観たもの、聴いたもの、読んだもの(2024.05)
01.活字本
01.爆弾
このミス2023受賞作品。
爆弾魔vs警察官のミステリー。
『羊たちの沈黙』のレクター博士を思い出させる犯人が良かった。
取調室を中心に犯行が進んでいく展開はアツい。
展開も二転三転し、オチは全く読めなかった。
不満点と言えば、ラストがアッサリとしていたところ。
緊迫した展開から数ページでサラッと終わったのが気になった。
ミステリーということでギミック重視の部分が大きかったと思う。
映像化向きの作品なので、犯人役のスズキだけは拘って選んで欲しい。
個人的には『冷たい熱帯魚』のでんでんみたいな役者希望。
02.砂の女
初の安部公房作品。
昆虫採集のため砂漠へ来た男が穴に落とされ、女と共同生活する話。
序盤は意味が分からなかったが、現代人の生活と変わらないことに気づいてゾッとした。
名著と言われるのは、時代に縛られない人間社会の本質をついているからだと思う。
数年後に読み返したいと思う。
03.砂の王国
Xで紹介されて知った作品。
ホームレス3人による宗教ツクール。
元証券マン、詐欺師、イケメンASDと絶妙な組み合わせ。
所持金ゼロから宗教を大きくしていくところが見どころ。
軍資金稼ぎで競馬に賭ける展開は引っかかったが、占いのテクニックや収益化するためのノウハウは面白かった。
個人的には下巻序盤のフェスでの演説がイチオシなので読んで欲しい。
あと、序盤でのホームレス描写に作者の気合を感じる。
かなり取材に力を入れていると思う。
筆力は直木賞作家の実力。
04.お前の彼女は2階で茹で死に
タイトルで惹きつけられる小説。
表紙は可愛い女の子だが、よく見るとミミズ人間。
中身はグロ×本格ミステリ。
複数の事件が最後に繋がるという流れ。
ミミズ人間やトカゲ人間が存在する不思議な世界観でありながら、ミステリとしての骨子がしっかりしているのが面白い。
作者が飴村行ファンということで、好きな内容だった。
村上春樹チルドレンは世の中にたくさんいるが、飴村行チルドレンが育っていることに感動した。
まぁ、人には勧めづらいことは確か。
本棚に並べるのは躊躇するから電子書籍がオススメ。
05.キリエのうた
Kindleで無料だったので読んでみた。
岩井俊二原作。
レビューは高評価なのだが、個人的には微妙。
失語症の路上ミュージシャンの子が成り上がるストーリーかと思いきや、震災が絡む群像劇となり、盛り上がりに欠けるままフェードアウト。
狙いとしてはキリエを取り巻く人間たちのエピソードを絡めて、主人公に厚みを持たせたかったのかもしれない。
個人的には宮本輝の錦繍が好きなので、比較してしまった。
恐らく岩井俊二作品は映像とセットで見なければ真価は分からないと思う。
脚本力よりも映像力に特化したウォン・カーウァイ系統だと自分の中でカテゴライズされた。
(初期の新海誠も)
06.秋の牢獄
Kindle無料。
好きなホラー作家の一人である恒川 光太郎先生の短編集。
同じ日をループする話
ババ抜きシステムで出られない家
相手に幻術を見せる能力者
設定はベターなのだが、話の見せ方が上手いので幻想的な雰囲気を楽しむことが出来る。
個人的には2話目の『神家没落』の設定が気に入った。
ババ抜きシステムはジョジョ4部の鉄塔と同じだが、家自体が日本全国を移動する設定が面白い。
3話目の『幻は夜成長する』は町田洋先生の短編で似たような能力者がいたのを思い出した。
こちらの作品のほうが出版されたのは早い時期なので影響を受けたのかも知れない。
07.成瀬は天下を取りに行く
本屋大賞受賞の受賞作。
行動力の化身である成瀬のエピソードを楽しむ内容。
性格は違うが、涼宮ハルヒを思い出した。
滋賀県にフォーカスした御当地小説である面が強く、聖地巡礼のお客さんも増えているらしい。
小説としての評価は★★★☆☆と言ったところ。
文章もスラスラ読めて面白いのだが、話にひねりがないので記憶に残りにくい。
ド直球の青春小説と言った感じなので、爽やかすぎてアクがない。
万人受けの作品であるので老若男女に勧められるのは分かるが、過去の本屋大賞受賞作の『告白』『かがみの孤城』と比較するとインパクトが薄い。
ただ、暗い現代にはこれくらいの明るい雰囲気も大事かもしれない。
02.マンガ
01.勉強はきっとウチらに平等だ!
