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【振り返り】2024年4月

こんにちは。東です。

さて、2024年4月を振り返っていきます!




【臨床】 今月の臨床

テーマ|顎関節症

昨今、様々な理由から顎関節症を患っておられる患者さんが多いようです。

虫歯・歯の噛み合わせ・歯ぎしりや、片方の腕のみ酷使しすぎ、強い背部の緊張などから、当院でも主訴とは別に顎関節症を併発・合併しているケースも少なくありません。


1.現病歴

今回の患者さんは10年近く顎関節症を患っていたそうです。

しかし今年に入り悪化。

近隣の鍼灸院で回数券を購入して治療するも、思うような成果が上がらなかった時に、通っていた美容室の担当者より当院を紹介されました。

そしてその場で電話(笑)

このような積極的に治ろうとする姿勢のある患者さんは、良い結果に結びつくことが多いように思います。所感ですが。

他の鍼灸院で良くならなかった時に、セカンドオピニオン的に他院を受診してみることは良くあります。

この患者さんの症状は、脈診所見とツボの現れ方、会話の内容を判断材料として、肝鬱気滞から気逆し、少陽経経気不利起を起こしていると診定めました。


2.顎関節症の主治

全身調整は肝鬱気滞証に随うとして、顎関節症胸の主治(標治)穴として今回使用したツボは、足太陽膀胱経背中に位置する大杼穴(だいじょけつ)と、手陽明大腸経親指と人差し指に位置する合谷穴(ごうこくけつ)

とても古い『難経』という書物の中に出てくる八会穴(はちえけつ)を応用した主治法方になります。

大きく口を開けると痛むためパンをちぎって食べ、噛んでも痛いた
め肉は嚙み切れませんでしたが数回の治療で改善しました。

最後の2%ほどの芯の痛みは残りましたが、ここまで良くなったら十分ですとおっしゃって頂き一旦卒業。遠方より一生懸命に通院して頂き力になれたことを嬉しく思います。

めでたしめでたし。



【教育】 東塾

今月はお休みでしたが、研修生候補と面談したり、遠方の患者さんを連携して鍼療できるように情報共有しました。



【研究】 医学史の講座③

テーマ|日本はいかに西洋医学を受容してきたか

東郷俊宏先生による医学史の講座です。

【概要】

徳川幕府が終焉を迎え、260年に及ぶ鎖国政策を辞めて開国した日本は、明治政府の下で西洋医学の導入を決める同時に、それまで人々の健康を守ってきた伝統医学(漢方や鍼灸)を廃絶しようとしました。

当時の医師達の反対運動もむなしく、第8回帝国議会(1889)で漢方医存続の運動は否決され、漢方は暗黒時代を迎えます。鍼灸はかろうじて存続が認められたものの、その内容は西洋医学的な解釈ですっかり読み替えられました。この点、西洋医学と同等のポジションを獲得した中国や韓国と大きく事情が異なります。

ではなぜ維新期に日本ではそんなに西洋医学がすんなりと受容されたのでしょうか?

本講義では世界史的な視点から大航海時代のイエズス会士の医療活動、江戸期に来日したオランダ商館医と蘭方医との交流、宝暦年間以降にさかんに行われた解剖(観臓)や種痘導入の経緯に触れつつ、当時の日本人が求めていた「新しい医学」とは何だったのかを考えていきます。

参照:東洋医学の未来と愛を考える歴史教養講座


1.本講座の感想

幕末から明治にかけての医学史の解釈は、未だ定説というものが存在していません。

(東洋医学の歴史の講座をやった身としては、この辺りの整理が一番難しかった…)

東郷先生の時系列を縦軸とした事象と人物といった横のつながりの整理は流石でしたし、日本人活動家のバックにはお抱え外国人の姿があります。

時代時代に目下のイシューがあって、それに一生懸命対応してきたことが歴史になっていると思いますが、数年、数十年先までの最適な行動をするということは非常に難しいことだと思います。

幕末から明治にかけての東洋医学の歩みは、今では暗黒時代として解釈され、今なお医療制度と鍼灸の間には大きな溝が刻まれています。

しかしながら、眼前の艦隊に対応できる戦争医学は外科学と感染症に対策できた西洋医学だったことは否めないところもあります。

日本の医療制度上、鍼灸師は世界でも変わった立ち位置ですが、様々な形で鍼灸の有効性や、現代医学との関わり方を模索して、新しい鍼灸の在り方を考えていかないといけないなと思います。


2.日程

次回は、5/19(日)21:00~!

