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「感動」はアウトプットのエンジン(ゴッホメモ)
南フランスのアルル。
南部ならではの明るい陽光と、そして光の中でより鮮やかに輝く色彩とは、北方からやってきたゴッホに大きな感銘を与えた。
彼は、この陽光と明るい色彩に満ちた世界に、かつてパリで目にし、影響を受けた「浮世絵」に通じるものを見出した。アルルを、浮世絵に描かれた「日本」に近い存在と信じ、ほれ込んだ。
日本人の私たちからしてみれば、「え?」と戸惑わされる話だが、その思い込みのおかげで、アルルはより美しい場所、「理想郷(楽園)」としてゴッホに映っただろう。現地の人にとっては、何気ないありふれたものすら、特別な輝きを持っているように思えたに違いない。
「ここでは日本の作品は必要ない。僕は日本にいると思っているからだ。僕はただ自分に感銘を与える目の前のものを、直接描きさえすればいいのだ」
妹に宛てた手紙のこの行の中に、彼の思いは凝縮されていよう。
「感動」は、人の心を動かし、彩を添えるもの。
アルルという、美しい特別な場所で、彼はアンテナを広げる。
心の震えに意識を向け、絵筆を取る。
「感動」は、彼の心にたっぷりと栄養を与え、「制作」を後押しする力となった。
それが、自分を成長させていっていることも、ゴッホは自覚していただろう。
彼が、この地に他の芸術家たちを呼びたい、そして彼らと共に暮らす生活共同体を作りたい、と夢を思い描くようになったのも自然な流れだったかもしれない。