あやしい絵展で気になったこと(メモ)
国立近代美術館で始まった「あやしい絵」展。
ポスターにも取り上げられている上村松園もさることながら、「挿絵」作品に面白いものが多かった。
その一つ、小村雪岱の『お伝地獄』挿絵を見ていて思ったこと。
これは、明治時代に実在した「悪女」高橋お伝を主人公にした小説の挿絵。
(展覧会に出品されていたのは、モノクロだったが、参考までに
引用元;https://600dpi.net/komura-settai-0003101/)
主人公のお伝が彫師に刺青を彫ってもらうシーン。
彫師もお伝の美しさにどぎまぎしている、という設定らしいが、絵を見ていれば「確かに」とも思う。
首から肩、背中にかけての柔らかい、女性らしいライン。
白い肌のなめらかさや肉の柔らかさまでもが想像できる。
直接肌に触れる彫師が動揺するのも無理はあるまい。
それを、たった一本の線で表現している。
そこに面白さ、すごさがあるのではないか。
後で、この絵を思い出した時、連想したのが、こちらの絵。
メアリー・カサット、<沐浴する女性>、1890~91年頃
印象派の一人としても数えられる女性画家、メアリー・カサットが手掛けた版画連作の一枚である。
後ろ向きで、背中のラインがやはり印象的で、一瞬ドキリとさせられる。(が、すっきりして嫌らしい感じはしない)
この絵を見たドガが、「女性にこんな線が引けるなんて許せない」と、(今なら「女性蔑視」で叩かれるだろう)コメントを残したエピソードもあるほど。
盛り上がった背中から腰へ、肩から腕へと流れ落ちるかのような一本の「線」。
しかも、この作品はアクアチントという、修正の利かない技法で制作されており、制作前の彼女の研究の積み重ねがうかがえる。
そして、彼女が版画制作に乗り出したのは、浮世絵にインスパイアされたからだった。
小村雪岱についてはまだよく知らないが、その女性像は、浮世絵師・鈴木春信にもたとえられていた。浮世絵の女性像の遺伝子を継いでいる、と言っても良いのではないか。
http://www.moaart.or.jp/en/?collections=080
そう考えると、彼ら二人にもう一枚、歌麿あたりをくわえて書く手はないだろうか。
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