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【ユーモアのセンス(山エッセイ)】

その山小屋は荒れ果てていた。使われなくなってから十年、二十年は経っているように見える。

地図上に見晴小屋という山小屋の名前だけが残っているがとっくに営業はやめてしまったのだろう。

小屋の名前が「見晴小屋」というくらいだから景観が良いのかと思っていた。いざ到着してると木々と葉がすっかり繁ってどこの方面の景色も見えない。木々の隙間からかろうじて南足柄のあたりがうっすら見えるくらいで。

営業していた当時を思わせるものはほとんど残っていなかった。ただふたつだけ、廃墟の壁に貼られたブリキの看板が残っていた。

看板に書かれた文章は要約すれば「山にゴミを捨ててはいけない、持ち帰ろう」というありふれた警句なのだが、ダジャレを交えて書かれている。

これが「ゴミを捨てるな持ち帰れ」とだけ書かれていたら、ありきたり過ぎて気に求めなかったかも知れない。正論を突き付けられると腹が立つものだから、気に入らないと思う人だっているかも知れない。

ユーモアは相手にメッセージを受け取りやすくする効果もある。ただのダジャレでも効果的。

伝えたいことにユーモアを混ぜる、そういう余裕は見習いたい。

シカくなし
あきれカエル


また新しい山に登ります。