地球規模での危機管理に挑む~」と題する全20ページの記事を寄稿させていただきました。 企業を取り巻く脅威は年々その規模や激しさを増しています。自然災害、感染症の蔓延、サイバー攻撃、地政学的リスク、SNS の炎上によるブランドの失墜なども現実的な視野に入ってきました。どれも日々の企業経営に深刻な影響を与え得るリスクですが、なかでも、工場経営の持続可能性を脅かす最大のリスクは「大地震」と「気候変動」
世界の紛争と気候変動 気候変動対策の中心課題は「いかにCO2を削減するか」であり、その矛先として火力発電所やガソリン自動車がターゲットとなっているわけだが、なぜか国際的な排出量削減目標から除外されている最も大きなCO2排出要因がある。それが「紛争(戦争)」だ。 戦車や物資輸送車、戦闘機、武器などから排出されるCO2量、標的を攻撃して爆発炎上したときに排出されるCO2量、そして車による避難民の移動や破壊された街のインフラの復旧においても、はかりしれないほどの膨大な量の二
衆議院選に見る「気候危機意識」の欠如 予想通りと言うべきか、今回の衆議院選でも、メインの自民、公明、そして立憲にしても、気候変動対策については主要な政策目標に掲げなかった。気候変動というリスクが、どれほど社会や経済、そして私たちの暮らしや健康を脅かすことになるのか、どの政治家もまったく盲目であり、想像力を欠いているとしか思えない。 先進諸国の中で、気候問題を争点や政策目標として掲げていないのは日本ぐらいのものだ。1980年代に世界のトップに君臨した日本はその後、どんど
気候・環境意識の世代間格差 今回は、気候変動や環境問題に関する人々の意識について考える。ここで参考にするのはチューリッヒ保険会社が2022年に実施した『世代間における気候変動に関する意識調査』で、Z世代(18歳~25歳)、ミレニアル世代(26歳~35歳)、Y世代(36歳~45歳)の3世代の特徴を比較している。 まず、気候問題への関心度だが、最も関心が高いのは「Z世代」で63.2%、「ミレニアル世代」より8ポイント高だ。関心を持ったきっかけは、3世代とも「生活の中で感じ
都会の「緑」の減少が止まらない 明治神宮外苑の再開発で、多くの樹木が伐採される計画が持ち上がったことは記憶に新しい。地域住民はもとより、アーティストや芸能人、超党派の国会議員や東京都議会議員の議員連盟なども合同で計画中止を求めるなど、多くの人々を巻き込む事態となった。 また、横浜市でも全面返還された緑豊かな米軍通信基地跡地を開発し、東京ディズニーランドに匹敵する規模で、次世代型テーマパークを核とした複合施設を建設する予定だという。 「都市部の遊休地を開発し、打ち出の
それは自然破壊の何ものでもない!? 再生可能エネルギーには太陽光発電や風力発電があり、そして近年は製造プロセスに再エネを利用した水素エネルギーなども脚光を浴びている。今回は前2者を中心に現在の動向を探ってみるが、残念ながら手放しで世の中が歓迎しているわけではなさそうだ。まずは再エネに対するネガティブな意見から見ていこう。 例えば「太陽光パネルは自然を破壊する」という意見がある。今や全国どの町や村、農地、工場でも太陽光パネルを見かける。しかし屋上や耕作放棄地などを有効活
[ 複合災害とマルチハザードBCP(#1)へ ] マルチハザードBCPにおいては、目の前で起こっているインシデントが一つなのか、複数なのかについては、とくに関知しない。単独のインシデントであろうと複合災害であろうと、採るべき手順は同じだからである。 ある時、一つまたは複数のインシデントが起こったと仮定しよう。それが「緊急対応マニュアル」で想定しているものなら、事前対策と緊急対応手順が奏功し、ある程度まで被害を低減できるだろう。 一方、たとえ発生したインシデントが緊急対応
サイエンス・ポータルというサイトに、地震や気候変動などの災害が重なる「複合災害」への備えが必要との記事が出ていた。防災関連の63の学会、協会が参加する「防災学術連携体」が「2024年夏(秋)の気象災害・要因と対策」と題したオンラインの「速報会」を実施した内容の記事である。 こうした認識や見解がいま出てきたことは、複数の災害が重なるという極めて偶発的な事象の起こる確率が、いよいよ高まって現実的な脅威になってきたことを意味する。 因みに筆者は、コロナ禍の最中、ある危機管理の勉