勉強したくても家庭環境に阻害される地方の高校生の話。
明るい表紙に対して、中身はヘビー。
登場人物の家や持ち物などで背景を説明するのが上手い。
生まれた場所でどれだけ格差が生まれるか、メッセージがよく伝わってきた。
どれだけ努力しても地方から出られない子のことを思うと胸が痛む。
国道沿いのチェーン店が並ぶ風景の解像度が高い。
02.ドカ食いダイスキ!もちづきさん
SNSで話題になっていた作品。
血糖値スパイクという言葉を教えてくれたので感謝。
食事マンガは好きなのだが、この作品の食べ方は過食症のソレ。
ガツガツ食べる姿が食事というより、エネルギー補給。
遭難した人が数週間ぶりに食事をしている姿に似ている。
03.アニメ
01.ダンジョン飯
アニメ化としては文句がないので、毎週楽しみに視聴している。
原作の暗い感じが薄れているという意見もあるが、これだけ理解度の高いスタッフに制作してもらえてファンとしては満足。
原作の練り込みすぎた世界観を完全に噛み砕くのは無理だし、ファンブックで完結する作品だから『ダンジョン飯』は奥が深すぎる。
イヅツミがメンバーに追加されてからOPとEDに映像を増やすのも分かってる。
夢魔の回はライオスの夢はカラー、マルシルの夢はモノクロという表現がアニメならでは良かった。
ちなみに、60歳を超えるとほとんどの人の夢が白黒になるらしい。
長寿のマルシルが白黒というのは科学的な根拠があるとしたら凄い。
02.キングダム
王騎将軍がリタイアするところまで視聴。
李牧の軍略は、追加情報で窮地に追い込まれたので唐突感があった。
ただ、主人公を馬に乗せて将軍の在り方を説くシーンは良かった。
そこから先は観る気力がなくなって停止中。
面白さは分かるのだけど、次々と武将が出てきて頭が混乱中。
どうしても名前が覚えづらい。
03.無職転生
2期から話が動かないと愚痴っていたが、エンディングテーマでアンダーグラフのツバサが流れて全てを赦した。
恐らく作者は同年代。
20年前のヒット曲だと知り、少し胸が苦しくなった。
こういう特殊EDにオタクは弱い。
04.映画
01.十二人の怒れる男
アマプラ無料。
古い映画なので長年スルーしていた事を後悔。
空調の効かない会議室で十二人のオッサンが議論するだけなのに、話にグイグイ引き込まれる。
今後、会社で会議をする度にこの映画を思い出しそう。
脚本の力を見せつけられた一作。
02.アパートの鍵貸します
三谷幸喜が絶賛していた60年前の映画。
監督は巨匠ビリー・ワイルダー。
出世のために自分のアパートをラブホ代わりに貸し出す主人公という設定が面白い。
コメディに見えて、伏線の貼り方と回収の連続に圧倒される。
名作はやっぱりストーリーテリングが上手い。
『12人の怒れる男』と同様、自信を持って勧められる作品。
03.第三の男
GWということで映画三昧。
こちらも白黒の名作。
不審死を遂げた友人の潔白を証明するために主人公が調査するという流れ。
有名作なので期待して観たが、微妙だった。
映画の中で多用されるエビスビールのCMソングも原因の一つだと思う。
元々『第三の男』の曲なので被害者側なのだが、この音楽がシリアスな場面でも使われるため、雰囲気が壊れる。
あとは白黒映画なので、夜のシーンが暗くて見づらかった。
(映画通には評価されているらしいが)
あと、印象に残ったのは観覧車の中での台詞。
05.音楽
01.本能
Ado×椎名林檎『本能』
椎名林檎の曲とAdoの相性が良すぎる。
カラオケ収録しかないのが残念。
椎名林檎のカバーだけでアルバムが欲しい。
それにしても「朝が来ない窓辺を求めている」って歌詞がエモすぎる。
未成年でこの曲を作れる椎名林檎の才能が恐ろしい。
(今更)