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【新小説】靄が晴れるその日まで
人は一人一人の世界観でこの世界を観ている。私もその一人である。この物語は他者の世界観を不思議な力で感じとれるようになった主人公の正田 観月(しょうだ みづき)の物語。
私は、不思議な能力を持っている。
初めてその不思議な体験をしたのは物心がつく子どもの頃だった。
大好きな朝早くからのテレビ番組を見ようと朝1番に起きて、自分の母親に「おはよー」と挨拶をしながら、母親の顔を見たときだった。
なぜか、母親の顔の周りだけ靄がかかりぼやけて見えた。朝起きたばかりだから、寝ぼけているのだろうと思って見過ごしていた。
しかし、お腹が空いてきたお昼になっても、その靄は母親の顔の周りにだけかかっていた。もう気になって仕方なかった私は素直に母親に聞いてみた。「お母さん、顔の周りがなんかぼやぼやしてるよ。」
「あら、そう?お母さんからぼやぼやしたものは何も見えないけど」とテレビを見ながらそっけない返答が返ってきた。
私はその靄を晴らそうと母親の顔を団扇のように手で振り払うように往復させたが、手には何も感じないし、靄はかかったままだった。
「なにすんのよ」と少しイラつきながら母親は、その場から立ち上がり、リビングから出て行ってしまった。
私は1人に残されたリビングで、「なんだったんだろう?」と少し気にしながらも、大好きなお絵描きの続きを描いていた。
つづく
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