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【旅エッセイ68】ヤギも生きている
「ヤギも生きている」と、昔の手帳を読み返したところ書かれていた。
当たり前じゃないか。さて何を想って書いたんだろうと手帳を読んでいると、北海道の旭川市、旭山動物園でヤギを見た時の気持ちだった。
「旭川市なのに動物園の名前は旭山動物園?」
「無料の駐車場がガラガラなのに有料駐車場に案内された。ひどい」
などなど、短く書かれたそのあとに書かれたナゾの一言。
「ヤギも生きている」
こんなことを書くからには、当時の私は何か妙なことを考えていたはずだぞと手帳を見返しつつ、写真のフォルダを探す。旭山動物園ではたくさんの写真を撮っていた。フラミンゴにオランウータン、ペンギンにオジロワシ。クマ、フクロウ、カバにユキヒョウ。それから一心不乱に草を食べるヤギの写真が何枚も見つかった。
私はいつも、生きることや人生について考えてばかりいる。旅の孤独と自由の中だと余計にそんなことばかり考える。草を咬み続けるヤギを見ながらも考えた。ヤギも生きている。私は何のために生きているのか。
何のために生きるのかと悩むのは、何のために書くのか悩むことに似ている。小説家を目指していた頃でさえ、何のために書くのか答えは出せなかった。何のために生きるのかもわからなかった。
今はこうしてエッセイを書き続けているけれど、どうして書くのかやっぱり理由はわからない。理由はわからないけれど欲求があって書いている。生命は欲求に従うもの。ヤギは草を食べる。ヤギも生きているから。私だって生きている。
何かを考えさせてくれた、旭山動物園で撮った食事中のヤギの一枚。
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