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#31 おとなになって


空気が冷たくて、頭の前の方が痛い。帰り道、車にガソリンを入れて帰る。仕事の日は1日が一瞬で過ぎ去る。あっという間に12月も4日だ。

いつからかわたしは淡白になった。人に興味を持たず、深入りせず、干渉せず、依存もしない。一人きりで生きているような孤独感を抱えながら、ただ目の前に流れる光景をぼーっと見つめている。

いつからこんなに、いろんなことに無関心になったのだろう。理由は自分でよくわかっている。傷つかないためだ。鬱が寛解した後は、自分の心を守るために、傷つかないように、いろんなものから距離を取ってきた。そのおかげで身体も心もとても楽になった。その代わり、なにか大切なものを失った気がする。

同じ施設でデイケアと外来の理学療法士を兼任して働いているので、100人以上の利用者さんと患者さんと対面する。顔と、名前と、前回話した内容と、疾患名と、疼痛の部位と、家族構成と、住んでいる場所と、、情報が交錯して、誰の情報だったかわからなくなることがよくある。だからなるべく、自分が覚えられる内容だけ聞き出す。インプットが多くならないように。頭がいっぱいいっぱいにならないように。

だから無関心でいることも、自分を守るための一つの手段になってしまっている。本当は人が大好きで、いろんなことを知りたくて、深く仲良くなりたくて、でもそうすると自分が壊れるからやらない。そんな冷たい人間になってしまった。



鬱になった23歳のときは今よりもっとずっと子どもで、自分はなんでもできると思っていた。新卒で就職した病院を飛び出して、一人で東京に行くなんて言い出して、周りの人たちをたくさん困らせた。それでも自分は大丈夫だと思っていた。

おとなになった。
社会を知って、自分を知って、うまく自分のことを守れるようになって、好きなことをできるようになって、家族もできた。おとなになるって、こういうことなのか。周りの環境も、自分も、大きく変わったのに、自分の心だけがちっとも変わらない。

おとなになって、たくさんの人に見守られながら生きていて、生き延びてねと言ってくれる人もたくさんいて、幸せなはずなのに、たまに無性に寂しくなる。きっと中身はまだまだ子どものままなのだ。


帰り道で見た三日月と夕焼けがきれいで、思わず写真を撮る。この無邪気な感性だけは、子どものままでいたい。




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◎アズ初の“言葉の個展”を開催します🌼

タイトル「痛い、心臓、」

『わたしは弱い生き物である。何かに縋ってないと、誰かに甘えていないと、生きていけない。なのに、いつだってわたしは1人きりである。「わたしはどこまでいっても1人きりである」という宣言は、弱いままで強くあろうとする1人の人間としての決意であった。』

弱いわたし自身について、きらきらしていないまま、弱いままで強くあろうとする姿勢を、言葉を通してお見せします。



日時:2024年12月28日(土)〜30日(月)
13:00〜20:00 (LO19:30)
※ワンドリンク制になります。

場所:喫茶星時
住所:岐阜県岐阜市神田町3−3 カンダマチノート2F
名鉄岐阜駅から徒歩10分。お車は周辺のコインパーキングへ。



展示内容は、

- 詩の壁展示
- インスタレーション
- 展示した詩、書き下ろしのエッセイを収録したZINE
- 個別ワークショップ「手紙屋」(終日開催)

それぞれの詳細についてはまた後日お知らせします📢

6年間言葉を綴ってきて、初めての対面イベントとなります。どんな景色が待っているのだろう。どんな出会いがあるのだろう。あなたにお会いできることにわくわくしながら、毎日準備を進めています。


アズの言葉をより近くで感じてもらえるように、毎日noteを始め、開催まで様々なコンテンツを発信していきます💐そちらも合わせてお楽しみください!

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アズ | エッセイスト・詩人
「温かで穏やかな光を見失わず、貴方が生きていけますように。」 そんな気持ちでnoteを届けています。 気に入ってもらえたら【スキ】【フォロー】 さらに【サポート】で応援して頂けるととっても光栄です。