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『秋声 【中編】』
「この世界を彩るもの」を【佐々木 青彩】の視点から描いていきます。
この「青彩編」の作品だけ見ても物語は楽しめます。もしよければ、前作もご覧ください。
前作 「この世界を彩るもの」
「この世界を彩るもの〜青彩編〜」
1章−1 「青春」
1章−2 「青春」
2章−1 「盛夏」
2章−2 「盛夏」
2章−3 「盛夏」
3章−1 「秋声」
3章−2
花は咲くのに相当なエネルギーを使う。だから、花を咲かせるためには蕾の準備期間が必要となる。蕾は冬を迎える前から準備をしている。
そして、花を咲かせる条件が揃うのを待つのだ。
イチョウの並木道が黄色のカーペットを敷き始めている。太陽は沈みかけ、鮮やかな世界を創り出していた。
私は、鮮やかな世界には目もくれず、目の前のスマートフォンを見ながら別世界に想いを馳せるように歩いていた。
人はやると決めたら5秒で行動に移さないと、やれない言い訳を見つけ出してまた今度でいいと思ってしまう。そして、結局なにも行動出来ずに終わる。
とどこかの自己啓発本に書いてあった。
私は一体何個の言い訳を見つけ出したのだろうか?
たった1回の電話をかけられずにいる自分が今ここにいた。何もしなければ、今まで通りの明日を迎えて生きていくことができる。しかし、行動をしたらいつも通りの明日とは違うことになる可能性がある。
変化するかもしれない明日が怖い。
ため息を吐きながら、ふと、空を見上げた。
街の明かりで小さな星は見えないが大きな星は輝いて見えた。
私が行動をして、それが失敗したらあの星は明日無くなるのかな?
私のたった1回の行動は宇宙を変えてしまうだろうか。
いや、何も変わらない。宇宙から見た私はとてつもなく小さく、些細な存在だと感じた。私が行動したところで宇宙は何も変わらず、明日も星たちは輝き続ける。
俯瞰して私という存在が見えた。
私は連絡先に指でタッチをして、プルルと着信音を聞いている。スマホを耳にあてながら、私の鼓動もドクドクと鳴っていることがハッキリ聞こえた。
「もしもし、どした?」
優しい声が聞こえた。
「やっほー、今何してるかなと思って」
私は、彼に悟られないように、わざと元気な挨拶で会話を続けた。
「今から大学の友人と飲むけど、来るか?」
「いいの?じゃあ、お言葉に甘えていこうかな」
半ば強引に話を進めながらも内心は、嬉しさで飛び跳ねていた。
私の中で、遅めの華が咲こうとしていた。
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