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短編小説読書メモ56ー7本目~西條奈加、新津きよみ

まずは、西條奈加『無花果の実のなるころに』から、表題作。
偶然にも先日のニュースで、高校生が特殊詐欺に加担せられていた話を聞いた上に、回覧板で注意喚起が回ってきたばかりなので、タイムリーな話となった。
神楽坂に住む面々が、次々と特殊詐欺の被害に遭う話。被害に遭った面々には、神楽坂という場所に加え、ある日麻雀荘で雀卓を囲んでいた、という共通項があった。
そして、主人公・望の祖母のお蔦もまた雀卓を囲んでいたメンバーの一人であり、次のターゲットとなりうる人物だった。
詐欺の電話がいつ来るか。防げるのか。なかなか冷やひやさせられる。
そして、意外な場所に潜んでいた敵の一味の正体とは… … 。
サスペンスを盛り込みながらも、少しほっこりした読後感になるのが、この作者らしいところ。

続いては、新津きよみ『彼女が恐怖をつれてくる』から、『時をとめた女』。

20年ぶりに開けられたタイムカプセル。
その中には、小学2年生の時に殺された親友への思いを綴った主人公自身の手紙が入っていた。
その封印が解かれる時、あの日の記憶と共に、幸せに暮らしていたはずの夫と娘の「正体」が明らかになる。
じわじわと薄紙を剥ぐように明らかになる事実が怖い。
そして、短編小説は、余韻が、想像力の余地を残すことが大事。

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