20枚シナリオ課題その1 『隣のハンカチ』(お題:ハンカチ)
シナリオ講座に提出した、20枚シナリオの第一回。
この「第一回」を出せるようになるまでが本当に長かった!(いつ、どんなジャンルにおいても、アイスブレイクは難しい)
noteにもためしに掲載。
(……改行など、ところどころ読みにくくなっている箇所はご容赦ください)
『隣のハンカチ』(お題:ハンカチ)
人 物
向井日奈(16)高校生
向井敦子(45)日奈の母
山下葵(27)日奈の従姉
医者
カフェ店員
テコンドー教室生徒たち
○向井家・日奈の部屋(夜)
床の上に乱暴に段ボール箱が置かれる。
向井日奈(16)、仏頂面でテコンドー用の道着や帯、防具を箱の 中に入れていく。
医師の声「(先行して)レントゲンのここを見ていただくとわかりますが」
〇病院・診察室(回想)
医師と日奈が向かい合って座っている。
デスクに置かれたパソコンには、日奈
の骨盤周囲を写したレントゲン写真が
表示されている。
医師、マウスを操作して、写真を拡大
しながら、
医師「この白くなっている箇所、左の内股の
筋肉が炎症を起こしています」
日奈、眉を顰める。
医師「湿布と、炎症を治す薬を二週間分お出ししますので、まずはそれで様 子を見ましょう」
日奈「……はい」
医師「その間は、ストレッチも控えてくださ
い」
〇大通り(夕・回想)
大通りを車が走行していく。
運転しているのは、向井敦子(45)。
真後ろの席に日奈。日奈は、ぼんやりと窓の外を見ている。
日奈「(ぽつりと)……昇級試験、再来週だったのに」
敦子「しょうがないでしょう?今はちゃんと薬を飲んで、治すことを優先し なさい」
日奈「(ため息)わかってる」
敦子「それとアンタさ。前から言おうと思ってたんだけど」
日奈「何?」
敦子「いい機会だし、もうやめたら?」
日奈「(目を見開いて)え……!?」
敦子「来年はもう受験生でしょ?ちゃんと
将来のこと、考えなさいよ」
日奈、唇を噛む。
敦子「小林さんとこの秋ちゃんみたいに、スポーツ推薦なり何なり目指す っていうならともかくさ、アンタはそうじゃないでしょ?」
日奈、三白眼で背もたれを睨みつける。
膝の上では握り拳が小刻みに震えている。
〇同・日奈の部屋(夜・現在)
床に座り込んでいる日奈。その手には、一年前の日付の級位認定証が 入ったクリアホルダーがある。
日奈の声「(先行して)やるからには」
〇区民センター・多目的ホール
数人の生徒を前に、認定証を手にした
日奈が、緊張気味に話している。
日奈「必ず、黄帯をとるところまで行く、それが私の、目標でした!達成で きてうれしいです。これからも、次を目指していきたいと、思います」
〇向井家・日奈の部屋(夜・現在)
そっと段ボールの上に認定証を入れる日奈。
しばし見つめた後、蓋を閉め、ガムテープで固定していく。
日奈「あと少しだったのに……」
目に涙が溢れ、それをごまかすように箱の上に突っ伏す。
日奈「……ちくしょう」
〇駅・ホーム(日替わり・朝)
電光掲示板には、「8時」と表示。
ホームにパラパラと人の姿。
ベンチに、山下葵(27)が腰かけ、スマホで電話をかけている。
葵「……おはようございます。山下です」
膝の上にはトートバッグ。バンクルには大判の青いハンカチが結び付 けられている。
葵「あの、実は昨日から頭が痛くて」
話しながら、ハンカチを指でたぐり、握りしめる。
葵「……気になるので、午前中、病院に行ってきたいのですが……はい、何かありましたら、また連絡します。ご迷惑をおかけしてすみません。……失礼します」
電話を切った葵、バッグの上に突っ伏して、長々と息をつく。
葵「(目を閉じて)……嘘は、言っていない」
ハンカチを再び手で弄び始める。ほつれた端から糸が出ているのに気 づいて、指に巻き付けて切ろうとするが、うまくいかない。
葵「……でも(ため息)」
握りこぶしを、額に押し付ける。
ホームに急行電車が走り込んできて、通過していく。
〇カフェ・店内・2階(夕)
イートイン式のカフェ。
席のほとんどが客で埋まっている。
奥の二人掛けのテーブルで、日奈がバッグからノートやペンケースな ど、勉強道具を取り出し、広げている。
ノートと一緒にキャラクター柄のタオルハンカチも出てしまい、床に落ちるが、日奈は気づかない。
〇同・1階・カウンター~入口周辺
混み合っている店内。
葵が入ってきて、床に表示された順番待ちのマークの上に立つ。
店員が近づいてきて、
店員「お席の確保はお済みでしょうか?」
葵「え、あ……」
葵、フロア全体を見渡すが、どの席も埋まっている。
喉のあたりを指でつまみながら、店員を見返すと、
日奈の声「アオちゃん?」
葵が振り向くと、財布を持った日奈が立っている。
