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【‘‘読み返す、珠玉の一冊’’】

-立原正秋『愛と人生の風景』における年輪の刻みについて-

年に数回、私自身が特に読み返しているお気に入りの一冊というものがあります。

それは、文豪の立原正秋が記した『愛と人生の風景』という本であり、愛や性に対する美意識や著者の人生観というものが色濃く反映されており、愛と人生を巡って413の名言を収録した、アフォリズム集となっています。

構成から、立原の女性観によるもの、男の美学によるもの、愛と性、人の生きざまについて、現代を生きることなど、どの章立てから読んでも胸を打つ言葉が記されており、私自身が特に気に入っている一文があるので、ぜひとも引用したいと思います。

年輪の刻み

年輪という言葉がある。

文章を読むとその人の年輪と顔が分かる文体がある。

心情のいやしさがそのままその人の文章にあらわれる人もいる。

美しくとしを重ねた人の文章にはそれなりの刻みがはっきりと見える。

刻みの裏にその人の顔が見える。

文章を読みながら、さらにいい顔だと思う。

ー坂道と雲とー   

P.107より引用。第四章 人間の生きざま 4 歳月と人間

年輪の刻みという、立原の文章に対する見識は極めて高いことが前述から窺えるのではないかと思います。

文章を読んでいると、必然とその書き手の顔が見えてきて、年を重ねてきた人の文体には重厚さがあり、説得力があることを年輪と紐付けているところが素晴らしいと考えさせられました。

確かに、文体を通して、その記した著者の顔、年齢層というものが時たま思い浮かぶことがあったりします。

年輪の刻みにより、表現力や感性というものは至高の境地へとたどり着き、文体、文章がそれを証明させるものとなります。

誰かの記した文章を読んだり、自分が文章を書く際に行き詰まりを感じる時、私はこの一文から毎回、新しい知見を得ることを実感しています。

これまでの人生で、私の中では、まだまだ年輪を刻むまでは長い道のりというものがある。

本を読み、文章を記していくこと、そしてこれから色んな人たちとの出会いの中で、私は少しずつ自分を変えていき、成長していきたいと改めて思いました。

立原の記した文章は、私の中の人生観を大きく変えてくれた今なお読み返す、珠玉の一冊であることを実感しています。


【参考文献】




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