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短編小説読書メモ7~8本目ーーー近藤史恵『ここにいるぼくら』、辻村深月『ご縁の心得 ツナグ』

アンソロジー『料理をつくる人』を読了したので、新しいアンソロジーへ。
今回のテーマは舞台。舞台と一口に言っても、ミュージカル、バレエ、2.5次元など多種多様。
トップバッターを飾るのは、2.5次元を題材にした近藤史恵さんの『ここにいるぼくら』。

漫画やゲームが原作の物語を舞台演劇として上演する2.5次元というものを、私は見たことがない。
『キングダム』や『ゴールデンカムイ』の実写映画は見たことがあるのだが。
そもそも、生身の人間によって目の前の舞台で物語が演じられる「舞台劇」というものにあまり縁がない。
中学高校で見たミュージカル部の公演。
留学中、友人のお母さんに連れていってもらったヴェローナの野外オペラ。
ロンドンで見た『オペラ座の怪人』。
そして、最近見たのは2、3年前、ミュージカル『コーラスライン』。

あまり行かない理由は一つ。
高いから。
同じ代金で映画を複数本見られる、と言ったら確実に怒られるだろう。
でも、好きな人は頑張って捻出するのだろう。私がスタバ通いを我慢して、その分を映画代に回そうとするように。

小説を読みながら、2.5次元の舞台が好きな人の「推し活」にかける熱量、というものを少し考えた。
主人公はなかなか売れない舞台俳優。突然、シリーズ物の2.5次元舞台のオファーが来て、未知の世界に飛び込むこととなる。
そして最初にぶつかったのが、前作まで同じ役を演じていた俳優の降板に伴う「キャス変」に対するファンたちからの反応。
それに戸惑い、他にも様々な問題に対応しつつ、真っ直ぐに進んでいく様が良い。
「おれはここにいる」
この一言に全てが集約されている。
次の作品、そして同じ作者さんの作品を他にも読んでみたくなった。

続いて、8本目は『小説新潮2025年1月号』から辻村深月さんの『ご縁の心得 ツナグ』。
『ツナグ』シリーズが出ているのは知っていたが、読むのはこれが初めて。
中心になるのは妻を癌で亡くした男性。
遺品のスケジュール帳の一番最後のページに書かれていた「ツナグ」という名前と電話番号を見て、死んだ人と一度だけ会えるサービスがあることを知る。
早速、問い合わせてみるも、すでに妻と会っている人がいた。
一体、その相手とは何者なのか?自分の知らない妻の顔があったと言うのか。
疑心暗鬼に陥る主人公がたどり着いた答えは… … 新たな生き甲斐につながる縁だった。
動画のサブスクリプションサービスや、SNSなどが重要パーツになっているのが、この令和という時代ならではだろう。

次はどんな作品に出会い、書けるか。
だが、その前に、ゴッホの原稿を進めておきたい。

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