蹶起将校の生死を分けたもの ~丹生誠忠を中心に~
二・二六事件最中の蹶起将校を写した写真といえば、安藤輝三を正面から撮ったもの、兵を率いる栗原安秀を撮ったもの、そして集まった兵士たちに何かを語る丹生誠忠を撮ったもの、この3点程度である。
安藤・栗原は事件の首魁であり、知る人は多い。一方、事件時の写真が残される数少ない存在ながら、丹生誠忠はあまり知られていない。彼は一隊の指揮官ではあるが、首魁ではなく、殺された重臣の殺害にも関与してはいない。だが彼には、他の青年将校にはない特筆すべき経歴があった。それは、二・二六事件で命を