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映画「マグノリアの花達」ばりに美容院でご近所トーク

私、おばさんになったなぁ。と実感するのが、美容院でおしゃべりができるようになったこと。

若い頃は、美容院にいっても、まずどういう風に切って欲しいかがうまく言えなかった。それもそのはず、どういう髪にしたいのかが自分でもよくわからなかったし、こんな風にしたいというのが特にはなかった。とりあえず、あんまり変じゃない感じで、適当に乾かしても無難な感じというのが本音だった。でも、どうされますか?と張り切って聞いてくれる美容師さんにそれをいうのもなんだし、モゴモゴ言う。そして、シャンプーの後、肩を揉んでくれるのが、くすぐったくてたまらないので、必死に笑わないように頑張る。というわけで、美容院に行くのが得意でなかった。美容室ジプシーだった。あれこれ話しかけてくれる美容師さんの期待に添える返事もできず、もうちょっと気軽にトークしたいものだと思っていた。

ところが、段々おばさんになるに連れ、大丈夫になった。今、いっている近所の美容院は、こちらからどういう風に切って欲しいと言わなくても、こんな感じでどう?と、どんどん切ってくれて、仕上がりがナチュラルなので気に入ってずっと通っている。美容師さんも、自分よりちょっだけ年上のお姉様。話題も豊富で話しも合う。なので、とても居心地が良い。シャンプー後の肩揉みも、今ではすっかり楽しみだ。

そこは、家族経営のお店で、息子さんも美容師さん。なので、三台ほどある椅子には、男性のお客さんもいる。息子さんが担当しているお客さんと喋っているのが聞こえた。私は隣で、雑誌を読みながら待っていたのだが、何かオーストラリアの首都が、シドニーじゃなくて、なんでしたっけ?メルボルン?いや、ちがうなあ。と話している。私は、「キャンベラだよ、キャンベラ。早く、その答え出ないかなぁ。」と思いつつ、黙っていたが、一向に正解に辿りつかない。もう、若い頃の美容院で発言できない初々しさをすっかり失っていた私は、「もしかして、キャンベラじゃないですか?」とタオルを巻いた頭で、つい話しかけてしまった。お兄さんとお客さんは、「そうだ!キャンベラっだった。ワハハ」となり、私は又黙った。そんな風に自由に発言してしまった自分。おばさんになったなあ、と思いつつも、気軽にトークできてちょっと嬉しかった。

家に帰って、同じくそのお兄さんにカットしてもらっている、当時大学生だった息子にその話しをしたら…。「やめなよ、お母さん!お兄さんもお客さんも、なんだこのババア?って絶対思ったから!」と嗜められた。

ふふん、若造め。近所の美容院で、自由におしゃべりできるようになってこそ、立派なおばさんなんだぞ。楽しいぞ。と思ったのでした。

今でも、その美容院に通い、近所に餃子無人販売所ができたよだの、あそこの和菓子屋さんの練り切りが美味しいよだの、ネットでは収集できない、生の口コミを仕入れたり。おばさんになったらなったで、結構気楽で楽しい。映画「マグノリアの花達」でも、おばさんたちが美容院でおしゃべりしてたなぁと思い出しました。あの女優さん達ももうおばあさんか。おばさんの次は、おばあさん。それもいいかも。