『向日葵 【後編】』
普段の日常が特別な日常に変化していく心を彩る物語
目次
1章 「空」
2章 「観葉植物」
3章−1 「川合」
3章−2 「川合」
4章−1 「向日葵」
4章−2
太陽が一番天高く昇り僕たちを照らしてくれている。今日は天候にも恵まれコバルトブルーの空で、風は天然のエアコンのように眠気を誘ってくるように心地良い。
僕と青彩はお昼をどこで食べるのか悩みながら歩いている。サンシャインの方に行けば何かあるだろうと楽観的に2人は考えていた。僕も青彩もスマホとにらめっこしながらお店を探している。
「これなんかどうかな?」
「おっ、良さそう」
青彩の提案でハワイアンのハンバーガーを食べることに即決する。お店に着くとお祭りのようにたくさんの人がいて、お店には行列ができていた。30分ほど経ってお店に入れた。
時間というのは不思議だ。同じ30分でも、あっという間に過ぎる30分となかなか進まない30分がある。同じ時間を過ごしているはずなのに、僕の主観を通して時間を捉え錯覚を起こしている。
青彩との時間は前者に感じていた。青彩はどう感じているのだろうか。ふと、気になっている自分がいた。
ハンバーガーはこぶしよりも一回り大きなものだったが、ペロリと2人して完食しまった。お互いに大食いだと初めて知ったときでもあった。
「次は食べ放題とか行きたいね」
「おっ、牛角でも行ってみるか」
と青彩からの提案もあって、次のデートをちゃっかり決めることができた。そして次に行く場所は僕の中で決めていた。案の定、青彩はその予定通りに次の行くところを決めてくれた。
「水族館に行ってみない?」
「それナイスチョイス」
僕たちはサンシャイン水族館に到着して様々な生き物たちを観ていった。すると大きなガラス張りの水槽で、とある説明書きに僕は目がとまった。
海には暖かい海と冷たい海があります。それは海流によって決められ、その海流を起こすのは風と太陽が影響しています。
と書いてあった。僕は知らないだけで、実は様々なものに助けられて僕たちは生きていることに気がついた。僕も知らない間に知らない人から助けられている。同じように、知らない人へ僕も何か助けを与えているかもしれない。
「いろんな見えない繋がりがあるんだなぁ」
とひとり言を呟きながら感心していた。そんな僕をみて、不意に青彩が口を開いた。
「実はさ、私小学生のころに佐助くんに助けられたんだ」
「えっ、僕なんかしたかな?」
「うん」
と笑みを浮かべながら青彩は話を続けた。
「佐助くんから直接的に助けられたわけじゃないから気づいてないと思うけど、私さ、小さい頃から喘息がひどくて運動するのが、苦手だったんだ」
「そうだったんだ」
そういえば、小学生の頃、青彩はあまり目立たない存在でよく入院もしていたと今頃になって僕は気づいた。
「小学生のときさ、マラソン大会があったでしょ。私は発作が起こるから最初から諦めて走らなかったんだ。そのときのマラソンで佐助くんはスタートで転んで怪我して後ろを走ってたでしょ?でも、最後まで走りきる姿をゴール手前で見てた私は、それが何よりかっこよく見えたんだ」
「そういえば、そうだったかもしれない」
僕は苦笑いしながらも思い出す。
「それからだよ。佐助くんを好きになったのは」