ののはな通信/読書感想
「ののはな通信 / 三浦しをん 角川文庫」
ミッション系お嬢様学校の聖フランチェスカに通う野々原茜と牧田はな。
茜はごく普通の会社員の父とパート勤めの母と暮らしている。
はなは祖父と父が外交官、お手伝いさんもいる家庭。
環境も違う二人は親友だった。
昭和59年から平成23年までの手紙のやり取りで進む物語。
(平成22年からは電子メールに変わりますが)
高校生だった二人が大人になる過程の中で、愛し、憎み、別れて再会を繰り返す様子を書簡の往復だけで描き、女性の多様な生き方や考え方を見せる。
タイトルだけを見ると、ほわほわするような内容かと思う。
とんでもない。読んでいくうちに、ぐんぐんと引き込まれ、苦しいほどの感情に巻き込まれる。最後はお腹の中にズンとくるものがあった。
読み終えてから、中学生の頃を思い出していた。
「親友」とお互いに呼び合っていた同級生の女の子と、交換ノート(交換日記のようなもの)をしていた。
学校で会い、話もしてるのに交換ノートは別物だった。
自分の悩みや好きな漫画のこと、歌手のこと、クラスメートのことなどを書き連ねたページには、イラストや文字がキラキラと踊っている。本当に楽しかった。
ノートは中学を卒業するまで続けていた。
彼女は成績もよくて、高校も公立進学校を受験する。私は得意分野を生かす私立高校を選んだので、進路は別々になった。
高校入学後は近況報告の手紙を頻繁にやり取りをしていたが、お互い忙しくなり手紙も間が開くようになってしまった。
高校3年になり私は就職活動、彼女は大学受験の勉強に力を注ぐようになると手紙も減った。
社会人として働きだし、大学生の同級生たちと価値観が変わり、会うことも減っていくもので、彼女とも疎遠になってしまった。
今のようにパソコンも携帯電話もなかった時代なので、手紙だけが連絡手段だ。いったん連絡が途絶えると、調べようがなくなる。
(固定電話しかないため、気軽に電話をかけられない)
気がつけば手紙も来なくなっていた。こちらも出さなくなり何年も過ぎていた。
そうして、別々の人生を歩んで、半世紀以上を超えた今。
彼女はどうしているのかわからないけど。
幸せで欲しいと願っている。
遠い少女の頃の、あの時のキラキラとした時間を思い出す物語だった。
(終)