20枚シナリオ課題③「帽子」
金色の夢
登場人物
三島千鶴(17、21)大学生
北村志乃(15)千鶴の従妹
北村尊(23)詩乃の兄、大学院生
三島真弓(47、51)千鶴の母
千鶴の友人(17)
本文
〇ニューヨーク、ブロードウェイ・大通り(夕)
○同・劇場(内部)・俯瞰
ステージには幕が下り、座席はすでに8割方埋まっている。
後ろの方の席に、北村尊(23)と、北村志乃(15)がやってきて、座る。
〇同・ステージ
全体が明るく照らされ、音楽『ONE』が流れる。
煌びやかなコスチュームに身を包み、金色のハットを手にした、人種も肌の色も様々な十数人の役者たちが、次々と登場し、曲に合わせ、一糸乱れぬ動きで踊り始める。
〇同・観客席
志乃、目を大きく見開き、身体を半分浮かせて、舞台に見入っている。
志乃「(うっとりと)うわあ……」
膝からプログラムが滑り落ちるが、志乃は気づかない。
〇東京、三島家・外観(昼)
晴天の下、蝉の鳴き声が響いている。
志乃の声「(先行して)もう最高でした!」
〇同・千鶴の部屋
志乃と、三島真弓(51)、床に座って話している。脇にはそれぞれ 麦茶のグラス。
三島千鶴(21)は、二人に背を向けて、机の上を片付けている。
床には、本や雑誌を詰め込んだ紙袋や、中身が半分ほど入ったごみ袋 が置かれている。
志乃「実を言うと、あたし、最初はそこまで期待してなかったんですよ。
『コーラスラインって、どんな話か知らなかったし」
真弓「そうなの?」
志乃「でも、兄貴……兄が『いいから見てみろ』って。『口で説明するよりも、その方が手っ取り早い』って」
真弓「尊君らしいわねえ」
志乃「単に、面倒くさがりなんですよ~」
真弓、笑う。
志乃「でも、まあ、今回はわからなくもなかったかなあ」
真弓「そう?」
志乃「うん。やっぱり、ストーリーについての説明を読んでも、『ふーん』で終わっちゃうけど、舞台で、実際に人が演じてるのを見ると、違うなあ、って。『生きてる』って感じで。それが目の前で、同じ空間で起き
てて……(両手を大きく振って)あーもーうまく言えない!」
千鶴は、背を向けたまま作業を続けている。
志乃「特にフィナーレのダンス!もうカッコ良かったー!」
千鶴、作業の手を止める。
志乃「終わった後すぐに、DVD買いましたもん。で、毎日見てるうちに、曲も覚えて」
志乃、立ち上がり、ポーズを決めると、足が段ボール箱に当たる。横
倒しになった箱から、金色のハットが転がり出る。
志乃「わっ!」
真弓「大丈夫?」
志乃「え、はい……あれ?」
志乃、ハットに気づき、手を伸ばす。
振り返った千鶴、ハットを見て凍り付く。
真弓「あら?(千鶴に)ねえ、アンタこれ」
千鶴「(遮って)志乃ちゃん」
志乃が顔を上げると、
千鶴「欲しいならそれ、持って行って良いよ」
志乃、戸惑って、帽子と千鶴とを見比べる。
千鶴は微笑んでいるが、目は笑っていない。
〇横浜、北村家・外観(夜)
尊の声「(先行して)『至急話したいことあり』、って言うから何かと思えば」
〇同・志乃の部屋
志乃、ベッドの上に座り、スマホで話している。
志乃「こうでも言わなきゃ、兄貴、電話出てくれないじゃん?」
〇ニューヨーク、尊のアパート、キッチン(早
朝)
尊、コーヒーをマグカップに注ぎながら、
尊「お前が、前みたく、夜中の3時にかけてこなければな」
志乃の声「もー、その件は謝ったじゃん」
尊「(ため息)俺はお前みたいに暇でも、能天気でもないんだよ」
尊、カップを手に、テーブルにつき、
尊「……それで、千鶴ちゃんについて、何が聞きたいんだ?」
〇東京、三島家、志乃の部屋(夜)
志乃、ハットを手に取る。
〇ニューヨーク、尊のアパート、キッチン(早朝)
尊、コーヒーを一口飲んで、
尊「……今から、四年前の話だ」
〇東京、三島家、千鶴の部屋(夜)
千鶴、段ボール箱の中から、写真立てを取り出す。衣装を着け、楽し
そうに笑う千鶴と友人が写っている。
尊の声「千鶴ちゃん、高校ではダンス部でさ。学園祭での公演で、『コーラスライン』のラインダンスをやる予定だった」
〇ニューヨーク、尊のアパート、キッチン(早朝)
志乃の声「え、すごい!」
尊「(ため息)……部員としては、これが最後の舞台ってこともあって、かなり張り切ってた」
