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食いしん坊たちの国—台湾人の食に対する情熱

美味しいものはよく盗まれる

台湾の治安は良いと言われています。携帯やパソコンを公共の場に置いても、盗まれることはあまりありません。しかし、実はあるものがよく盗まれています。それは、美味しそうな食べ物や飲み物です。

台湾人はスクーターで街を買い物して回ることが多く、鍵をつけたままスクーターを停めてお店に入る人も珍しくありません。戻ってきたとき、スクーターやパソコンなどの高価なものはそのままでも、買ったばかりのお弁当やタピオカミルクティーがなくなっている「事件」が結構あります。そして、被害者が周りの人にそのことを話すと、台湾人のよくある反応は「えぇ!?それ、どこで買ったの?」。盗まれたものが美味しいに違いないと考え、つい自分も食べたくなるのです。


鶏たちは最大の被害者かも

台湾ではお祝い、謝罪、感謝の気持ちを、公に食べ物で伝える文化があります。例えば、支持する政治家が当選したり、応援するチームが優勝したりしたとき、鶏排(ジーパイ,台湾式のフライドチキン)のお店に連絡して、500枚や1000枚の鶏排を無料で配ることがあります。また、失言した政治家やインフルエンサーが鶏排を配り、自分の過ちを公に認めるケースもあります。このように鶏排が頻繁に配られるため、ネット上では「鶏たちは今回も最大の被害者だ」という冗談が飛び交います。

Photo credit: 中央社 https://www.cna.com.tw/news/aloc/202411250306.aspx

さらに、大規模な災害や事故が発生した際、病院に食べ物を届ける人が大勢現れます。10年前、台湾で起きた八仙水上楽園爆発事故の際、友人が勤務していた大学病院には大量の食べ物が届き、鶏排や弁当やハンバーガーなど専用の部屋に積み上げられたそうです。友人は忙しすぎて休憩する時間もなく、治療の合間にその部屋でMOSバーガーを5分でかき込んでいたと言っていました。その描写が鮮明すぎて、今でもよく覚えています。

ちなみに、アメリカの友人に聞いてみたところ、アメリカの病院でも時々ドーナツなどのスイーツを差し入れでもらうことがあるそうです。ただし、温かい食べ物をもらうことはあまりないとのことでした。それは、アメリカでは温かい食べ物の値段が高いためかもしれません。

新聞例:
https://ynews.page.link/tNMCD
https://news.ltn.com.tw/news/politics/breakingnews/2631267
https://news.ltn.com.tw/news/life/breakingnews/4464874
https://www.ettoday.net/news/20210116/1900050.htm


食べ物で人間関係を築く

台湾人は食事をとても大切にします。挨拶の最初はほぼ食べ物の話題から始まります。「吃過了嗎?」「肚子會餓嗎?」など、日本語で言う「食べましたか?」や「お腹すきましたか?」に相当します。さらに、台湾語では「食飽未(ジアバーボェイ)」という言葉もあり、同じような意味です。ビジネスシーンでもカジュアルな場でも、食べ物の話題は欠かせません。

初対面の相手には、故郷や最寄駅を尋ね、その後はその地域のグルメや美味しいお店の情報交換をするのが定番です。そのため、日本では初対面の人に故郷や最寄駅を聞くのは失礼だと知ったとき、とても驚きました。

台湾の会社で働いていたとき、社内会議ではよくタピオカを飲みながら話し合いをしました。クライアントの会社での会議でも、周りの美味しいお店について尋ねることがありました。製薬会社が主催する医学会議では、地元の名店のタピオカやB級グルメを用意し、医師たちに提供することもあります。会議の冒頭で司会者がそのお店を紹介し、場の雰囲気を和らげて意見交換を促進します。

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