
短編小説読書メモ45ー46本目~原田マハ『月とパンケーキ』、新津きよみ『雲の上の人』
今回は、原田マハ『独立記念日』から『月とパンケーキ』。そして、新津きよみ『雲の上の人』。
昔はホットケーキとよく言ったもので、大抵おやつに食べるもの、というイメージがあった。が、ブームにのって、専門店ができ、ふわふわのパンケーキやら、サラダやベーコンなどと一緒に食べる「食事」としてのパンケーキやら、メニューのバリエーションも豊富だ。
まあ、作中でも描写がある通り、アメリカでは材料を混ぜて焼くだけで作れるパンケーキは、朝食の定番だ。以前読んだ『パンケーキの歴史物語』では、「パンケーキ」として分類できるものが、古今東西あらゆる場所に存在することが書かれており、その中にはなんと日本のどら焼きまで含まれるから驚きだ。
このパンケーキが重要な小道具となるのが、原田マハ『月とパンケーキ』だ。
高校時代、ホームステイ先のミネソタ州で朝食として食べたパンケーキ。
帰国後、下手な出来ながらも主人公の作るパンケーキを「美味しい」「ご馳走」と言って食べてくれた両親は、その頃はほとんど夫婦としての関係は冷めており、主人公が社会人になるのを待って離婚。その後、それぞれ別の相手とさっさと再婚してしまう。
主人公も、合コンで知り合った男性と、妊娠をきっかけに結婚するが、別に相手に対して特別好意があったわけではなく、流されるままの感が強い。夫は、ドタバタしながらも一緒にパンケーキを作ったり、子供の誕生を楽しみにするなど、「幸せな家庭」を夢見ているようだったが、ある日事故で亡くなる。そして、主人公も子供を死産。
「家族」は終わりを告げた。
これらの出来事から「家族」に対して冷めた思いを持ちながらも、終わってしまった家族の思い出にまつわるパンケーキを一人作り続ける主人公。そんな彼女は、あることをきっかけに、バツイチの上司にパンケーキを持っていくことにする。
続いては、新津きよみ『雲の上の人』。
こちらは蕎麦屋に生まれた姉妹の物語。
実家の蕎麦屋を継ぐ予定の未年生まれの姉。
フライトアテンダントとして国際線に乗る夢を叶えながらも、地上職に飛ばされ、不貞腐れる申年生まれの妹。
二人の本当の「関係」がわかると、なかなか面白い映像が浮かび上がる。
短編ならではの切り口と言えるだろう。