世界のEVの普及率は? 電気自動車(EV)は、脱炭素社会に向かうための最も象徴的な切り札の一つだ。けれども、高速道路上の車が渋滞し、遠く霞んで見えなくなるくらいに延々と数珠繋ぎになっている光景を目の当たりにしたりすると、膨大な数の車がEVに置き換わるまでに一体どれほどの時間を費やすことになるのだろうかと嘆息せざるを得ない。 国際エネルギー機関(IEA)は昨年10月、EVへのシフトが進むことで、世界の石油使用量が2030年までに日量約1億200万バレルでピークを迎える
地球が燃えている! 前回は気温上昇に伴う食料・水不足について述べたが、今回は気温上昇が引き起こすもう一つの脅威、「山火事」の現状について紹介しよう。最近の大規模な山火事で記憶に新しいのは昨年のハワイ・マウイ島の山火事だろう。この大火災では、古都ラハイナを中心部に壊滅的な被害をもたらし、100人を超える多くの死傷者を出した。 一方、ギリシャではEU史上最大(ニューヨーク市の面積より大きい8万1千ヘクタール)と言われる山火事が猛威を奮い、カナダでは今年の前半だけで950万
このたび、月刊誌『電気計算』(電気書院発行)に、「未来のキャンバス~地球と温暖化のいま、これから」というテーマで、連載を開始しました。 社会人のよしお君と同僚のすみれさん、そして、気候変動を研究している謎の老人、キコー博士の3人による対話形式の物語です。 本連載の目的は、リスク対策.COMに連載中の「気候とビジネスのリスク・シナリオ 第一部」と同様、現在私たちが、気候危機のどの地点にいるのかを社会や経済の現状から理解していただくことです。 この連載では、「気候とビジネス
食料難の予兆 日本に住む私たちにとってほとんど無縁だった「食料難」や「食料危機」という言葉は、いよいよ現実味を帯びてきたかもしれない。ウクライナ侵攻による小麦価格の高騰は食の安全保障を脅かすと言われたものの、実際に影響を与えたのは主に中東やアフリカ諸国だった。しかしその一方で、日本の小麦の主な調達先であるアメリカやカナダ、オーストラリアでは、高温や干ばつの影響で不作となり、減産を余儀なくされている。いわば気候変動によって食の安全保障が脅かされているのだ。 こうした影響
日本食糧新聞社発行の『月刊食品工場長』にて、BCPの連載を始めました。キャラクターを設定し、対話形式でBCPの策定を進めていくストーリーです。 主な登場人物は、とある食品工場の総務課長でBCP策定の責任者であるヒロトと、彼の部下でBCP策定の実務を担当する木村さおりさんです。 このBCP策定ストーリーには、次の2つの特徴があります。 一つは、「マルチハザードBCP」の啓発・啓蒙を目的としていること。今や筆者が書くBCPの原稿は、たとえタイトルや見出しにその名前がなくても
月刊総務オンラインの「総務の引き出し」というコーナー(防災カテゴリ)にて新規連載を開始しました。 第1回のテーマは、「緊急チェック! 南海トラフ地震臨時情報終了で気が緩んでいる今、再点検すべき大地震対策の盲点」です。 大規模地震対策は、最もハードルの高い対策の一つです。かといって、全方位で隅から隅まで必要なモノや行動手順を網羅するなどというのは、まず不可能。命を守り、情報を共有することにフォーカスして対策を講じるしかありません。 この第1回では、難解トラフ大地震を見据え
大雨・洪水は増えている 気象庁によると、大雨の年間発生回数は有意に増加しており、より強度の強い雨ほど増加率が大きくなっているという。1時間降水量80mm以上、3時間降水量150mm以上、日降水量300mm以上など強度の強い雨は、1980年頃と比較しておおむね2倍程度に頻度が増加しているのだ。 これは私たち自身が実感していることでもある。夏場にはゲリラ豪雨や線状降水帯、竜巻、ひょうなどが毎日のようにどこかで発生し、街中があっという間に冠水している様子などをニュースで見て
暑さ寒さも気候次第 ここ数年、夏になると猛暑、猛暑と騒いでいるものの、本当に猛暑は昔に比べて増えているのだろうか。今回はこの素朴な疑問への答えを探ることから始めよう。猛暑日とは気象用語の定義で「日中の最高気温が35℃以上の日のこと。1910年~1939年の猛暑日の平均日数は0.8日、1993年~2022年は約2.7日なので約3.5倍だ。この数字だけを見ても、明らかに増えていることが分かる。 これに加え、各都市で発生するヒートアイランド現象が暑さをパワーアップする。都市