
短編小説読書メモ24本目~西條奈加『無花果の実のなるころに』から
西條奈加さんの『無花果の実のなるころに』から二作目の『蝉の赤』。
今回は主人公・望の所属する美術部の部長の絵が、文化祭での展示中に何者かによって破かれる、というお話。
実を言うと、お蔦さんの推理を聞きながらも、薄々真相に気づいてしまっていた。(というか、伏線がどこにあったのか。シナリオでよくやる手法だから)
ちなみに破かれた作品は、コンクールで文部科学大臣賞を取ったほどのものなのだが、部長自身は、「乾蝉丸という放浪の画家の赤を真似しただけ」、と複雑な心境。
だが、私も昔は勘違いしていたが、「学ぶ」は「まね(真似)ぶ」が語源になっているように、誰かの真似から入るのは全然恥ずかしいことではあるまい。
何とか追い付こうと頑張っても、完璧なコピーは作れないし、越えるのも難しい、と感じるだろう。
そこから諦めずにあがき続けられるか。
お蔦さんのコメントが前回と同じく小気味良い。