興味が出た段階でご参加頂いても全く問題ありませんので、ぜひ申し込みしてみて下さい!


▼申し込み|歴史の講座

講座の詳細はこちらからも見られます。



【連携】 地域医療連携カンファレンス

テーマ|50代男性『コロナ後遺症による外転神経麻痺の症例』

COVID-19罹患後に外転神経麻痺を発症。

外転神経とは眼球を外側に向けるための外転筋という筋肉を支配している第Ⅵ脳神経です。

医師の診断はフィッシャー症候群による外転神経麻痺の疑いです。


1.カンファレンスの所感

今回は私、東豪が症例報告させて頂きました。

内科医、眼科医から様々なご指摘を頂き感謝申し上げます。

またお世話になっている先輩の鍼灸師が座長をして下さり、こちらも共同できたことが嬉しく思いました。

フィッシャー症候群は、珍しい症例の一つだそうです。

経過が良く約3ヶ月でほぼ完治になりました。

コロナは様々な後遺症を残していきますが、鍼灸で緩解している症例はたくさんあります。

またフィッシャー症候群は脳神経のトラブルといった病気ではありますが、からだに現れるツボをつぶさに観察し、鍼灸治療を行うことでアプローチできる可能性があります。

来年はより良い良い発表ができるように、ご指摘頂いたところを改善したいですね。


2.フィッシャー症候群に関する参考サイト

1.一般社団法人 日本神経学会.ギラン・バレー症候群、フィッシャー症候群診療ガイドライン2013

2.武見基金 COVID-19有識者会議.COVID-19の主たる障害:神経障害の実態と対応


3.外転神経麻痺と鍼灸に関する論文

1.Acupuncture treatment of diplopia associated with abducens palsy: a case report.|外転麻痺に伴う複視の鍼治療:症例報告

Global advances in health and medicine. 2014 Jul;3(4);32-4. doi: 10.7453/gahmj.2014.024

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25105074/login=true

2.Efficacy of intraorbital electroacupuncture for diabetic abducens nerve palsy: study protocol for a prospective single-center randomized controlled trial.|糖尿病性外転神経麻痺に対する眼窩内電気鍼療法の有効性: 前向き単一施設無作為化比較試験の研究プロトコル

Neural regeneration research. 2017 May;12(5);826-830. doi: 10.4103/1673-5374.206654.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28616041/


3.参加資格と日程

【参加資格】
鍼灸を加えた地域医療連携・多職種連携に興味のある医師・コメディカル・介護・医療従事関係者、鍼灸師、及び学生です。

【講座形態】
動画配信
(ライブストリーミング配信)ですので、全国どこからでもご参加いただけます。

次回は5/13(月)の20:00から行っております。

ご興味のある方はぜひお問い合わせ下さいませ!


▼申し込み|DAPA



【開発】 予約システム

エンジニアの彼とは、かれこれ19年の付き合いになっています。

上京して初めてアルバイトをしたパスタ屋で出会った数少ない同年齢の友人。

少しでもUIが改善されるようにしたいですね。



今回も読んで頂きありがとうございます。ISSEIDO noteでは、東洋医学に関わる「一齊堂の活動」や「研修の記録」を書いています。どんな人と会い、どんな体験をし、そこで何を感じたかを共有しています。臨床・教育・研究・開発・連携をするなかで感じた発見など、個人的な話もあります。


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