〇(イメージ)(4年前)高校、体育館(夕)
ジャージ姿で、ハットを手に、ダンスの練習をする千鶴(17)。
額には、前髪が汗で張り付いている。
近くでは、友人が足を延ばして座り、タオルで首まわりをぬぐいな がら、千鶴の練習を見ている。
尊の声「……ところが、本番の一週間前」
〇(現在)横浜、北村家、志乃の部屋(夜)
志乃、青ざめて、
志乃「……おたふくかぜ?」
尊の声「ああ。後輩の一人がどこからか菌を貰って来て。他にも何人か罹ったらしい」
〇(イメージ)三島家、千鶴の部屋(4年前)
顔が腫れあがった千鶴、顔を壁に向け、ベッドで寝ている。
薬袋と水の入ったグラスを載せた盆を持って、真弓(47)が入って くる。
真弓、盆を机に置き、千鶴に声をかけようとするが、千鶴は、布団を 頭の上まで引き上げる。
真弓、ベッドに近づき、そっと布団越しに千鶴の背中を撫でる。
千鶴は小さく体を震わせ、嗚咽を漏らし始める。
〇(現在)横浜、北村家、志乃の部屋(夜)
志乃、口に手を当てている。
尊の声「気は済んだか?」
志乃、黙ってうなずく。
〇ニューヨーク、尊のアパート、キッチン(早朝)
尊、流しにカップを持っていき、
尊「なら、もうこの話は終わりだ。いっそ、聞かなかったことにしろ。間違っても……」
〇東京、三島家、千鶴の部屋(夜)
千鶴、写真立てをそっと箱に戻す。
尊の声「本人の前で蒸し返したりするんじゃねえぞ」
蓋を閉め、ガムテープを上に載せると、窓に向かう。
カーテンを持ち上げて、外を見つめる。
〇(回想)同(4年前、夜)
ベッドから出てくる千鶴。
机の上のグラスを手に取ると、中身 を一気に煽る。
腫れた頬と首筋に触れて、
千鶴「痛っ……」
机に涙が落ちる。
千鶴、窓に近づき、カーテンを開く。雲一つない空に月が出ている。
千鶴、カバンからハットを引っ張り出すと、頭の上に掲げ、ポーズを 取る。
壁に、ぎこちなく踊る千鶴の影が映る
千鶴「あ……」
と、バランスを崩し、机の端を掴む。
肩で息をしながら、窓の外の月を見つめ、立ち上がる。
〇(現在)横浜、北村家、志乃の部屋(夜)
志乃、ベッドの上で、ハットの裏側に
サインペンで書かれた「C.M」を指でなぞる。
講評
☆NYはブロードウェイ。ミュージカルの華やかなステージから始まるドラマ
。
ワクワクします������ 本場のミュージカルに大感激の志保。帰国して、従
弟の千鶴の家でお喋りに興じる姿がチャーミング♥です。なぜか、話の輪に
加わらない千鶴。何かある? と思っていると、偶然に金色のハットが転が
り出てきて……。次第に明かされる、千鶴の辛く悔しい過去。
横浜とNYの国際電話・(イメージ)など、散りばめられた多彩な手法が、
楽しかったです!(^^)!
☆表紙。タイトルをもっと大きく印字しましょう。
☆人物表の年齢は、ドラマに多く登場する順に書きます。
三島千鶴(21)(17)大学生 ですね。三島真弓もこれに倣って下さい。
☆p1。ト書:Tニューヨーク・ブロードウェイ としては?
T=タイトルの略。
☆p1。トップの柱以外に照明の指定(朝・夕・夜など)がありません。
屋外・屋内に関わらず、照明の指定は、必ず入れましょう。
☆p2。ト書:『コーラスライン』のフィナーレ。とすると、分かりやすいと
思います。
☆p3の柱。(昼)の時は書かなくいいですよ。←何も書かないと昼です。
☆p3。NYから東京へ舞台が映ります。三島家・外観の前に、日本だと分か
る
物←東京タワー? を入れるか、タイトル(T)を入れてはどうでしょう?
☆p13・14の柱ト書の書き方。
〇(イメージ)✕✕高校・体育館(夕)
ト書:T4年前。 です。柱に『4年前』 としても、観客には伝わりませ
ん。
p15・p18も同様です。
☆p15・p18。イメージ・回想シーンの、千鶴の年齢を書きましょう。
反省
・クラスで発表した時に指摘されたことだが、今回は少し「詰め込み過ぎた感」がある。
・登場人物の書き方にもそれが現れていて、主人公が千鶴なのか志乃なのかが、少し自分でも定めがたい。
・また、柱ト書きなど、細かい点でのミスが目立った(恥)
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