
短編小説読書メモ22本目~西條奈加さん『無花果の実のなるころに(お蔦さんの神楽坂日記)』から
短編小説50本読破計画の記念すべき1本目となった、アンソロジー所収の西條さんの「お蔦さんの神楽坂日記」シリーズ。(その時のコメントはこちら↓)
シリーズの一冊目にあたる『無花果の実のなる頃に』の一話目『罪かぶりの夜』を読んだ。
語り手は、神楽坂の履き物屋に祖母の蔦代(通称・お蔦さん)と住む中学生の滝本望。彼の幼馴染みが、最近地域を騒がせている「蹴飛ばし魔」として捕まったのが、事件の始まり。
幼馴染みが誰かを庇っているのは、望も読者である私も何となく感づける。が、そこには更にもう一枚、真相を隠すヴェールが存在していた。
中学生男子の恋模様という甘酸っぱい感情や未熟さとそれ故の甘えと、芸者としてそして履き物屋の女将として人生経験を積み重ねてきたお蔦さんの一喝が鮮やかなコントラストをなす。読んだ後も温かな余韻が残るのが良い。