「いつ結婚するの?」両親の夢じゃなく、自分の幸せを優先した私
「いつ結婚するの?」
「早く孫がみたい」
いつだったかなぁ。
何回か両親に言われたことがあった。
まぁ、両親と言っても母だけだが。
父は基本無口で話さないタイプだから実際言われた記憶がない。(けど、内心すごく気になるんだろうな、とは私自身なんとなく察してはいた)
あれやこれやと1人で妄想してウキウキしていた母なのだが、当時の私は結婚どころか恋人すらいなかった。まずは恋人探しからなのに、そこを全部ぶっ飛ばして孫の世話をしている自分を浮かべてはニヤニヤしていた。
「夢のまた夢なんだよね…それ……」
楽しそうにしている母には申し訳ないが、恋人をつくるのも結婚するのも積極的ではなかった。
そりゃあ、いつか出来たらいいなとは思っていたし、それは今も変わらない。でも、マッチングアプリに登録してまで恋人をつくったり結婚相談所にまで行って結婚したいとは思わない。
うまい具合にそれらを駆使してかわいい子どもまでできた友達はほんとに行動力あるなと思った。
私もそんな友達のように両親に孫を抱かせてあげたい。その夢を叶えてあげたいと思っている。離れて暮らしている両親と久々に会ったとき、頭に増えている白髪だったり、目元や首がしわくちゃになっていたり、覇気がなくなっていく姿をみたらなおさら叶えてあげたいと思う気持ちが強くなった。
でも、同時に怖くもなった。
嫌でも両親と過ごせる時間にリミットがあるって。20代の頃に感じていた「自分の親はまだまだ若い」という錯覚は通用しなくなっていた。白髪や皮と骨だけの手がそれを教えてくれた。
じゃあ、急いで恋人をみつけて結婚したらいいんだろうけど、それはしたくない。やるつもりはない。私は今の私ですら幸せにできていないからだ。
もっと言うなら、過去の自分すらまだ幸せにできていないから。
タンスの奥や机の下に隠れて両親のケンカが終わるのを「早く終われ、早く終われ」「誰か助けて」と自分の内側でずっと叫んでいたときや、食べるものがなくお味噌汁にお餅のようなよくわからない団子が入っているものばかり食べていたり。
絶対に戻りたくない過去にいる小さい頃の私を、今の私はまだ完全に幸せにできていない。だから、1番は今生きてて楽しいと感じることで過去の自分を癒やしてあげるのが先だと思っている。その次に両親の夢を叶えられたらなって。
結婚する予定がないと気づいたのか、さすがに30過ぎてからは言わなくなったが、母の楽しそうな顔を思い出すたびに心臓がギュッて痛くなる。育児に加え、仕事や地域、学校の行事などたくさんのことをこなしていつも疲弊している姿をずっと見ていたから。
親孝行できたらなと思っているけど、孫を見せて抱かせることが親孝行の全てじゃないと思う。それは1つにすぎないのかなって。多分1番嬉しいのは、毎日くだらないことでバカみたいに笑ったり、たくさん食べて満足している顔だったり、元気に過ごしていたらそれもそれで親から見たら嬉しいのかなって、自分の人生や両親のことを考えるようになってそう思うようになった。
20代の頃はそんなこと思わなかったのに、思考ってやっぱりレベルアップするんだね。