〇同・2階・日奈の席
日奈、手早くテーブルの上を片付けていく。
トレイを持って、その様子を見ていた葵、「あれ?」と床にハンカチが落ちているのに気づく。
受け取ろうとした日奈、葵が肩にかけているバッグのハンカチに目を 止める。
日奈「(葵の手の中のハンカチと見比べて)……」
葵「(不思議そうに)?」
日奈、、ハンカチを乱暴に奪い取ると、背を向けて、バッグの中に押し込む。
× × ×
席につき、それぞれドリンクを飲んでいる二人。
日奈「……いい齢して、ガキっぽいって思ったでしょ」
葵「(苦笑して)叔母さんに、そう言われた?」
日奈「(舌打ち)……」
葵「でもさ、ヒナちゃん。その叔母さんと、一度は交渉して、譲歩引き出せたんでしょう?その、テコンドーのことで」
葵、参考書を手に取ってめくる。
頁の余白や行間には、細かく色々と書き込まれている。
葵「月謝出してもらう代わりに、英語で90点以上キープし続けるなんて、なかなか」
日奈「(遮って)それも、この前の怪我で全ておじゃんになりました」
とテーブルを叩き、そのまま突っ伏す。
日奈「……アオちゃんはいいよね」
葵「え?」
日奈「フランス行って、愛しのゴッホについて勉強するってのは、ずっと昔から決めてたんでしょ?」
葵「(苦笑して)まあ……そうだね」
日奈「うちのクソババアが、何かと引き合いに出すんだよね。目標立てて、それに向かって努力して、ちゃーんと実現した。私みたいな『考えなし』とは大違いだって」
葵「(困ったように笑って)……でもさ、結局、研究の道には」
日奈「だとしても、今は就職して、家にお金も入れてるんでしょ?」
葵「(笑みを消して)……」
日奈「図書館なんて、本が好きなら、まさに天職じゃん?」
葵「……お手洗い、行ってくるね」
〇同・トイレ・洗面所
手を洗っている葵。
葵「夢を叶えた……か」
水を止め、暗い目で鏡を見つめる。
葵「図書館が、私にとっての『天職』……ね。そう、見えるか……」
鏡の中の葵、口元だけで笑う。
〇同・二階席・日奈の席
日奈、頬杖をついて、向かいの椅子に置かれた葵のバッグを見ている。
おもむろに立ち上がって、バッグに近づき、バンクルのハンカチを解 く。
広げると、ゴッホの〈夜のカフェテラス〉がプリントされている。
日奈「(しばし見つめ)……」
日奈、自分のバッグの方をちらりと見る。
ハンカチをそのまま手の中に丸め、自分の席に戻る。
講師からの講評
☆タイトル。『隣の芝生は青い』←他人のものはよく見える。からでしょうか?
☆テコンドーに打ち込み、条件付きとは言え母親の理解を得られそうになった矢先、怪我をした日奈。読書家の葵は、図書館職員として堅実な社会人生活を送りつつ、ゴッホ研究への情熱が燻り、精神的に追いつめられていて……。
いとこ同士、それぞれ悩みを抱えながら、相手を羨む気持ち、分かります(^^♪
☆純粋なだけに、現実に即さない夢を追おう日奈のジレンマ、夢を諦め、現実的な人生を選んだ葵の後悔。それぞれの気持ちを、キャラクター柄のタオルハンカチ、ゴッホの『夜のカフェテラス』←大好き❤のプリントされたハンカチに象徴させたのは、Good������小道具の使い方、うまいです������
☆p1の柱。〇(回想)病院・診察室 と、(回想)を頭に持ってきた方が、早い時
点で回想シーンだとわかって有利だと思います。p3(回想)も同様です。
☆p3のシーン尻(シーンの最後。観客の意識に強く残るところ)。例えば、
医師「~それで様子をみましょう。その間はストレッチも控えて下さい」
日奈「……はい」などと、しては? 特別な理由がない限り、シーン尻は主人公で
終わりたいです。
☆p3のト書:大通りを車が走行していく。柱が 〇大通り です。不要ですね。
☆p5のト書:三白眼で 三白眼=黒目が上に寄り、左右と下部の三方が白目になる
事。 ここは、白い目で見る←冷淡な目つき、憎しみをこめて見る。 などとして
は?
☆p6のト書:一年前の日付 何年何月何日と、具体的に書き、 次の回想(ですね
?)のト書にも同じ日付の認定証を出すと、現在と回想シーンが滑らかにつながり
ます。
☆p7の柱。〇元の日奈の部屋(夜)としてはどうでしょう?
☆p12の柱とト書。
〇同・1階
ト書:カウンター周辺が込み合っている。などとしては? 柱は簡潔に書きましょ
う。
☆p13のト書:喉のあたりを指でつまみながら~これは、葵のどんな感情を表しているのでしょうか?
☆p14のト書:葵「あれ?」。実際に声に出していったのなら、葵のセリフとして書きましょう。
☆p15。同じシーン内の短時間の時間経過を表す×××は、ト書に書きます。
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