【八ヶ岳美術館】3館企画展示「行って縄文 来て縄文」を見に行く
はじめに
原村の八ヶ岳美術館でも、恒例の3館共同の企画展示が始まりました。
今年のテーマと展示は「行って縄文 来て縄文」(2023.7.6~11.23)です。
県をまたいで八ケ岳定住自立圏共生ビジョンを締結した3市町村にある博物館が共通のテーマで企画展示を行っているものです。3館とは
・長野県富士見町・井戸尻考古館
・長野県原村・八ヶ岳美術館
・山梨県北杜市・北杜市考古資料館
です。
企画展「阿久」に伴い、同展示室の考古資料の撮影が可能になりましたので、後日撮影し画像を追加いたしました。2023.10.19追記
八ヶ岳美術館
八ヶ岳美術館の開館は1980年(昭和55年)と古く、林の中に白いドームが繋がる建築が特徴的です。この建物の設計は村野藤吾(1891年~1984年、明治24年~昭和59年)によるものです。
また、原村出身の彫刻家清水多嘉示(1897年~1981年、明治30年~昭和56年)の彫刻が所狭しと館内に常設展示されています。
考古資料は町内の阿久遺跡などの土器、石器なとが常設展示されています。
行って縄文 来て縄文
今年のテーマは「行って縄文 来て縄文」(2023.7.6~11.23)です。縄文時代の文化交流をテーマに3館がそれぞれの展示を展開します。案内のチラシはA4の2つ折りで恒例のスタンプラリーの台紙を兼ねています。
スタンプラリー完成すると後からでも、特典のマグネットまたは缶バッジが頂けます。受付で特典をもらうだけならば入館料はいりません。
他の会場の様子はこちらをご覧ください。
従来は、考古資料も含め館内の作品の撮影は出来ないのですが、企画展「縄文前期の巨大祭祀場 阿久」(2023.9.9~2024.1.8)の開催に伴い、一定のルールのうえで阿久遺跡や考古資料の撮影が可能になりましたので、画像を追加いたします。(2023.10.19)
八ヶ岳美術館では、村内の比丘尼原遺跡と大石遺跡を中心に紹介しています。
解説によれば、原村の代表的な遺跡で個性的で地域色の強いこれらの遺跡の中からも他地域の影響を受けたとされる土器を確認することができるそうです。
展示数は土器13点、出土数は少ないようですが、交流と考えられる異系統土器や、富士見町や北杜市から似ている土器を借用して紹介しています。さらにヒスイ、コハクが各1点ずつ紹介しています。
比丘尼原遺跡
比丘尼原遺跡は、縄文前期の阿久遺跡から少し後の時代、縄文中期中葉に繁栄した環状集落の址です。
展示には、深鉢型土器5点と土偶が1点あります。土偶はミラーで背面も見えるようにしています。
土器のうち4点はこの辺りの特徴的な新道式(井戸尻編年)土器のほかに船元式の深鉢があり瀬戸内、関西系から持ち込まれた、あるいは様式を真似したと考えられます。
大石遺跡
大石遺跡は中央道原PAの場所で発見された遺跡です。
展示には、四方にきれいに広がる浅鉢が展示されていますが、富士見町の曽利遺跡の近年の調査から同様のものが出土しており、並べて展示されています。どちらも久兵衛尾根式で大きさはほぼ同じで四角に大きく広がった形といい、向かい合う2辺は縁に丸く穴のあいた意匠はまったく同じです。同じような土器が八ヶ岳西南麓地域で作られていたことを表しています。
もうひとつ動物装飾付深鉢型土器(長野県宝、狢沢式)と北杜市の寺所第2遺跡の装飾された深鉢(新道式)が並べて展示されおります。編年から時代は狢沢式である大石遺跡のほうが古いです。大きさは大石遺跡のほうが大きいです。それでも立体的な四角い区画がめぐらされていてさらに動物のような立体的な装飾は似ています。
こうして3館共同企画の富士見町、北杜市から互いに借用し土器たちも行って来てをしています。
異系統の土器としては、動物装飾付深鉢型土器(長野県宝)が見事です。後沖式とありますので東信の系統になります。
大石遺跡といえばハート型の顔面装飾付深鉢が山梨県立考古博物館の特別展「星降る中部高地の縄文世界─黒曜石ネットワークによる物流と人流─」(2023.7.8~9.3)に出張中です。
居沢尾根遺跡の深鉢が2点あります。
ひとつはほっそりとした深鉢ですが、北屋敷式とあり北陸系にある系統の土器です。
また、もうひとつは加曾利E式との記載があります。関東系統の土器ですが、これも井戸尻考古館にあった加曾利E式の土器と同じように本来の地から離れると少し様式が異なってしまうのでしょうか。
ヒスイ、コハク
展示にはヒスイの飾り玉(姥ヶ原遺跡)とコハク(南平遺跡)があります。いずれも原村の遺跡から出土しましたが、ヒスイは糸魚川のもので、コハクは銚子からとパネルに説明があります。土器の文様や様式以外にも黒曜石のように物の交流が行われていたことを示しています。
おわりに
八ヶ岳美術館はその名のとおり、美術館として機能が中心であるためでしょうか、撮影の制限が厳しいのが残念でした。館内の考古資料は「三十三番土偶札所巡り」の御朱印デザインになっている「フゥーちゃん」と「さんころん」のみが撮影可能でした。
後日、企画展「縄文前期の巨大祭祀場 阿久」に伴い考古資料の撮影が可能となりましたが、今後も考古資料は撮影可能にしてもらいたいものです。