見出し画像

短編小説読書メモ19本目~千早茜さん『西洋菓子店プティ・フール』

1日に一本以上の短編小説を読む、と決めて今日は19本目。20本達成したら、新しいマガジンにまとめる予定だ。
今回の話は、千早茜『西洋菓子店プティ・フール』の三本目『カラメル』
今回の主役は、前話の『ヴァニーユ』の終わりでシュークリームを買おうとしていた主婦。亜樹のリアクションに何やらただならぬ物を感じていたが、その答えがわかる。

読んでいてわかるのは、強烈な飢餓と苛立ち。苛立ちの対象は、夫とのやりとりであり、夫の浮気相手と思しき会社の女性であり、何より強烈なのは、太ることや醜くなることへの嫌悪感だ。
底無しの苛立ちが彼女を内側からじりじりと焦がし、次の行動を掻き立てる。
それは、下着売り場に行くことであったり、ネットサーフィンであり、「プティ・フール」でシュークリームを大量に買い込むことでもある。
しかし、それらの行動は彼女自身を満たすことは決してない。下着売り場に行くのは、新商品を試着することで、自分の体型に対する店員の評価を確認するため。
ネットサーフィンでは、夫の浮気相手のSNSを覗きこみ、一度直接会っただけの彼女をこき下ろす。
そしてシュークリームを流し込むように食べた後は、トイレで吐いてしまう。
自分で自分を苦い状況へとわざわざ追い込んでいる。それも限界まで。しかもそれがやめられない。
その様は、砂糖を焦げるまで煮詰め続けてカラメルを作るのにも似ている。
怖い。
しかし、時間をおいたらまた読みたくなる類の話かもしれない。
カスタードプリンを食べていくうちにたどり着く最後のカラメルの苦味を求めてしまうように。

いいなと思ったら応援しよう!